1. 鍵なんていらない

車のデジタルキーをスマートフォンにダウンロードし、それを使って車の位置を確認して、乗り込み、発進する。これほど簡単なことがほかにあるだろうか? DIAM社員から成るチームを後押ししたのは、まさにこの問いであった。彼らは2012年にはすでに消費者のニーズとスマートフォンユーザーの動向に注目していた。

2019年6月、デンソーはDIAMに「世界初のイノベーション」に対する社長賞を授与した。この賞は、世界初の挑戦を通じてデンソーグループに対する卓越した貢献を評価し、進歩的でダイナミックかつ名誉ある業績を認めるために贈られたものである。
この発想により、デンソーは「phone-as-a-key(キーとしてのスマートフォン)」テクノロジーで世界初を達成し、DIAMは2018年度に念願の「President’s Award for Innovation(社長革新賞)」を初受賞した。
「シームレスなライフスタイルが出現し、人々はあらゆることにスマートフォンを使うようになっていました」と、DIAMのエンジニアリング・モビリティエレクトロニクス担当上級副社長であるティエンチン・リュー(Tianjin (TJ) Liu)はいう。「スマートフォンをキーとして使用できれば便利でシームレスなアクセスが可能になる、と私たちは考えたのです」
InfiniteKey®テクノロジー
PaaK製品を市場に投入するための戦略の一環として、デンソーは2017年にミシガン州のテクノロジー企業インフィニート・キー(InfiniteKey)社を買収した。デンソーがスマートフォンベースの自動車アクセスの作動に利用できる、特許と基礎技術を保有する企業である。
リューと彼のチームがデモ車両でこの技術を披露した時、フォード社とボルボ社が興味を示した。デンソーは2019年までにフォード社にPaaKを供給し、人目を引くマスタングMach-EとベストセラーのF150にこれが搭載された。
未来を見据える
2020年、デンソーは改良型パッシブデジタルキー技術を持つドイツのテクノロジー企業Lambda:4社と提携し、この分野における世界的な優位性をさらに確固たるものにした。同年、フォード社はデンソーの「Bluetooth Low Energy PaaK」に対して「Ford Excellence Award(フォード優秀賞)」を授与した。
「デンソーは常に未来を見据え、主導的な立場を維持できる次世代技術の創出を目指しています」と、リューは語る。「デンソーは、安心を実現するという理念に基づき、PaaKを通じて安全でコネクテッドで便利な選択肢を提供します」
PaaKの技術は2019年当時の最先端技術であり、現在ではそれを基盤としてデンソーのほかのコネクテッドカー向けアプリケーションが発展を遂げつつある。

2024年7月、デンソーの社員たちは「テネシー州で作られた最もクールなもの」賞のランチョンに参加し、PaaKが4つのファイナリストの1つに選ばれた。2か月間にわたり、121製品に対して75,000票以上のオンライン投票が行われ、デンソーへの注目はしっかりと確保された。