第8章 デンソー・セールス・ミドルイースト&ノースアフリカの歴史
2010年 事業立ち上げ:DSMNの設立
2010年、アラブ首長国連邦において、デンソー・セールス・ミドルイースト&ノースアフリカ(DSMN)は、中東・アフリカ地域にアフターマーケット製品とサービスを供給することにより、この地域で事業基盤を強化するために設立された。
ドバイのフリーゾーンの一つに戦略的に設置されたDSMNは、アラブ首長国連邦における頼れる物流ハブを目指し、企業体制とインフラの安定化、人財投資の強化、グローバルな業界リーダーとしての認知度の拡大を図った。
経営陣はDSMN設立の意図と志をしっかりと把握していた。 この会社が立ち上げられた目的は最初から明らかであった。製品とサービスを迅速かつ正確に流通させ、信頼できる市場情報を集め、サービスネットワークを拡大して質の高い技術研修を行うことで、顧客への製品とサービスをさらに向上させる。さらには、DSMNをアフリカ市場への最前線基地にするというアイデアも生まれた。 それを支えたのが、不可欠なインフラとしてパートナーとともに地域のモビリティ社会に貢献するという理念である。
2011年 スタートアップ企業としての運営とDSMNオフィスの完成
DSMNの株主の一つであるデンソー・シンガポールは、アラブ首長国連邦のドバイにおけるDSMNの設立を託された。同社はデンソー本社と緊密に連携してその支援を受け、ドバイのフリーゾーンで事業を立ち上げるための企業要件、商業要件、法的要件、コンプライアンス要件の準備、収集、処理をすべて行った。 設立後まもなくDSMNは事業活動を開始し、2011年にはオフィスが完成した。
会社を軌道に乗せるために、注文を受けて顧客をサポートする人財を段階的に雇用した。 DSMNが開業時に直面した課題の一つに、デンソー・シンガポールと同じ体制をどのように構築するかということがあった。そこでデンソー・インターナショナル・アジア(DIAS)に対し、すべての機能についてDSMNチームをサポートしてくれる主要スタッフの派遣を依頼した。
2011年 販売開始
チームは営業活動を開始した。最初はディーゼル、自動車用AC、整備用製品などの製品を約150CBM、300万米ドル相当販売した。 初期段階での事業活動は容易ではなく、対処すべき重要な懸念がいくつかあった。これほどの規模の企業の立ち上げることは、特に輸入規制、顧客の意識と行動、顧客との関係構築、社内体制の理解、製品知識、価格体系など、多くの困難に直面した。こうした課題と懸念に対処して克服するために、DSMNは営業担当者への職業訓練を実施し、すべての国に担当者を割り当てた。その国の市場、国内体制、顧客、言語、文化をより良く理解するために時間を費やそうとしたのだ。その成果は極めて良好なものだった。
2012年 オープニングセレモニーと深谷会長の訪問
その後はMENA(Middle East and North Africa、中東・北アフリカ)市場で着実に事業を拡大し、2012年5月にはDSMNオフィスを正式に開設した。オープニングセレモニーには加藤社長が出席し、デンソーの役員、経営トップ、従業員、招待客、GCC(Gulf Cooperation Council、湾岸協力理事会)加盟国の来賓が参列した。 深谷会長がDSMNのオフィスを訪問したのもこの年である。
2013年 メーカー補給品の市場投入
創立早々のこの段階で、DSMNは販路を拡大し、MENA地域で増大する補修部品の需要を満たしたいと考えた。 元々DSMNはコンプレッサー、エバポレータ、コンデンサー、点火プラグ、ホーン、ワイパブレードなどのアフターマーケット製品を販売しており、その中には空調関係製品も含まれていた。その後、2013年にはメーカー補給品(OES)が事業に加わった。 当時の市場では、その高い品質と耐久性により、OES部品が広く受け入れられていた。しかしながら、OESの顧客は常にDSMNに十分な在庫の維持を期待しているという課題があった。 これに対し、PSI分析と毎月の主要業績評価指標(KPI)の見直しを速やかに実行することで、DSMNチームはこの問題の解決を図った。 DSMNがDIASから独立して事業を行うようになったのもこのころである。
この地域に自らの足跡を刻んだDSMNは、営業、サービス、物流といった基本的な機能を備える一流の自動車部品販売会社をうたうことで、2014年には早くもブランドを認知させることができた。これはDSMNが入念に練り上げて遂行した戦略であった。
2015年 DIASからのアフリカ事業の移管
2015年には、南アフリカを除くアフリカの事業をすべてDIASから移管することが決定された。 デンソーは事業の移管に際して2段階から成るアプローチを採用した。最初に、MENA地域での事業運営に必要な知識と経験を得る。次に、経験を積んだDSMNがアフリカ大陸全体を管理する。その結果、移管によって会社の販路が拡大することになった。
2016年 移転と事業拡大
1年後、事業活動を拡大し、すべての顧客に対応するために人員の増強が必要になったことから、DSMNオフィスはさらに広いスペースへと移転した。 結果として規模だけでなく企業のブランド認知も工場することとなった。
2019年 南アフリカ販売・サービス事業の合弁会社DSSAへの移管
2019年までには、DIASからの南アフリカの事業移管も完了した。DIASの南アフリカの販売・サービス事業も合弁会社であるDSSAへと移管された。デンソーが51%、スミス社が49%の比率で出資するこの会社は、南アフリカにおける事業の拡大とデンソーブランドの認知度向上を目的として設立された。
2020年 ケニア、ナイロビ支店の開設
2020年には、この地域にデンソーのプレゼンスを確立するためのパイプ役として、ケニアにナイロビ支店が設立された。市場を理解して運営するために、従業員1人がセールスエンジニアとして配置された。一方でDSMNの従業員3人が、支店オフィスの準備を執り行うチームの指揮を執った。
現在も引き続きこのDSMNチームが、粘り強さとそれまでの功績をしっかりと引き継ぎながら、さらなる改善と変革を推し進め、会社の目的、目標、文化、コアバリューを強化し続けている。