8. アイデアから現実へ:デンソーのエコパーク

そのアイデアの種は、北米安全衛生環境(NASHE)の次長ショーン・ブライアント(Shawn Bryant)が2012年に日本を訪問した際に生まれた。根付いた種は今や、さまざまな樹木、果樹園、0.75マイルの遊歩道、小さな池、日本風の休憩場(東屋)を備える、テネシー州アセンズの11.5エーカーのエコパークとなった。
ブライアントは当時、デンソー・マニュファクチュアリング・アセンズ・テネシー(DMAT)社の安全衛生環境(SHE)担当課長を務めていた。日本でデンソーのエコパークを見た彼は、なんとか日本と似たような緑地をDMATの施設に隣接する地域に作れないか調査を行った。 地元の人は、貯水池のウェッブ湖とマクマハン教会墓地の近くに位置するその地域をよく知っていた。
「施設の隣に利用可能なアセンズ工業団地の11.5エーカーの土地がありました。この小さな土地を開発できる可能性があると考えました」と、ブライアントはいう。 「デンソーはグリーンコミュニティーの取り組みを支援する方法を見つけたいと考えています」
緑を増やすブライアントのアイデアに、アセンズ市公園レクリエーション局とマクミン郡経済開発局から「グリーンライト(青信号)」、つまりゴーサインが出た。社員と地域社会の人たちが自然の中を歩き、学び、自然に帰ることのできる安全な場所として土地を開発するにあたって、皆がさまざまな可能性を見いだしていた。
「デンソーはさまざまな形の野外教室としての可能性を考えていました。学校の子どもたちが木々の種類を見分けたり、湿地帯や魚の泳ぐ池で学んだりして、生物多様性を発見できるようにするのです。デンソーでは木々の情報のQRコードを開発したり、地元の高校と共同でイベントを開催したりもしました」と、ブライアントはいう。
彼は、環状の遊歩道で工場の社員が運動できる可能性も見い出しており、「近隣の工場がピクニックテーブルを寄付してくれたので、その気になれば社員は外で昼食を取ることができました」と付け加えた。「プロジェクトは現在も順調に進んでおり、今では公園にトイレが設置されています。楽しいプロジェクトです」
デンソーエコパークの南東3.5マイルに位置するアセンズ市も、公園レクリエーション局を通じ、わずかな利用料金でエコパークの休憩所を市民に貸し出している。また市の経済開発グループは、今後近くの工業団地に拠点を構えようと検討する企業のために、ジョージ・R・プリンス大通り2900番地にあるこの公園を、緑あふれる特典として売り込んでいる。
ユニークなアセンズ市のYouTube動画は、エコパークのことを「経済発展と環境保護が融合する場所。環境への優しさと事業への優しさが融合する場所。環境に優しい製品を製造するデンソーが資金提供する、アセンズ工業団地を支える都市公園」として宣伝している。 この公園には3段階で資金が提供されており、市では産業汚染に対して課された罰金も資金として生かしている。
エコパークは日本のデンソーの土地に対する考え方と、アセンズの工業団地計画の将来の可能性が見事に融合した場所だと、ブライアントは語る。
「日本の地方で成長を遂げたデンソーでは、長きにわたって環境を守ることが伝統の一部でした。そこで私たちは、デンソーの日本の伝統を体現するエコパークを開発して、環境に優しく学びにもなるオアシスを、社員と地域の人々のために作りたいと考えました」と、彼はいう。

25年を超えるキャリアを持つこのデンソー社員は、最近ではテネシー州メアリービルを拠点に、SHEを指揮して北米のデンソーのために再生可能エネルギーの調達に取り組んでいる。2022年秋に着工したデンソーのブラウント郡拠点に建設予定の太陽光発電施設に、ブライアントは深く携わってきた。
シリコンランチ社、メアリービル市電気局、テネシー川流域開発公社(TVA)と提携するデンソーの新しい太陽光発電施設は、グループがテネシー州で稼働を計画している4つの太陽光発電施設の最初の施設である。
このような地域社会の連携が、クリーンエネルギーの未来に向けた強力な地域構想を形作っていると、ブライアントはいう。地域におけるデンソーのサステナビリティの取り組みは、2035年までに生産施設内でカーボンニュートラルを達成する国際的な目標の代表例だと自負していると、彼は付け加えた。