欧州地域の物語

第5章 VUCA・CASE時代の到来と価値観の役割

2010年代半ばから、現状に根本的な変化が起きていると認識されるようになる。多くの専門家が指摘する、VUCA(volatile<変動性>、uncertain<不確実性>、complex<複雑性>、ambiguous<曖昧性>)や、CASE(Connectivity<コネクティビティ>、Autonomous Drive<自動運転>、Car Sharing<カーシェアリング>、Electrification<電動化>)時代の幕開けである。

デンソーの二大目標:「グリーン(環境経営)」と「安心」
デンソーの二大目標:「グリーン(環境経営)」と「安心」
デンソー・ヨーロッパが展開するLTP2025
デンソー・ヨーロッパが展開するLTP2025

先を見通せない時代、またデンソーにとって第二の創業期とも言える時代だからこそ、デンソーの価値観や目指す方向性を社内外に明確に示す必要があった。そこでデンソーは、グローバル方針として「2030年長期方針」を策定した。その中で、「地球にやさしく、すべての人が安心と幸せを感じられるモビリティ社会の実現に向け、新たな価値を創造し続ける企業」をスローガンとし、「環境・安心の価値拡大、クルマから社会全体に広がる価値提供、そして社会に共感いただける新たな価値創造」を向うべき方向性と定めた。これらに基づき、世界に先駆けてカーボンニュートラルな製造業となること、交通事故死亡者ゼロ社会を実現すること、社会課題を解決するソリューションを提供することなどを目指して、世界各地で具体的な取り組みを開始した。

欧州においては、環境問題への対応で世界をリードしている欧州であるからこそ、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーのグローバル戦略策定・実行に欧州が主要な役割を果たそうと行動に移した。実際、2035年を見据え、ヨーロッパの生産拠点全体でカーボンニュートラルの達成に積極的に取り組んでおり、水素、合成メタン、再生可能資源由来の電気の利用、炭素回収やカーボンオフセットなどの取り組みを通じて、この目標に向けてすでに大きく前進している。

変化する産業、政府、社会の期待に自動車業界が応えようとするにあたって、この変革の中心となるものは技術革新である。欧州には世界の自動車業界を技術面で牽引してきたOE顧客が多数存在する。欧州デンソーにとって、技術を磨きグローバルに通用するコア製品を生み出すく絶好の地域である。この面でも欧州地域がグローバルに果たす役割は極めて大きいと言える。