DRIVEN BASE

CFO(チーフ・ファイナンシャル・オフィサー)MESSAGE

財務戦略の実行と成果の積み上げにより
継続的に企業価値を創造する力をより確実なものに

  • CFO MESSAGE

代表取締役副社長 CFO
松井 靖

 

2023年度実績の概況
さらなる成長と企業価値創造の実現に向けて

2023年度は、半導体不足の緩和を受けた日本・北米を中心とする好調な車両販売や円安の進行、電動化、安心・安全製品などの注力領域を中心とした拡販の実現により、過去最高の売上となる7兆1,447億円(前年度⽐+11.6%)を達成しました。それに対し営業利益は、電子部品を中心とした部材費や労務費の高騰を合理化努力・価格転嫁で打ち返した一方、燃料ポンプを中心とする2,015億円の品質引当を受け、対前年度減益の3,806億円(前年度比▲10.7%)となりました。

2024年度は、中国の地場メーカ販売拡大による日系車両の販売苦戦や、アジアでの与信厳格化に伴う市場不振など、厳しい外部環境が想定されます。このような環境下でも、研究開発や人への投資は将来成長に向け着実に強化しつつ、注力事業を中心に付加価値の高い製品の拡販、合理化努⼒や変動対応力のさらなる強化により、売上収益は7兆3,300億円、営業利益は6,920億円のいずれも過去最高を目指します。

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ROEについては、2023年度は品質引当の影響を受け、前年度比▲1.0ポイントの6.3%となりました(引当除く9.0%)。2025年度ROE10%超の目標達成にこだわり、 2024年度は収益力の着実な強化を進め、9.3%を目指します。

また、2025年中期方針においては、カーボンニュートラルと交通事故死亡者ゼロを実現することで、社会的価値を創出することも宣言しました。

ここからは、社会課題の解決と持続的な事業成長の両立に向けた取り組みを、財務戦略の4つの柱に沿ってご説明します。

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1. 収益体質の強化:
「3つのチャレンジ」を軸に、理念の実現を目指して

(1)持続的な価値向上を実現するROIC経営の浸透

当社のROIC経営は、短期的な財務指標向上の手段ではなく、中長期での持続的な企業価値向上を目的としており、経営メンバーと社員一人ひとりによる意義の理解と体現によって実現されると考えています。

経営KPIであるROICと個人の改善活動とのつながりを見える化したROICツリーの展開、定期的な社内教育、ROIC改善事例のグローバル社内報での紹介など、様々な角度から社員一人ひとりに指標の意義を浸透させることに取り組むとともに、取締役の業績連動報酬の基準へのROICの追加や、KPIの一つとして目標開示を行うなど、経営トップの意識とコミットメントをより強固にしています。持続的な価値向上に向け、今後もROIC経営の浸透と進化を進めていきます。

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(2)「3つのチャレンジ」による事業ポートフォリオ入れ替え

当社は、理念である「環境」と「安心」の社会価値を創出し、ステークホルダーの皆様からの共感をいただくことで成長してきました。世の中から求められる価値が自動車領域から社会全体の課題解決にスケールアップする中、当社は理念に基づき、「モビリティの進化」「基盤技術の強化」「新価値創造」の3つのチャレンジに取り組むことで、より幅広く持続的な社会価値の創出と事業成長を両立させていきます。

そのために不可欠な取り組みが、継続的なポートフォリオの入れ替えです。理念の実現、成長性、収益性(ROIC)の観点から、時代に合わせた適切な構成となるよう見直しを行い、価値創出を進めることで、2030年度には売上7.5兆円、営業利益率・ROE12%水準を目指します。

以下のパートにて、3つのチャレンジと主に内燃事業の総仕上の観点で、それぞれの目標・取り組みをご説明します。

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① モビリティの進化(電動化・ADAS)

電動化とADASの両分野は、環境・安心の理念と持続的な成長を実現するための最重点領域です。当社の強みを活かした新たな価値を提供し続けることでモビリティの進化に貢献し、市場を上回る成長を継続します。

まず電動化においては、BEVを中心としたモビリティの電動化が進む中で、長年の実績に裏打ちされた技術力と多様化するお客様のニーズに応える幅広い品揃えによる差別化を進めています。2023年度のインバータ売上実績は477万台と、北米や中国での拡販により前年度から1.4倍に拡大しました。その他にも、電源システム、操舵・制動、熱マネジメントといった、エネルギーマネジメントシステム全体でのクルマの電動化の普及に貢献し、環境価値の拡大とグローバルでの拡販を推進することで、2030年度の売上1.7兆円(2023年度比1.9倍)を目指します。

