第2章 勢いを蓄える(2003~2018年)

4. 電装(広州南沙)有限公司(DMNS)の設立

1. 電装(広州南沙)有限公司の設立

改革開放以降、華南地域は中国経済にとって重要な市場へと急成長し、同時に自動車産業の重要な供給基地となった。2000年代当初より、ホンダが既に広州汽車との合弁会社(広汽本田)にて雅閣(アコード)や奥徳賽(オデッセイ)を生産。さらにはトヨタ自動車が広州汽車と合弁会社(広汽豊田)設立を発表し、華南の自動車産業が勢いよく発展する時期を迎えていた。主要カーメーカーの華南進出に戦略的に対応すべく、華南への工場進出を検討開始。広州周辺でいくつかの候補地から、広州電装設立当初から協力パートナーである広汽集団、その株主である広州市、南沙に工場進出を決めたトヨタ自動車の意向を考慮し、国家級プロジェクトとして開発が始まった広州市南沙開発区に単独出資で工場を設立することを決定した。2004年7月、電装(広州南沙)有限公司(以下、DMNS)が正式に設立され、パワートレイン関連製品の生産拠点と位置づけられた。度重なる検討を経て設立されたDMNSは、デンソーが中国で設立した初の単独出資子会社であり、その後単独出資子会社を設立する際の手本となった。

工場竣工時 (2005年)
工場竣工時
(2005年)

当時の南沙は一面にバナナ畑が広がっており、工業用地に改修し、工場を建築した。また都市開発も初期階段にあり、交通インフラも不十分であった。そのため、広州市内からDMNSまで移動に2~3時間を要した(現在約1時間)。全国各地や広州市内から社員を確保するために、社員寮(社員の半分が生活。現在5%)を整備すると共に、毎日広州市内から会社通勤バスを10台以上走らせた。2005年8月に工場(現・第1工場)が竣工し、同年11月からインジェクター・ホーンを皮切りに出荷が開始された。以降、2007年までの2年間で11製品(VCT、SIFS等)の量産を開始した。主力製品VCTを扱う旧 機能品事業部(現・メカトロシステム事業部)が親事業部として、今日に至る生産基盤を整えていった。また、2007年では工機部門も設立し、デンソー中国全体の現地生産拡大に対応する体制も整えた。

2. 拡大期(2007~2019年)
南沙学園
南沙学園

市場の急拡大に対応するべく、2007年に第1工場第2期拡張。2008年には営業利益の黒字化に加え、品質レベル、会社経営の現地化に向けた取り組みが評価され、初めて社長賞優秀賞を受賞した。さらに2010年にはセーフティー関連製品(車輪速センサー、衝突センサー)の量産を開始し、複合拠点としての一歩を歩みだした。

一方で、ラインの自動化や設備の高度化が進むことが予見され、高技能者と即戦力人材の育成が急務となっていた。そこでデンソーのデンソー学園を参考にして、2011年南沙学院(現・南沙学園)を設立。(2023年時点、12期140人の卒業生を輩出。卒業生は生産、保全、工機、生技、品保の各職場で学んだ知識と技能を元にコア人材として活躍)

2011年には、南沙学院やデンソー逆出向などの積極的な人材育成と、部品現調化・内製化によるため替変動対応力、高い利益率が評価され、2度目の社長賞優秀賞を受賞した。

人材育成(自主保全員、設備に強いヒトづくり)を愚直に進め、2013年以降徐々に、設備合理化、アドオン自動化、AGV導入をDMNS主体で実現できるようになった。

そのような、DMNS独自の取り組みとスピート感ある工場変革の取り組みが評価され2016年には3度目の社長賞を受賞した。また2016年には第1工場第3期の拡張完了、2019年には、環境規制対応製品のELCMの量産を開始。さらには広州アスモを合併、モーター製品も追加し、4事業グループ6事業部にまで成長した。

3. 電動化・智能化への対応(第2工場の稼働)

「CASE」時代を迎え、中国市場においても電動化・智能化ニーズが高まっていた。広大な国土で安定供給実現と顧客の近接要求に応えるため、これまで1地域1生産拠点というエレクトログループの供給方針から南北2極(TDE・DMNS)生産体制へ方針転換し、2020年9月エレクトロ工場(第2工場)が竣工した。折しも、新型コロナウイルスの蔓延で日本との往来がままならない時期であったが、第1工場で鍛え上げた生産・生技・保全・品保各部キーパーソン33人をTDEへ長期派遣し、技術・技能を習得。ライン立ち上げには、デンソーマザーからの遠隔支援を受けて、2021年7月エンジンECUを皮切りに量産開始することができた。さらに2023年までに13製品38ラインを順次立ち上げた。

一方で、第1工場においても、電動化に必要な製品(SBWアクチュエーター(2021年)、電動VCT(2022年))を矢継ぎ早に量産開始した。高難度な部品・設備の現調を実現すると共に、第2工場立上げ同様にコロナ禍において、ナショナルスタッフ主体で立ち上げ、安定稼働を実現させた。

2024年にはPCU、2025年にはブレーキECUの立ち上げを予定しており、4事業グループ9事業部を擁し、文字通り複合拠点としての発展を遂げつつある。

4. 今後の発展に向けて
現在の会社全景
現在の会社全景

2004年の設立以降後、幾多の困難を乗り越えて、現在社員2000人が働く、華南地区の複合拠点としての発展を遂げた。南沙区も大きく開発が進み、今や社員の8割が南沙区内に居を構えており、地域との共生・貢献を果たすと共に、地域の協力・理解が益々重要となっている。DMNSと社員の一人一人更なる発展・成長と、「仕事は厳しくとも、家庭のように暖かい」会社でありたいという思いを込めて、2019年ナショナルスタッフ自らが議論を重ねて4つの共通価値観「成長」「活力」「貢献」「真心」を制定。さらに第2工場準備段階から、「あふれ出る当事者意識」「事業を超えた一体感」というスローガンを掲げ、事業や担当製品に関係なく、一人一人がDMNS発展のために、自ら何をすべきか考え行動するという風土が根付きつつある。

またカーボンニュートラル実現に向けて、2023年1月より太陽光発電を開始(1,300万kWh、デンソー中国最大の発電規模)し、必要電力の約3割を賄っている。毎年の省エネ活動と再生エネルギー購入と合わせて、2025年カーボンニュートラル実現を目指していく。

中国自動車市場が引き続き急速に変化していく中で、お客様のニーズに即した新製品の投入、愚直な人材育成、風土・価値観の浸透を通した安全・品質・競争力の確保によって、DMNSはお客様・地域・社員から愛される会社となり、真の華南中核拠点を目指していく。