7. 品質サークル:従業員の参加とアイデアの受け入れ

1980年代を通じて、デンソーは北米で着実な成長を遂げた。その後の10年間で、社員は顧客との関係を強化し、ミシガン州バトルクリークとテネシー州メアリービルでは新工場が稼働して、デンソーは事業のグローバル化にかじを切った。
こうしたコンピテンシーの中で最も重要であり、デンソーの礎となったのは、ほかに類を見ない製品とプロセスの品質だった。
本社では長年にわたってQCサークルを活用して社員主導の品質改善プログラムを確立し、ベストプラクティスを共有し、製造現場のチームを育成してきた。
1992年には、北米のデンソーが独自のQCサークルプログラムの開発を始めるまでになった。
品質管理サークルの教材
デンソーのQCサークルは通常、工場で働く多様な社員によって構成され、協力して生産の問題解決にあたる。改善プロセスには次のものが含まれる。
- 問題の特定
- 真因の発見
- 必要な調整または改善の実施
- 解決策が成果を出すまでテストを実施
- 他の分野への改善の応用
品質管理技術者として1998年にデンソーに入社し現在は次長を務めるエリック・ベンソン(Eric Benson)は、QCサークル運営委員会を率いて積極的に改善活動を支えている。
「当然のことながら、お客様は部品やシステムがどこで製造されていようと同じ品質を期待していましたし、それは今も変わりません」と、ベンソンはいう。「最初はデンソーの『専門家』としてお客様と工場の間に立ち、必要に応じて生産チームに問題を持ち帰っていました。それからその問題を解消するための取り組みをサポートするか、指揮するのです」「QCサークルに直接関わるようになると、改善のいくつかがいかにQCサークルのプログラムによって進められているかが分かるようになりました。
そして、北米工場の独立した操業と、それに伴う製造プロセスのばらつきが、ベストプラクティスを実施する上での課題であることが判明しました。さらに、その大半では、多様な要件と要望を持つ多様なお客様を抱えていました。
それでもデンソーの品質には譲れない基準があり、すべての社員がその基準をクリアし、超えるように激励されました。
そうであれば、地域のベストプラクティスをつくり上げ、それを採用して、製造エコシステム全体でコスト削減や品質向上を実現できる可能性があります。これは全員が品質プロセスに全力で取り組まねばならないことを意味します。
品質について話す時、私たちはそれを全員の責任として話します。上層部から現場まで、それは中核となる価値観であり、当社の文化の重要な部分です」と、ベンソンは語る。

ゲームのはじまり
社員の徹底した取り組みを維持するために、デンソーの北米担当チームは北米QCサークル大会(North American Quality Circle Conference、NAQCC)を立ち上げた。1992年以来、多くのチームが毎年恒例の大会の出場権を得るために何カ月もかけて努力を重ねてきた。
「社内の各チームは、自らのQCサークルが取り組んだこと、実施した改善、達成した成果を発表し、トップの座を争います。NAQCCには三つのテーマがあります。品質、生産性、安全衛生です。得点の高いチームが、4月に行われる本大会へと進みます」と、ベンソンは説明する。
通常、NAQCCの本大会は地域の関連会社が主催し、リゾートスタイルの設備が整った魅力的なロケーションで開催される。北米全土から最高幹部が参加することもあり、社員チームにとってはプレゼンテーションのスキルを磨き、前向きな反応を得ることで、チームビルディング能力を鍛えるチャンスとなる。


デンソーのQCサークルは二つの重要な成果が特徴である。一つは、手を挙げて意見を述べる機会が、生産に携わる社員にもたらされること。これは積極的で創造的な労働力にとって重要なことである。もう一つは、安全性の向上、生産時間の短縮、製品品質の向上といった実際の成果がQCによってもたらされることだ。
「QCサークルからは、卓越性に対する感度が高い優秀な人材が生まれるのです」と、ベンソンはいう。