次にADAS(先進安全)分野においては、交通死亡事故カバー率を37%まで向上させた「Global Safety Package 3」の拡販が順調に進んでいます(前年度比1.8倍)。また、さらなる安全価値の提供に向け、検知範囲や対象を拡大した次世代製品投入の目途付けも完了し、2025年度には事故カバー率を56%まで向上できる見通しです。今後はHMIや交通環境などのインフラと連携した先進技術の開発も推し進め、2030年度には売上1.0兆円(2023年度比2.1倍)と事故カバー率80%を、さらに2035年度には、交通事故ゼロの自由で安全な移動を実現し、社会課題の解決に貢献していきます。

② 基盤技術の強化(半導体・ソフトウェア)

前項でご説明したモビリティの進化を推進するためには、基盤となる技術の発展が不可欠です。当社はクルマの電動化・知能化を支えるカギとなる「半導体」と「ソフトウェア」を基盤技術と定め、積極的なリソーセス投入とパートナー連携を推し進めることで、技術力に磨きをかけるとともに、供給体制を強固にしていきます。

半導体分野では、主に電動車の航続距離延伸に貢献するパワー半導体への投資を進めており、2023年には当社初のSiCインバータを市場投入しました。またSoC分野では、「自動車用先端SoC(System on a Chip)技術研究組合(ASRA)」に参画し、業界をまたいだ研究開発を進めます。

供給面では自社の生産能力だけではなく、パートナーとの連携を進めることで、バリューチェーン全体を強靭化しています。その一環として、2023年度は垂直統合で競争力を強化するために米国コヒレント社のSiC製造を手掛ける事業会社、Silicon Carbide LLCに新規出資しました。また、より安定した供給体制の確保を目的に、Japan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)株式会社への追加出資も行っています。

これらの取り組みにより、2030年度までに累計5,000億円の投資を行い、2035年度には事業規模を7,000億円(2023年度比2.7倍)を目指します。

次にソフトウェアは、自動運転や電動化、コネクティッドなどクルマの知能化に対応するためのコア技術と位置付け、開発力を強化していきます。ソフトウェアがクルマやサービスの価値を飛躍的に高めるSoftware Defined Vehicles(以下、SDV)の考え方が広がり、システムの複雑化・大規模化への対応が重要となります。40年にわたる車載ソフトウェア開発において培ってきたOEMからの要求機能をソフトウェアで実現する力と開発資産をベースに、社外との戦略的提携を積極的に進め、IT技術やAIなどを活用した先進的な開発手法を取り入れるとともに、ソフトウェア人財の採用拡大・社内リスキリングの促進により、開発力の質的・量的拡充を実現します。2030年度には1.8万人(2023年度比1.5倍)の開発体制を確立し、2035年度には事業規模8,000億円(2023年度比4.0倍)を目指します。

③ 新価値創造

当社はこれまでモビリティ分野の進化に貢献することで、社会価値を創出してきました。これからはモビリティに限らず、クルマづくりで培ってきた強みを活かし、新たな領域での社会課題解決と一段の事業成長を実現すべく、エネルギー、食農、FAの新価値領域へ投入を進めます。

いずれの分野においても、スピード感を持った事業拡大を実現するため、自前主義にとらわれず戦略的なパートナー連携を進めます。2023年度にも食農分野において、施設園芸分野で世界トップクラスの先進技術を有する、セルトングループを完全子会社化しました。

これらの取り組みを通じ、新価値領域は2030年度には売上3,000億円、2035年度には全社売上の20%を占める成長を目指します。

④ 総仕上(内燃事業)

最適な事業ポートフォリオを実現するためには、注力領域の成長と並行し、適切なタイミングでの成熟事業の縮小や撤退も必要です。縮小や撤退は短期的には痛みも伴いますが、次の成長と新たな社会価値創出に貢献する”総仕上”として、全社一丸となり敢行しています。

