事業活動を通じた新たな価値の創造

「天草市の地域資源を活用した次世代教育」

従来から研究を進めてきた微細藻類のノウハウを活かし、天草市の地域産業の振興と、将来の産業を担う次世代を育成する取り組みを進めています。

天草とデンソー

熊本県天草市は、さんさんと降り注ぐ太陽と、綺麗な海に囲まれた、自然豊かな諸島です。デンソーは、2008年より着手している、藻からバイオ燃料を生産する研究を加速させるため、2016年、同市にある廃校の土地・施設に、微細藻類の大規模培養実証施設を建設し、稼動しています。

天草市の風景
デンソーの実証施設

天草の地域産業

天草は、その自然の豊かさから、水産業・農業・畜産業などの第一次産業が盛んで、市の重要な産業として位置付けられています。しかし近年、将来を担う子どもたちが、進学や就職を機に地元を離れることが増え、人口の減少と高齢化が進み、深刻な後継者不足に陥っています。地域産業の価値を高めること、そして島の内外から産業を担う人材を集め、育てることが、今後の天草創生の鍵となります。

ともに目指す姿

2017年、天草における地域産業の振興および人材の育成と、デンソーが研究する微細藻類の新たな可能性を探求することを目的として、熊本県立天草拓心高等学校(以下 天草拓心高校)、天草市、デンソーの三者で協定を締結しました。

天草拓心高校は、島内で唯一の農業科、商業科を持つ高校で、地域産業の発展に重要な存在です。全ての学科において、微細藻類を題材にしたカリキュラムを導入し、専門性に富んだ教員と、デンソーの研究者が協同で指導を行います。

藻における第一次産業への活用の可能性を拡げ、行政の支援・協力も得ながら、天草の活気あるまちづくりに貢献していきます。

具体的な取り組み

水産業 「アワビの養殖用飼料への活用」

近年、地球温暖化により、天草の海では海水温が上昇し、磯焼けが起きており、海藻類を主食とするアワビの養殖に打撃を与えています。デンソーが研究する微細藻類のコッコミクサKJ(以下 KJ藻、旧名シュードコリシスチス)を活用した、アワビ養殖の代替飼料の開発を行っています。

KJ藻を食べたアワビは、海藻よりも成長が優れており、また市販の配合飼料よりも生存率が高い傾向にあることが分かってきました。

今後は、KJ藻を食べたアワビの食味評価を進め、ブランド化を進めていきます。

KJ藻を食べたアワビ
KJ藻を配合したゼリー飼料
研究を行う生徒たち

【VOICE】

天草拓心高校 マリン校舎 海洋科学科 3年 釜田 大地さん

私は、将来は海洋・水産に関する研究者になりたいと考え、現在長崎大学の水産学部進学に向けて学習に頑張っています。藻の研究に興味を持ったのは、昨年度先輩がKJ藻をマダイの種苗生産やアワビの餌として活用する実験の発表を見たのがきっかけです。「世界初の実験」という言葉に衝撃を受け、自分も研究したいと思うようになりました。本年度の実験では、KJ藻を使った新しいアワビの餌の研究をしています。なかなかうまくいかず試行錯誤の連続ですが、大変やりがいを感じています。

 

天草拓心高校 マリン校舎 松下 光夫 先生

昨年度デンソー様から指導を受けながら、「KJ藻をマダイの初期餌料であるシオミズツボワムシの餌として与える実験やアワビの餌として活用する実験」について取り組みを始めました。その結果ある程度の手応えを感じ、本年度は次のステップへと実験を進めています。デンソー様との共同研究では、高校ではできない成分分析をしていただいたことが大きな成果となりました。特に食味等の検査では、成分分析で客観的な評価ができることで、研究もより科学的な内容となりました。

畜産業 「ブタ用飼料への活用」

ブタの飼料へKJ藻を配合することで起きる肉質の変化を研究し、ブランドブタ化を目指しています。初回の試験では、KJ藻を摂取することで、リノレン酸の含量に変化が見られました。今後は数を増やし、試験を重ねていきます。

また、試験の過程で、KJ藻を摂取したブタの糞のにおいが抑えられていることが分かり、そちらの研究も進めていきます。

飼育している子豚
飼料にKJ藻を配合する生徒

農業 「トマト用土壌改良剤への活用」

KJ藻のオイル抽出後の残渣を肥料として利用することで、土壌にどのような付加価値を与えられるかを研究しています。実の収穫量に変化は見られず、また、KJ藻の残渣は堆肥化されていないため、虫が食べてしまうというアクシデントもあり、成長が確認できないケースもありました。今後は、ブタ試験で得られる、KJ藻を摂取したブタの堆肥を用いたトマトの生育試験を進めていきます。

トマトを育てるビニールハウス
研究に用いる堆肥

今後に向けて

各取り組みについて、引き続き天草拓心高校と協働して進めて行くことはもちろん、今後は食品科学科の生徒ともに観光用のお土産として加工食品の開発を進めるなど、さらに活動の幅を拡げていきます。地域産業の新たな価値の創造、そして将来を担う子どもたちの育成を通じて、天草の明るい未来に貢献するとともに、微細藻類の研究の幅を拡げることで、地球環境の維持、および持続可能な社会の発展に貢献することを目指します。

加工食品の開発を行う生徒たち
KJ藻を配合した磯辺揚げ

【VOICE】

天草拓心高校 本渡校舎 食品科学科 1年 谷崎 明日菜さん

食べることに興味があり、食に関する知識や技術を学びたいと思って天草拓心高校食品科学科に進学しました。学校では、授業だけでなく部活動(食物同好会)でも食べ物について様々なことを勉強しています。藻を使った研究は、主に部活動で行っています。初めて“KJ藻”を見たときの印象は、「色が綺麗!」です。お茶みたいなにおいがして、抹茶のように使えるのかなと思いました。でもその緑色を食べ物にどう生かすかが課題です。9月から実際に藻を使った試食等もできると聞いているので楽しみです。私の地元には、先日世界文化遺産に登録された教会群があります。早く新製品を作って地元だけでなく、多くの観光客の方にも食べていただきたいです。天草でできた藻を「美味しい!」って思ってくれる人が増えると嬉しいなと思います。

 

天草拓心高校 本渡校舎 村田 裕樹 先生

株式会社デンソー様との共同研究を始めて1年が経ちました。生徒達には、扱う食材や商品の分類に関係なく、食品作りへの興味を持ってもらいたいと考えています。また、これまでに誰も考えつかなかったようなアイデアを生み出したり、容易に加工できないような食品であっても、試作を重ねてより良い食品を生み出したりする活動の中で、想像力やあきらめずに何度も挑戦する心を養って欲しいと願っています。企業との連携を通して、これまで食品化されていない新しい材料を使わせていただけることに感謝しています。また、企業の方からアドバイスをもらうことで、生徒達が多様な視点を身につけることができているなと感じます。「社会とのつながり」を意識しながら高校生活を送ることで、生徒たちにとって社会ですぐに活躍できる力が身につくことを期待しています。天草の発展に繋がる食品作りと地域を支える人材の育成に今後も邁進していきます。