第2章 勢いを蓄える(2003~2018年)

8. 電装(中国)投資有限公司上海テクニカルセンター(DICH-SHTC)の開設

1. 電装(中国)投資有限公司上海テクニカルセンターの開設
社屋
社屋

技術革新は企業が安定し長く存続するための核心であり、科学技術の新陳代謝が加速する今日においてはことさらにそうだといえる。デンソーは創業以来、技術革新にこだわり、それをかたくなに守ってきた。毎年売上の約10%を製品の研究開発に投じて最先端の技術を開発し、先進的な製品を生産することを事業経営の主な目的としている。2003年の電装(中国)投資有限公司(以下、DICH)の設立以降、それぞれの事業が着実に展開されていったが、技術面はやはり日本本社の支援に頼っていた。だが中国という巨大な潜在力をもつ市場を目の前にし、中国の顧客のニーズに合う製品とサービスを開発し生産することがこの市場を切り開き、事業を成功させる鍵であることはよく分かっていた。これにより、2006年3月、電装(中国)投資有限公司上海テクニカルセンター(以下「SHTC」)が開設され、近い将来に中国市場が必要とする技術と製品を開発するという光栄である一方、非常に難しい使命を担うことになった。

当時の中国事業は立ち上げたばかりで、技術開発はゼロから始めなければならなかった。SHTC開設の当初はわずか30人の従業員しかおらず、事業内容も日本本社の開発プロジェクトの補助的な仕事に限られていた。だがその開設は、デンソーが真に中国市場に根ざし、真の意味で経営の現地化を目指していることを十分体現していた。またSHTCの規模を徐々に拡大し、研究開発レベルを向上させていくという決意も表明されていた。当時のSHTCは立ち上げたばかりだったが、「現地の技術スタッフをゼロから育成し、中国市場が必要とする製品を先頭に立って研究開発する」という広大な目標をかかげていた。

その後、拡大し続ける中国市場に対応するため、SHTCは移転と拡張を行った。サービスレベルと競争力を高め、市場ニーズに合致し現地に根ざした設計体制を推進するためだった。2012年11月、新たなSHTCの定礎式が移転先の莘庄(シンショウ)工業区で行われ、開発区と会社の関係幹部が式典に出席した。1年余りの準備期間を経て、新住所のビルが2013年末に落成。新たなSHTCの敷地面積は3万4,000㎡、従業員数は2015年に500人に達した。この後、デンソーは新SHTCを中心に、顧客と市場のニーズを正確に把握し、現地の顧客のニーズに合致し、高い価格競争力を備える製品の開発に力を注いでいった。

2. 上海新テクニカルセンターのオープニングセレモニー
新テクニカルセンターギャラリー
新テクニカルセンターギャラリー

2014年7月18日、新SHTCの開所式が莘庄工業区の新住所で開催され、閔行区政府常務委員会の張国坤副区長、上海市経済情報委員会の馬靖副主任、莘庄工業区の王備軍書記(兼董事長)、在上海日本国総領事館丸山浩一副総領事のほか数多くの業界メディアが式典に出席した。デンソーの加藤宣明社長は挨拶の中で、政府および関連団体からの多大な支援に感謝し、新SHTCの開設によって、営業・技術を一体化した現地開発体制をさらに強化し、中国自動車産業に貢献したいと述べた。

2012年に総合実験棟を含む新SHTCの建設を開始し、2014年7月に正式に稼働させた。新SHTCでは環境風洞室、環境実験室、排ガス実験室、エンジン実験室などを導入し、クルマのシステムやエンジンに対して性能や耐久性の測定・評価ができるようになり、競争力のあるシステムや製品の開発が可能となった。また全面的かつ先進的なデンソーの技術を披露するため、センターの1階にはショールームも設置された。新SHTCの始動とともに、ショールームも2014年4月から運営を開始した。「環境」「安全」「快適·便利」の三つのエリアに分けられ、「システム製品」を中心にデンソーのさまざまな分野の製品が展示された。