具体的には、当社事業を112個の製品群に細分化し、「理念の実現」「成長性」「収益性(ROIC)」の3つの判断軸で、各製品群の方向性を定期的に判断しています。直近では、フューエルポンプモジュールやⅢ型オルタネータ、スパークプラグや排気センサ事業を譲渡の対象としました。これらは当社の成長を支えた内燃機関におけるコア製品であり、現在も高い収益力を有しています。しかし、デンソーだけでなく自動車業界がより一層成長していくためには、会社をまたいだ選択と集中が不可欠です。理念を実現していく意思を込め、当社と業界全体の中長期的な成長を目指し、業界内の再編をリードしていきます。

これらの取り組みによりリソーセスを生み出し、成長領域へ大胆にシフトさせることで、3つのチャレンジを確実に実現させていきます。

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(3)変化に対応したビジネスモデルの変革

事業ポートフォリオの変革と並行して、外部環境や事業内容の変化に対応するビジネスモデルの変革も進めています。

インフレに伴う足元の部材費の値上げやエネルギー費上昇、賃上げなどの外部環境変動に対しては、「サプライチェーン全体の競争力向上」と「経済循環の実現」を目指し、費用変動を適切に取引価格へ反映する仕組みづくりに取り組んでいます。

当社はTier1として幅広いサプライヤーと関わり、またお客様であるカーメーカと直接取引をする、サプライチェーン上重要な立場にあります。サプライヤーの影響について主体的・積極的に状況を確認し、取引価格への反映に真摯に対応するとともに、お客様へ丁寧な説明を重ね、取引価格に適切に反映させていただく活動を進めています。加えて、一般社団法人日本自動車部品工業会などの関係団体にも当社の取り組みを事例として紹介するなど、業界全体の取引適正化の取り組みにも積極的に関わり、業界の競争力強化への貢献をリードしていきます。

また、事業内容の変化に対するビジネスモデルの変革も推進しています。市場環境が激しく変化する中で、お客様の便益の向上に貢献する技術力・供給力を当社の価値として提供するとともに、それを定量的に示し、正しく認めていただくことで、お客様と当社の競争力強化を両立していきます。

例えば、ソフトウェアの領域においては、従来ECUに組み込まれて販売されていたソフトウェアが、ECUから分離しソフトウェア単独で商材化されるビジネスモデルが増えつつあります。こうした変化に対し、ソフトウェアの取引価格について、当社のソフトウェアがお客様に提供できる価値を定量化し、開発に要した工数ではなく価値ベースで訴求する取り組みを進めていきます。

(4)将来に向けた戦略的投入

持続的成長と収益体質の強化を両立するためには、メリハリあるリソーセス配分が必要不可欠です。モノづくりと技術力における当社の優位性をさらに強化すべく、設備投資と研究開発へ最適な投資を行います。

まず設備投資においては、事業ポートフォリオの入れ替え方針に沿って、電動化・半導体分野への投入拡大と、規律を持った内燃機関向けの投資を進めていきます。また新製品への投入だけではなく、安全や品質など生産基盤を強化する投資や、生産性向上を目的とする自動化・デジタル技術への投資を継続し、盤石な生産体制を維持・強化していきます。

次に研究開発においては、当社は2024年度には前年度比+900億円となる6,400億円を投入し、業界屈指の開発体制を構築しています。環境・安心・基盤分野の3つを重点開発領域と定め、それぞれ中長期の社会トレンドや技術ニーズを踏まえた技術開発ロードマップを策定しました。これに基づき将来のコア技術を明確化し、バックキャストで足元の研究開発を進めることで、持続的な競争力の源泉となる技術力を磨き上げていきます。加えてAIを活用したDX化による開発効率化や、前項でも述べたお客様への「価値の訴求」を進め、競争力強化と収益性向上を両立します。

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また、事業環境の変化とニーズの多様化が進む中、事業ポートフォリオの変革と持続的な成長を実現していくためには、自前主義に頼らないパートナー連携(M&A)が重要になります。

重点領域の成長と総仕上という2つの側面から構成される当社のポートフォリオ変革を一層加速すべく、当社は対象領域に全社横断のタスクフォースチームを配置し、パートナー戦略の策定と実行を絶えず進めています。

