3. 付加製造:未来を駆動する

ジョン・バシアク(John Baciak)は、デンソーのアディティブデザインとアディティブマニュファクチャリングに対する取り組みを「新しいフロンティア」と呼んでいる。ミシガン州サウスフィールドを拠点に25年間デンソーで働くこの材料技術者は、2020年に結成されたアディティブマニュファクチャリングチームが彼のエンジニアリンググループに配属された時、「皆、とても興奮しました」と語る。

材料を積層してオブジェクトを作成するアディティブマニュファクチャリングは、製造作業に対するデジタルの柔軟性と効率性を高める技術的進歩である。製造業者は、超微細な層を一度に1層ずつ重ねて3次元オブジェクトを「育てる」ことができる。連続する各層は、溶融または一部溶融した先行する材料の層に結合する。部品全体が作成されるまでこの工程が繰り返される。

これに対してメーカーによる従来の方法によるオブジェクト作成は、多くの場合、形削り、カービング、フライス削り、切削、その他の方法で材料を除去することで行われる。アディティブマニュファクチャリングの説明には「3Dプリンティング」と「ラピッドプロトタイピング」という用語が用いられるが、それぞれの工程は厳密にはアディティブマニュファクチャリングの一部である。バシアクのチームはデンソーの北米生産革新センター(NAPIC:American Production Innovation Center)と連携し、技術支援機能として人員を供給している。彼はミシガン州のアディティブマニュファクチャリング機能をサポートする材料設計技術者と一緒に仕事をしているが、ハイブリッドレーザー粉末床溶融結合マシンとバインダージェットマシンがあるデンソー・マニュファクチュアリング・テネシー(DMTN)社にも月に数回出張している。
アディティブマニュファクチャリングと3Dプリンティングの技術は過去10年ほどにわたって存在していたが、バシアクは「自分が大学にいた頃には普及していなかった」ため、その特性と利点についてしっかり理解する必要があったと語る。アディティブマニュファクチャリングを適切に用いれば、より高い性能を持ち製造が簡単な部品が手に入るのだと、彼は説明する。「コストを下げることができ、『損耗』の少ない部品などの独自の特長を実現できるため、部品の使用サイクルを延ばすことができます」と、彼はいう。「これは今後の成長にとって重要な項目の一つです。グループの目標は、デンソー初の3D量産自動車部品をグローバルに生産することです。早ければ2027年に実現したいと考えています」と、彼はいう。「アディティブプロセスは新しいものではありませんが、以前は速度とサイズが制限されていたため、自動車業界では主に試作品の製造に使用されていました」と、NAPICのデイブ・グリマー(Dave Grimmer)上級副社長はいう。「現在進んでいる技術革新によって加工時間が短縮されているため、従来の製造のコストと競合するようになるでしょう」 「5年後には従来の製造のコストに並び、10年後にはそれを超えると予測しています。この分野でのリーダーシップを確保するために、戦略的な共同パートナーシップを結んでいます」と、グリマーはいう。
革新的なアディティブマニュファクチャリングに対する取り組みはグループの「最重要項目」であり、北米がデンソーのグローバルな力の源泉となり得るが、それ以上に、これは大革命をもたらす技術なのだと、彼は続けて説明する。「私たちはチームでこのイノベーションを成し遂げます」 バシアクはそのように語り、この分野におけるデンソーの進歩は「部門横断的な協力を伴った、新たな良い方向性です」と続けた。「まさか自分がこのような仕事をするとは思ってもいませんでした。仕事に行くと、やりがいも刺激もあり、気が引き締まります」と、彼はいう。