外部からの評価

第三者意見(2017年度)

IIHOE【人と組織と地球のための国際研究所】
代表者 兼 ソシオ・マネジメント編集発行人
川北秀人 氏

※IIHOE:「地球上のすべての生命にとって、民主的で調和的な発展のために」を目的に1994年に設立されたNPO。主な活動は市民団体・社会事業家のマネジメント支援だが、大手企業のCSR支援も多く手がける。

http://blog.canpan.info/iihoe/(日本語のみ)

当意見は、デンソーグループのウェブサイト上のCSR関連ページの記述内容、および同社の環境、施設、調達、品質・アフターサービス、人事、健康推進、安全衛生、総務(社会貢献)、IR、CSRの各担当者へのヒアリングに基づいて執筆しています。
同社のCSRへの取り組みは、06年度策定の「デンソーグループ企業行動宣言」に基づき、その広範な項目すべてに数値目標を設け、実績や課題を定量的に管理する体制を国内外に展開・確立しており、グローバルなマネジメント・サイクルを適切に進めており、世界的にベンチマークされるべき水準にあると言えます。

高く評価すべき点

  • コーポレート・ガバナンスについて、コーポレートガバナンス・コードを踏まえた体制の整備と実践ならびに情報の開示を進めていること、さらに15年6月制定の「基本方針」に「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」を明記していること。今後は、取締役を含む経営層における人的多様性の向上と、マテリアリティ策定を含む、同社の重要な意思決定に先立って、世界の主要な地域において対話の機会が拡充されることに、引き続き強く期待します。
  • サステナビリティマネジメントについて、「デンソーグループ2030年長期方針」において環境負荷の低減と高効率な移動による持続可能な社会づくり、交通事故のない安全な社会と快適で自由な移動によるすべての人が安心して暮らせる社会づくりを、社会から共感される新しい価値づくりを通じて実現することを宣言し、各部門・担当において多様かつ実務的な社会責任への取り組みが、リスク・マネジメントとステークホルダー満足の2つの観点から網羅的かつ定量的に管理しながら進められていること。この領域における世界最高水準にあると高く評価します。
  • 持続可能な調達について、取引先におけるCSRマネジメントの基盤づくりのために「仕入先様向けCSRガイドライン」をウェブサイトで公開し、国内外のグループ会社の一次仕入先に対しては、同ガイドライン遵守に向けた手引きの配布、自己診断シートによる自己診断とフィードバックを終えて、人権や労働、環境や情報セキュリティなどの重点項目を定めて改善を働きかけるとともに、環境マネジメントシステムを新たな仕入れ先選定基準として加えたこと。特に、小規模事業者における環境マネジメント体制を確認するツールを独自に策定することで、グループ内はもとより、主要な取引先においてもCSRが現場の日常のマネジメントに落とし込まれるよう促していることは、世界的にもベンチマークされるべき水準であることを、重ねて高く評価します。今後は、さらに多様化が進む現場におけるコミュニケーションの改善を促すためのツールの作成や、サプライチェーンへの展開を進めること、また、リスク評価にもとづき、具体的かつ効果的な改善を促すべき対象に対する働きかけを、引き続き強く期待します。
  • 環境経営について、既に世界最高水準にある製品・生産両面の環境効率や資源生産性をさらに追求するために、各部門・担当において詳細な項目に定量目標と推進計画を設けて、全社横断的に展開し検証されていること。その基盤となる「ボトムアップで現場主導の取り組みを促す風土」と「やると決めたらやりきる文化」において同社は世界的に傑出しており、同社の持続可能な成長や社会責任への取り組みの進化の源泉であると言えます。特に、115項目に及ぶ「パーフェクトエネルギー工場(PEF)活動」や、生産部門と施設管理部門が「エネカンバン」により電力・ガスはもとより圧縮エア・空調、蒸気、水や照明まですべての資源の需要情報を予め共有し供給を最小・最適化する「エネJIT」(エネルギーのジャスト・イン・タイム)を通じて、現場が自ら改善のポイントに気付くしくみづくりは、世界中の製造業からベンチマークされるべきベストプラクティスでありながら、進化を積み重ねていることを高く評価します。さらに、16年度に発表された「エコビジョン2025」において、エネルギー1/2、クリーン2倍、グリーン2倍のターゲット3と、それを実現するアクション10を明示して着実に推進していること。人気キャラクターとのコラボレーションにより、子どもにも親しみやすい環境教材を作成したこと。今後は、サービス・ステーションなど世界全体のヴァリューチェーン全体を視野に入れ、海洋生態系や生物多様性への影響が指摘されているプラスティックの使用・リサイクル状況の把握や改善など、ターゲット3がより広く深く達成されることを、引き続き強く期待します。