パートナー戦略の意義とリターンを最大限追求した意思決定を行うために、さらには高値掴みを防止していくために、当社は厳格な意思決定プロセスと評価基準を導入しています。その一例として、全社成長戦略との整合性やシナジーの実現性といった出資の妥当性を精査(定性評価)する仕組みを構築しているほか、資本コストに国別・事業別の投資リスクを加算したハードルレート(定量評価)を課しています。重点領域と定めた「電動化」「ADAS」「半導体」「ソフトウェア」「新事業」の各領域における、戦略の策定とパートナー候補の絞り込みを早期かつ反復的に遂行しながら、機を逸することのないパートナー連携を実現していきます。

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2. 低収益資産の圧縮:
適正水準を見極め、縮減を力強く推進し、資産効率を向上

保有資産を効率的に運用するため、資産の性質に応じて適正な水準を見極め、さらなる圧縮を進めます。

(1)手元資金の圧縮

手元資金については、事業運営に必要な資金(平時事業資金)の最小化やグローバルキャッシュマネジメントシステム(以下、GCMS)を通じた地域ごとの資金偏在の解消を進めてきました。2023年度の手元資金水準は、日々の資金管理精度を高めることで、平時事業資金および有事に備えた待機資金を合わせ、2025年度の目標水準である月商比1.0カ月*を概ね達成しています。引き続き、成長局面においても効率的な資金活用を継続していきます。

* GCMSにおける資金は、財務諸表上、貸付会社では現預金、借入会社では借入と扱われることで、両建てでの計上となるが、実質手元資金はGCMSの影響を除いた数値を用いている。

(2)政策保有株式の縮減

政策保有株式は保有の合理性が認められる場合を除き、保有しないことを基本的な方針としており、聖域を設けず着実に縮減を進めています。2023年度は縮減を加速し、トヨタグループ株式の縮減に着手したことで、一部売却を含めると、11銘柄を1,258億円で売却しました。2024年度も縮減ペースを緩めず、ルネサス エレクトロニクス株式会社や株式会社豊田自動織機株式の一部縮減などにより、上半期時点で3,000億円以上を売却しています。

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(3)在庫の適正化

当社の在庫には、(ⅰ)物流混乱などの外的要因による「一時在庫」、(ⅱ)将来の自然災害や様々なリスクに備え確保する「戦略在庫」、および(ⅲ)平時の生産活動のために保有している「通常在庫」の3種類があり、それらを可視化しています。

2023年度は全社一丸となって保有目的ごとでの層別管理の強化やお客様とのきめ細かな発注量調整などの活動を実施した結果、2022年6月には月商2.4カ月相当あった在庫水準を、月商1.9カ月にまで削減することができました。

2024年度はグローバルで連携した体質強化活動の継続に加え、在庫状況のモニタリングツールを活用した管理サイクルの迅速化によりさらなる在庫低減を推進し、月商1.8カ月水準を目指します。

今後も、在庫水準を継続的に縮減すべく全社一丸となって活動を推進することで、盤石な経営基盤の構築を進めます。

3. 資本構成の改善:
調達基盤の拡充と積極的な株主還元により目指す資本構成を実現

安全性と効率性のバランスを確保した上で、資本コストを低減し企業価値を創造すべく、借入の活用、調達多様化および積極的な株主還元を通じ、資本構成を改善していきます。

2025年度の目標である自己資本比率50%以上は、経済危機においても、資金調達可能とされる格付を維持できる水準です。

(1)借入の活用、調達多様化

今後の成長領域や新規事業への投資、M&A・アライアンスなどに備え、銀行借入と国内の社債市場に加え、海外の社債市場を活用した外貨での調達を実施するなど、調達手段を多様化し、安定的な資金調達基盤を維持しています。

加えて、サステナビリティファイナンス(社債・借入)などを継続的に活用し、創業以来実践してきたサステナビリティ経営を軸として、環境・社会課題解決を一層加速させていきます。

今後も現在の高い財務安全性を維持しながら、借入・社債を積極活用することで、資本効率の向上を図ります。

(2)株主還元政策

配当(インカムゲイン)および株価上昇(キャピタルゲイン)により、株主資本コストを上回るTSR*を長期安定的に実現し、向上させることを目指しています。なお、当社のTSRの実績としては、インカムゲイン向上に向けた株主還元、キャピタルゲイン向上に向けた収益体質強化の着実な推進により、財務戦略刷新後の過去5年間において、株主資本コスト8.0%およびTOPIXを大きく上回る収益率を達成しています。

