欧州地域の物語

第4章 経済危機

デンソーも穏やかながら調和と繁栄を享受できたこの時代は、突如として失速する。2007年に発生した世界金融危機のために世界経済が根底から揺らいだためである。多くの企業と同様に、ヨーロッパにおけるデンソーの事業もこの歴史的な出来事の影響を免れることはできず、経営陣は雇用を守りながら損失を最小限に抑えるという難題に直面した。

他の多くの企業がためらうことなく人員整理したであろう、このような危機的で困難な時期においても、社員優先を当たり前とする企業体質は、先進、信頼、総智・総力に基づき一丸となって取り組む姿勢を重視する会社の精神と価値観を反映したものであった。

ある工場ではチーム一丸となり職場に誇りを持って、経費節減のために、社員一人ひとりが施設の清掃と日々の整備に取り組んだ。実現されたコスト削減は大きなものではなかったが、一人ひとりが自分自身ができる貢献を体現した事例である。また別の工場では、生産量が少ない時期を自分たちのスキル向上に時間が割ける好機と捉え、職場全体でスキル向上に取り組み、将来のためのモノづくり力の向上に取り組んだ。どちらの事例も、デンソーの社員が苦しい時でも、将来の成長を信じて自分たちができることを全員で取り組むデンソーらしい事例である。