ダイアログ 2012

●開催日 2013年1月14日

●場 所 ㈱デンソー本社(愛知県刈谷市)

●ダイアログのテーマ
テーマ①「2020年長期方針で描くデンソーのありたい姿について」
テーマ②「社員一人ひとりのCSR実践に向けた課題と方向性について」 

●出席者
堀 雅文 氏(プラチナ構想ネットワーク事務局長、株式会社 三菱総合研究所 参与)
アキレス美知子 氏(株式会社 資生堂 執行役員)
森川高行 氏(名古屋大学 環境学研究科 都市環境学専攻 教授)

<ファシリテータ>
川北 秀人 様(IIHOE[人と組織と地球のための国際研究所]代表者)

<デンソーからの参加者>
CSR担当役員(専務取締役、常務役員)、安全環境推進部、人事部、総務部、情報安全事業グループ、走行安全事業部、技術企画部、調達企画部、法務部、経営企画部

主な意見やコメント等

テーマ①「2020年長期方針 で描くデンソーのありたい姿について」

<●有識者、◆デンソー>

●「クルマを通してより良い社会をつくりたい」という全体方針の中で、正の価値(利便・快適)を最大化し、負の価値(環境・事故・渋滞など)を最小化するのはもちろん、さらにプラスαの価値創出を。それは「クルマを情報化して新しいインフラにする」こと。例えば、運転者がスマートホンを介して、交通流・道路・事故・災害状況など気づきの情報をつぶやくと位置情報とともにデータセンターに蓄積される。すると改善点に反映できる情報インフラが構築できる。すでに“プローブカー【注】”として実証実験を行っているが、これを進展させることで、世界の自動車メーカーに部品を供給するデンソーとして“人や社会とつながるクルマ“という新たな価値を打ち出せる。

【注】プローブカー:自動車の動きをセンサーの感知から発信される情報により、交通観測を目的とした交通流通や車両挙動、気候や路面状況までをモニタリングするシステム、またはその対象のクルマのこと。

●デンソーは『安心・安全』を大きなテーマに掲げているが、高齢化社会の中で「80歳まで運転する場合、どういうクルマが必要なのか」を追求してほしい。運転者が何もしなくてもクルマが安全に守ってくれる自動化がいいのか、あるいは危険な状況になる直前まで、運転者にはアクティブに脳を働かせてもらい、いざという時は二重・三重にセーフティネットが働く運転支援がいいのか。また、クルマ自体に通信機能があって、不測の事態に遭遇しても家族や救急機関と、位置情報も含めて連絡がとれれば安心だ。高齢者がクルマと共存できる社会を実現するために、デンソーができることはたくさんある。

◆これまで現状を分析して将来の行動計画を立てる「フォアキャスト」の考え方で事業構想を描いてきたが、今回の長期方針では、未来はこうなりたいというビジョンありきで計画を立てる「バックキャスト」の考え方を導入した。両者にはギャップがあるが、それを埋めるのが、技術や社会の仕組みも含めて新たな価値を創造する「イノベーション」だ。ご指摘の“人や社会とつながるクルマ”の実現に向けてチャレンジを加速したい。

◆昔、クルマは“走る凶器”とか“公害の元凶”と言われていた時代もあったが、今はエネルギーの溜まった箱であり、情報がいっぱい溜まった箱。今のクルマには多くのセンサーが付いているが、自車の制御のためだけにしか使われていない。このセンサーをうまく使えば、広く社会に役立つようになる。

●エネルギーでは、「モビリティにおける熱エネルギーと移動の最適化」だけでなく、新事業の住宅分野でもクルマで培った制御技術などをもっと発揮して「熱マネジメントの最適化」あるいは「直流・交流の変換なしの電力供給システム」などを推進することで、社会の環境負荷低減に貢献できる。

●必要な時に必要なだけエネルギーを供給・管理する「エネルギー・ジャスト・イン・タイム」は素晴らしいシステムだ。節電事業としてエネルギー削減に苦労している事業所に普及させれば、デンソーの強みを活かした立派な社会貢献になる。

◆デンソーは、技術では高いアドバンテージがあるのに、それを世の中に普及させるための仲間づくりやエンゲージメントが苦手で、そこが大きな課題だ。長期方針のあるべき姿を実現するには、仲間を増やしていくための新たな視点や知恵が不可欠だと思う。

●それは日本全体に当てはまることで、「匠の技」は素晴らしいが、それを広く普及させる仕組みづくりに長けていないために欧米などの後塵を拝している。今後は世界標準の規格となる仕組みや市場そのものを創出するような役割をデンソーに期待したい。