配当は、DOE(株主資本配当率:配当額÷株主資本)3.0%からの継続的向上を方針とし、2023年度は前年度比+0.1ポイントとなる3.3%とすることで、3年連続のDOE向上を達成しました。また、自己株式の取得に関しても、目指す資本構成・理論株価との比較に加え、2023年度は当社株式の売出しに伴う市場での取引需給への影響も念頭に取得規模を検討し、過去最大となる2,000億円としました。今後も、規模を強化しながら、より機動的な自己株式の取得を実行していきます。

当社は、こうした長期安定的な株主還元強化の取り組みを通じて、株主資本コストを上回るTSRを実現するとともに、資本の増加を抑え、企業価値を向上させます。

* TSR:Total Shareholders’ Return キャピタルゲインと配当を合わせた総合投資収益率

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(3)キャッシュ・アロケーション

当社は、ROIC経営を通じて、収益体質を着実に強化してきました。その結果、キャッシュ創出においては、コロナ禍や半導体不足など外部環境が悪化する中でも、2020年度から2022年度までの3年間で累計1.7兆円の営業キャッシュフローを創出しています。2023年度からの3年間では、さらなる事業ポートフォリオの入れ替えと低収益資産の縮減加速を通じ、3.0兆円以上のキャッシュ創出を見込んでいます。

投入面では、設備投資は各事業の成長性と収益性を踏まえ、規律を持ってコントロールしていきます。また、事業ポートフォリオの変革加速に向けて、重点成長領域におけるM&A・アライアンスといった成長投資も検討しています。事業成長や理念実現に不可欠と判断するものは、時には規模の大きいものでも、借入を活用し、機動的に実行することで、事業成長と資本構成の改善を図っていきます。

株主還元については、継続的な配当水準の向上と機動的な自己株式の取得により、長期安定的に強化していきます。特に自己株式に関しては、目指す資本構成・株価に加え、成長投資への投入規模を勘案し、総合的に取得規模を検討していきます。

これらの活動を通じ、ROEを極大化し、持続的な企業価値の向上に邁進します。

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4. 市場との対話:
長年培った非財務資本の発信拡大と価値訴求

投資家やアナリストの皆様への適時・適切な情報発信と、役員参画の対話を進めることで、市場との情報の非対称性を縮小し、株主資本コストの低減によるエクイティスプレッドの拡大を目指します。

2023年度は、オンライン面談などを活用し、延べ約1,750社と対話を行うとともに、役員が会社戦略を説明してメディア・投資家の皆様と意見を交わす「DENSO DIALOG DAY 2023」を開催しました。いただいたご意見は社内公式会議体などへフィードバックし、経営方針の決定や政策保有株式の縮減など各種活動に反映しました。また当社は、サステナビリティ経営を軸に、中長期の事業リスク低減と事業機会拡大のため、非財務資本への投資を強化しています。例えば「研究開発」といった無形資産への投資を、企業成長に直結する将来投資と位置付け、2024年度の研究開発費は前年度比+900億円の6,400億円を見込み、投資活動を強化しています。こうした活動により、2023年度末時点の日本・海外の特許出願件数は約3,600件、特許保有件数は約39,000件と、次世代に向けた提供価値の向上に着実に貢献してきました。このように、非財務資本への投入と財務価値との関係を定量的に示すことは、当社の中長期的な事業成長を正しく評価していただくための重要な情報であるため、統合報告書2024では、その影響を様々な観点でご紹介しています。

また、2023年11月に実施した当社株式の売出しに際しては、資本コストの低減に向けた株価の安定化のために、個人投資家向け販売に注力しました。多様な広告媒体を活用し、当社の強みや事業戦略を広く市場にご理解いただくことで、個人投資家からの高い需要を獲得し、2024年3月末時点で個人株主数は前年度比+9.8万人増の18.2万人まで増やすことができました。

2023年度は、こうした当社のIR活動を高く評価していただき、「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」の自動車・同部品・タイヤ部門において、第2位に選定されました。さらに、統合報告書2023は、「WICIジャパン統合リポート・アウォード2023」において、自動車業界の企業で初となるGold Awardを受賞し、「第3回日経統合報告書アワード」でも環境関連開示の最高評価にあたるグランプリE賞を受賞するなど、複数機関から高く評価されています。また、統合報告書を積極的に社内活用することで、社員の企業価値意識の向上に取り組んでいます。

今後も、市場との対話でいただいたご意見を、経営の質の向上につなげていきます。