第6章 課題への対応

10. 困難な時には、デンソーの社員は創造的になる

2017年6月2日、DMTN統合倉庫で初出荷式が行われた。この倉庫はテネシー州メアリービルにあるデンソーの3つの主要な建物を結び、非常に狭い通路(VNA)と自律型タグ技術を利用して効率を向上させている。
2017年6月2日、DMTN統合倉庫で初出荷式が行われた。この倉庫はテネシー州メアリービルにあるデンソーの3つの主要な建物を結び、非常に狭い通路(VNA)と自律型タグ技術を利用して効率を向上させている。

「私が倉庫のスペースを確保しようとしていた時、誰もが同じことに努めていました。」 

DMTN倉庫業務担当次長であるジェイソン・ハーディン(Jason Hardin)は、2020年に新型コロナウイルス感染症の世界的流行によってデンソーの倉庫業務に予期せぬサプライチェーンの混乱が生じて以来、「白髪が確実に増えました」と語る。 

テネシー州メアリービルにあるデンソー・マニュファクチャリング・テネシー(DMTN)の302号棟統合倉庫。
テネシー州メアリービルにあるデンソー・マニュファクチャリング・テネシー(DMTN)の302号棟統合倉庫。

新型コロナウイルスに関する規制が明らかになり始め、「何が起こるか誰にも分かりませんでした」と、ハーディンは言う。「世界的流行は1週間か2週間で終わり、通常の状態に戻るだろうと思っていました。しかしそれから、お客さまからの発注が止まりました。」 

「通常時の事業にも量変動はありますが、状況はかなり安定しているものです。このような状況は想像もしていませんでした。お客さまは組立を行っていないぞ、うーん、この部品をどうすればいいんだろう、という感じでした」と、彼は笑いながら言う。

「20週間分の部品がまだ世界中からここに送られてくるため、保管場所を見つける必要がありました。速やかに倉庫のスペースを増やす必要があったのです」と、彼は言う。
既存の倉庫スペースを拡張するために、ハーディンと彼のチームはデンソーから半径5~100マイルの範囲で調査を開始した。

「チームは毎日何度もミーティングを開いて倉庫のスペースと在庫のニーズを確認し、スペースの需要を予測しようと努めました。これまで物件を探しに行ったことは一度もありませんでした。 私たちはインターネットを徹底的に調べ、あらゆる利用可能なスペースを探しました。幸い港が閉鎖されて当社の在庫がまだしばらく船上にとどまっていたため、少し時間が稼げました」と、彼は言う。 

「基本的に当社の倉庫のニーズは、2019年の2棟レンタルで合計10万ft2から、2020年には5棟レンタルで30万ft2になり、2022年には6棟レンタルで52万5,000ft2になっていました」と、ハーディンは言う。 

彼のチームの目標は「可能な限り大きな倉庫を見つけ、可能な限りニーズの変動を吸収すること」だったという。「いくつか異なる場所を確保する必要がありましたが、デンソーは目標が変化することはわかっていましたし、必要なスペースと通常に戻るタイミングを予測できないことも知っていました。私たちは柔軟性と忍耐力を重んじました。」
通常の出荷業務と在庫管理業務が突然、不安定になったのだと、ハーディンは言う。FIFO(先入先出法。最初に購入または生産された商品が最初に販売または使用されることを前提とした在庫評価方法。古い在庫が新しい在庫よりも先に顧客に出荷される)がその一例だ。そしてそのすべてを通して、ハーディンと彼のチームは「新しい現実と変化への方針に対処しながら、とにかく仕事をやり遂げようと努めていた」のだという。 

「対処を要する新たな危機が、毎日発生しているようでした。在庫をどこに置くのか、必要な時にどのように回収するかという問題がありました」と、彼は言う。

PDCA(Plan Do Check Act、計画 実行 評価 改善)アプローチなどのデンソーの課題解決プロセスは、「この期間に創造と先取を発揮する上で大いに役立ちました。問題が発生したら、解決策を見つけてPDCAサイクルを実行するのです」と、ハーディンは言う。 

「この変化全体を通じてチームが平常心を保ったまま対処できたことを誇らしく思います。彼らは繰り返し次善の策を模索し続けました」と、彼は言う。
「障害を挑戦の機会と考え、『不撓不屈』のアプローチで臨む社員と一緒に仕事ができることを、誇りに思います。」