テーマ②「社員一人ひとりのCSR実践に向けた課題と方向性について」

<●有識者、◆デンソー>

●社員一人ひとりにCSRの意識が浸透し、自主的に社会的課題を発見して行動するのは容易ではなく、多くの企業が試行錯誤している。一つのヒントとして、その企業ならではのシンボリックな活動に取り組むという考え方がある。例えば、資生堂は白斑やアザのある人に、本業で培った化粧や美容の技術を活かして無料でメーキャップのアドバイスを行う活動を展開し、そこで得られた知見が新たな製品開発にも結びついている。また、役員や一般社員が病院、施設、被災地などを訪問してハンドマッサージや化粧を施し多くの人々から「笑顔を取り戻せた」と喜ばれている。こうした活動が社員の誇りやモチベーションにつながり、CSRが全社に浸透する原動力となっている。ここで重視しているのは、上からの押し付けではなく、社員が自ら考え行動することだ。

◆デンソーでは、生産現場での独創的な省エネ活動が盛んで、自主的に部門同士が連携して省エネ(CO2削減)・省コストに大きな成果を上げている。ただ、当事者たちは「地球環境の保全に貢献している」という自覚や誇りに乏しい。社員一人ひとりが「自分が存在することが、世の中にとってこんなに価値がある」と実感できるよう見える化を進めたいと考えている。

●成熟社会では、誰かに「認められる喜び」が行動への強いモチベーションになる。そのため、CSRが会社全体に浸透するには、社員が同僚や会社から認められたと体感できる仕組み、会社が社会から認められていることを認識できる取り組みが重要だ。もう一つ、寄付やボランティアのような奉仕によって自らも喜びを得る「与える喜び」がある。この二つの喜びを得る、つまり“CSRを見える化する”ことで、組織の中でCSRがうまく回っていくのではないか。

◆フィリピンの現地法人では、毎朝、社長がグループリーダーたちに前日の品質不良を発表させる。誰もそんな報告はしたくないが、「昨日はこんな不良品を作ってしまいました」と言うと、社長は「ありがとう!よく言ってくれた」と握手する。それが続くうちに工程内不良が下がっていった。褒めてもらうのは、負の力をゼロに、マイナスをプラスに変える力がある。これは国を問わず共通していると思う。

◆CSRは、ともするとコンプライアンスに代表されるネガティブな印象(守り)が強く、社員が明るく元気に取り組めるポジティブなものに変えていく必要があり、その意味でも「褒める場づくり」は重要だ。

●本業での専門性を活かした取り組みで、資生堂さんの場合は分かりやすい。 デンソーなら、たとえば、デンソーの社員がクルマで走るといろいろな情報が集まってくる、あるいは何かあった時に資格(たとえば救急対応など)を持った社員が社会的に役に立つことをする。走る安全・安心のネットワークがデンソーの社員によって広がっていく。デンソー社員のクルマから送られてきた情報で、急ブレーキの箇所やCO2の排出量が多い箇所などが分かる。それが広がれば本業にも役立つかもしれない。それがデンソーらしさで、社員一人ひとりが小さな役割だけれど、それがネットワークとして広がる、将来的には12万人の社員が世界に広げていく。

●ダイバーシティについては、女性という切り口だけでなく多様な背景を持った人たちが活躍できる制度や風土がグローバル企業にとって不可欠なものであり、すべての企業活動が日本社会だけでなく海外からもどのように見られているかを意識する必要がある。

◆デンソーでは女性が働き続けやすいよう支援制度の充実を図り、一定の成果をあげてきた。さらに一層の活躍に結びつけるため、女性自身が長期的な視点で、仕事とプライベートを両立させながらも意欲を持ってキャリアアップに臨む意識付けと、そのための障害の緩和の取り組みを進めている。

長期方針には「枠からはみ出して冒険しよう」「外から内を見よう」という変革を促すメッセージが込められている。それを実践するには、社員一人ひとりが世の中から何を求められているかを考え続けることが鍵になる。やらされ感ではなく、ワクワクしながらチャレンジすることによって、大きく変貌する2020年の社会でデンソーが存在感を発揮できるのではないか。

事務局より

今回のダイアログでは、今年度策定した「長期方針」を題材に、『2020年に向けて「環境」「安心・安全」についてどんな視点で取り組むべきか?』『社員一人ひとりがより「社会」を意識するには?』といったテーマで、有識者と役員・社員で意見交換を行いました。有識者の皆様からは、製品を通した貢献から社会システムへの働きかけといった視点からの貢献に至るまで、広い視野からデンソーへの期待やご意見をいただきました。
デンソーは、従来、ステークホルダー毎に自らの責任を明らかにし、社会から信頼・共感される企業行動の実践に努めてきましたが、今振り返ってみると、まだまだ反省すべき点があります。今回の長期方針で「人々から共感や信頼をいただけるグローバル企業に進化したい」と宣言しました。この実現に向け、ダイアログでの意見を2020年に向けた一歩を踏む出すためのヒントとし、引き続き活動のレベルアップを図っていきます。

経営企画部 CSR推進室