取り組みの進捗を評価しつつ、さらなる努力を求めたい点

  • 顧客満足の向上について、東南アジア諸国において独自のサービス拠点を相次いで開設し、各国の市場特性に応じた事業の在り方や人材の育成を進めつつあることを評価しつつ、今後は、特に途上国における整備サービスを通じて、自動車の使用段階における燃費改善、フロン回収など環境負荷削減や、安全の改善が進むこと、また、国内では、問い合わせ傾向を分析し、より効果的な情報開示や顧客支援が進むことを期待します。
  • 社員の健康職場の安全づくりについて、課長級を健康リーダーに任命し、職場単位の年間計画の策定と実践を求めるとともに、個々人の生活習慣の実践状況を健康診断データから点数化した「生活習慣スコア」を全社目標に加えたこと。個々人の生活習慣を「行動」と「健診結果データ」から定量的に把握する取り組みを特に高く評価します。外来工事業者による安全衛生への取り組みについても協議会を組織して取り組みを促したこと、さらに、仕入れ先への火災予防の支援に着手したことを評価しつつ、今後は、取引先においても「人と施設・設備の高齢化」が進むことから、人材育成を促すとともに、安全や健康への取り組みの基盤となる管理体制の支援ツールの開発・普及に期待します。
  • 国際・地域社会への貢献活動について、役職員の半数近くが参加する「はあとふるポイント」、アジア車いす交流センター(WAFCA)などによる障碍者支援ならびに障碍者スポーツ支援、さらに交通安全啓発をはじめとする多様かつ先駆的な取り組みを評価しつつ、今後は、世界のグループ従業員全員が「交通安全指導員」としてコミュニティで活躍し、地域交通安全マップや人材育成カリキュラムの作成など自社のサービスや強みを最大限に発揮し、交通事故ゼロに向けた社会の基盤づくりを進めるとともに、本業を生かした大規模被災地の復興支援などを進めることを引き続き強く期待します。

グローバル企業として、取り組みの進展が期待される点

  • 長期方針を実現する価値創造プロセスについて、目指す姿として掲げられた「地球にやさしく、すべての人が安心と幸せを感じられるモビリティ社会」を、社会と自社の持続可能な成長の成果として実現するために、近未来の国内外の人口構成や社会経済状況を見通して、インフラストラクチャー(社会基盤)や自動車がどうあるべきか、特に、日本をはじめ各国で急増する高齢者の近距離・低速移動(アクセシビリティの保障)と、化石燃料を使わないモビリティの実現に向けて、積極的に提案する姿勢を、引き続き求めます。
  • 人権への取り組みについて、調達部門による調達先の体制や実践の把握ならびに改善の働きかけが進められていることを評価しつつ、グループ内、およびヴァリューチェーンの下流プロセス(特にリサイクル工程)における取り組みの改善を促すために、グループ人権推進責任者を任命するとともに、ヴァリューチェーン全体での人権マネジメント体制が整備されることを期待します。
  • 社員尊重人的多様性について、多様なマネジメント人材を育てる基盤としてグローバル共通の人事制度が始動し、海外グループ会社の拠点長ポストを担う現地社員数が3割前後で推移し、知的障碍者を中心とした特例子会社「デンソー・ブラッサム」を開業するなど雇用率も2%を上回り、従業員の健康増進にも積極的に取り組んでいることを評価しつつ、育児・介護・看護のための休暇・短時間勤務制度の利用者は、まだ(株)デンソーの従業員の1.6%強にすぎず、男女の勤続年数差も残っていることから、今後も引き続き、子育ても介護も看護も、家族を支えながら仕事し続ける環境や制度、アプリなどの整備を進め、会議など意思決定や業務の在り方を定量的に見直して生産性向上を進めることを期待します。また、世界各地で働くより多くの従業員が、自らの母語でデンソーの理念・価値観や実践を理解できるよう、上級管理職候補者層の交流や通達・広報物の多言語化がさらに進むことに引き続き強く期待します。

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編集後記

川北様には、第三者意見のご執筆にあたり、各セクションの担当者との対話を実施いただきましたことを感謝申し上げます。各部門との対話の中では、経営や事業活動、環境、社会貢献など、幅広い分野について様々なご意見をいただきました。昨今、社会が変化するスピードも一層加速し、デンソーへの期待もより高まっていると感じております。

事業活動においては、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて積極的に貢献をしていくこと、社会貢献活動においては、社員にとどまらず、社会の誰もが参画できる活動プラットフォームを創出し、会社と地域をつなげることを通じて、デンソーが社会課題を解決するリーダーとなっていってほしいとのご意見を頂きました。

また各部門との対話の中では、「人間だけではなく設備の高齢化にも対応する」、「サプライチェーンやグループ会社をマネジメントすることから、統率役の育成へ」、「環境負荷の低減だけではなく、異常気象への適応も考える」と言った、現状の活動よりも一歩先んじた視点からのアドバイスやご意見をいただきました。今後も、社会へのアンテナをより一層高く持ち、さらに活動をレベルアップさせていきたいと考えております。

デンソーは2017年10月、「デンソーグループ長期方針2030」を発表しました。自動車業界を取り巻く環境の変化は著しく、激しさを増しています。サステナビリティの分野でも、「SDGs」や「ESG投資」といった新たなテーマが台頭し、社会的課題と会社経営を統合させることが必要になりました。今後も、社会とデンソーの持続的な成長に向けて、活動のさらなるレベルアップを目指していきます。

(株)デンソー 広報・渉外部