第2章 成長の初期

4. コミュニティの支援、ミミズさえも

現在も稼働中のデンソー・メキシコのアポダカにあるミミズ農場には、75,000匹以上の赤ミミズが生息している。
現在も稼働中のデンソー・メキシコのアポダカにあるミミズ農場には、75,000匹以上の赤ミミズが生息している。

デンソーのアポダカ工場に近いメキシコの農場には7万5,000匹を超えるカリフォルニアミミズが暮らしており、毎日他にはない食事体験を楽しんでいる。

メニューを聞くと気味が悪いと感じられるかもしれないが、このうねうねとはいまわる生き物たちとっては大きな喜びなのだ。

おなかをすかせたミミズたちが思わず「釣られる」毎日の食事とは、デンソーの食堂から出る生ゴミ、化粧室の使用済みトイレット(衛生)ペーパー、そこから生じる下水汚泥、そして工場敷地内の植木ゴミだ。

この独特な食事は食欲をそそらないように聞こえるかもしれないが、ミミズたちの大好物だ。実際、彼らは毎日自分の体重分の有機生ゴミを消費している。その最終的な産物は、総量が年間約30トンに達する彼らの排せつ物から生成される高濃縮の肥料だ。

2006年 ミミズ農場の手入れ
2006年 ミミズ農場の手入れ
稼働するミミズ養殖

デンソー・メキシコ社の安全衛生環境(SHE)地域担当室長のマルコ・ガルシア(Marco Garcia)によると、ここではミミズ堆肥と呼ばれる有機的なリサイクル方法、すなわちミミズ養殖が稼働している。

ガルシアによると、この虫はアポダカ工場の廃棄物リサイクルと同種のプロセスで廃棄物を食べて腐植を排出する。深刻になり得る問題を、豊かな有機肥料に変えてくれるのだ。
腐植という名称は、分解された有機物や微生物で満たされた土壌の上層を示すために用いられる。土壌が肥沃であるためには腐植を含んでいる必要があるのだと、ガルシアはいう。3カ月を要する堆肥化から乾燥段階まで、排せつが肥料になる全体のプロセスには時間がかかる。

DNMXのSHE環境担当課長であるフランシスコ・ルイス(Francisco Ruiz)によると、2006年に設立されたこのワームファームのおかげで、DNMXの年間の廃棄コストも約3万ドル削減されている。虫たちが、アポダカの製造工程から生じる埋め立てゴミを削減し、結果としてモンテレイ地域における産業埋め立て地の混雑状況を緩和しているのだ。加えてこのワームファームは、工場によるゼロエミッション基準の環境目標と同調している。

2011年 学生たちにミミズ農場の見学ツアーが行われた
2011年 学生たちにミミズ農場の見学ツアーが行われた
贈り続ける贈り物

ワームファームのメリットはそれだけではない。この有機肥料は袋詰めされ、デンソー社員たちの家庭菜園を豊かにするために配られたり、近隣の町々に贈られて、自治体が木や花を植えるための土壌に用いられたりしているのだと、ルイスは語る。工場の社員や他の人たちのために毎月120袋配られるのが普通だという。

このプロセスには地域の教育的な側面もある。アポダカ工場の社員、近隣住民、学生、環境団体が大勢参加して、「住宅用ワームファーム」の育て方について学べるミミズ堆肥ワークショップが施設内で行われている。

講習の参加者は、メモを取ったりワームファームを見学したりできる。ファームは工場の敷地の端の、鮮やかな青緑色のテントが張られた構造物の中にある。そこでは肥沃な土が何段にも重ねられた揚げ床の間を、立派な敷石の歩道が通っている。

構造物全体が頑丈な網で囲まれており、さまざまな気象要素を取り込むことができるが、厄介な鳥が入り込めないように設計されている。もちろん、早起きして三文の得を狙う鳥たちもですと、ガルシアはいう。