ダイアログ 2008 inハンガリー

●日 時 2008年7月3日

●場 所 デンソーハンガリー(DMHU)

●出席者
ピーター・ハーディ(Peter Hardi)氏
(セントラル・ヨーロピアン大学 ビジネススクール教授 ビジネス・社会センター所長)
ジャン・フィリップ・デンリュイター(Jean-Philippe Denruyter)氏
(WWF(世界自然保護基金)グローバル・バイオエネルギー・コーディネーター)

<ファシリテータ>
小林一紀氏(ジャパン・フォー・サスティナビリティ マネージャー)

<デンソー参加者>
・デンソーヨーロッパ(DNEU)  西村繁広社長、加藤久典副社長
・DMHU 大岡幸正社長、向井康副社長、アンタル・ヴィズィ(Antal VIZY)安全衛生環境マネージャー、イシュトヴァーン・ラトス(Istvan LATOS)人事シニアマネージャー

●テーマ
欧州における社会の期待に応える真のグローバル企業をめざして
環境保全

主な意見やコメントなど

対症療法的に環境規制に対応するのではなく率先して社会のニーズに取り組む

小林:厳しい環境規制で知られる欧州の最近の動向は?

デンリュイター:企業に一定の温室効果ガスの排出枠を設定している規制が今後さらに厳しくなり、2012年までに乗用車の燃費を130g-CO2/1kmに抑える規制の導入が検討されています。また、EUの再生可能エネルギー促進指令案では、2020年までに消費エネルギーの20%を再生可能エネルギーに、輸送燃料の10%を再生可能燃料にする目標を設定しています。これらの目標は「輸送の電気化」を促進する可能性があります。私たちWWFは、温暖化防止には新燃費規制でも十分ではなく、先進国においては「輸送の電気化」を中期的な方向性とすべきと考えています。

ハーディ:ほかにもバイオ燃料を一定量ガソリンに混ぜるよう目標設定された「EUバイオ燃料指令」があります。ハンガリーでは現在4.4%ですが、今後は増加が予想され、企業のバイオディーゼル開発への投資が増大すると思います。EU委員会ではバイオ燃料の原料としてヒマワリ油を、ハンガリーの専門家は菜種油を推薦しています。

デンリュイター:最近の自動車産業の特徴的な動きの一つは、電池技術を持った異業種の企業が電気自動車に参入してきたことです。自動車メーカーも化石燃料からバイオ燃料へ、さらに電気化・水素利用へとシナリオを描いていますが、デンソーはこうした変化にどのようにポジジョンを確保、あるいは貢献していくのですか?

西村:デンソーにとって、環境は技術開発の最優先課題です。毎年、売上の8%以上を研究開発に投入していますが、重要なことは法律ができるから対応するのではなく、社会のニーズに先行して製品を開発する姿勢です。デンソーは、日本だけでなく欧州・北米の多くの先進企業と取引があります。その中で、家庭で充電できるプラグインハイブリッド車や電気自動車のニーズも含め、今まで以上にスピード感を持って研究開発を進めていく必要があります。

加藤:デンソーは部品単位の技術開発に加え、ITS技術を使って交通渋滞を予測・回避する技術開発により、社会のインフラ全体でCO2排出削減に貢献する取り組みにもチャレンジしています

省エネの次のステップとしてグリーンエネルギーの活用を期待

デンリュイター:DMHUは工場の省エネ活動で成果を上げていて感心したのですが、次のステップは「グリーンエネルギー(再生可能エネルギー)」の購入です。デンソーは電気の利用者としてやれることがあるはずです。

ヴィズィ:DMHUでは、最近、太陽光発電システムを導入して効果も確認していますが、風力発電は法規制が厳しく認可が得られません。そのあたりが悩まし いところです。

ハーディ:ハンガリーでは地熱発電の研究が進んでいて、高温の蒸気を冷暖房に利用するなど省エネ効果が期待できます。デンソーでも導入を検討されてはいかがでしょう。

デンリュイター:再生可能なエネルギーによる発電の証書化を購入することで、発電所から遠く離れた場所であっても再生可能エネルギーによる電力を利用したとみなす「グリーン電力証書システム」という仕組みがあります。これを活用することで欧州のグリーンエネルギー拡大に貢献できます。ただこれらの証書については、信頼性をよく吟味することが大切です。

大岡:工場で使う電気にグリーンエネルギーを使うというのは今までにない新鮮な視点でした。コストとの兼ね合いもありますが、今後の検討課題としていきたいです。

経営層がCSRへの理解を深め、
環境と社会の課題をリンクさせながら活動の厚みを増していくべき

小林:CSRを推進する上で最も重要なことは?

ハーディ:CSRをグローバルな課題として捉えると、日々、重要度が増しています。大切なのはCSRプログラムの有無ではなく、それが企業戦略の重要な部分に組み込まれているか否かです。それを決定付けるのは、トップ・役員・管理職がどれだけCSRを理解しているかにかかってきます。デンソーは“見える化”が得意ですから、経営層のCSRパフォーマンスを測るインデックス(指標)を設けたらどうでしょう。

デンリュイター:いま多くの企業がバイオ燃料の原料栽培を目的に農業に進出しています。そこで重要なのは、その手法が持続可能かどうかです。例えばライフサイクルで温室効果ガスを増加させないこと。そして森林保全や水利用への配慮、さらに労働条件にも目を光らせる必要があります。このように環境面 と社会面がリンクした課題が増加し、CSRの重要テーマになってくると思います。

ハーディ:社員に係わる分野では、多国籍企業にとって現地と本国の文化的な違いから生じるフラストレーションは大きな問題です。デンソーは社員の精神衛生をケアするプログラムを持っていますが、これを欧州でも導入したらどうでしょう?社員の帰属意識を養い、離職率の抑制にも有効だと思います。

向井:確かに、文化・風土・慣習の違いから日常の中でフラストレーションを感じることが互いにあると思います。そこで重要なのは中間層のマネジメントをいかにローカルの人たちが担ってもらえるかです。デンソーのフィロソフィーを理解しつつ、トップと現場をつなぐ架け橋として中間層が担う役割は非常に重要です。当たり前のことですが、相手の意見を聞く、相手に伝えるという双方向のコミュニケーションを続けることで、多くの問題は解決できると信じています。

小林:人材育成については、どうですか?

デンリュイター:DMHUの工場見学では、訓練センターや教育プログラムの充実ぶりに大きな感銘を受けました。今後の課題としては、社員が会社の外で起きていることへの理解、自動車産業の近未来についての理解と関心を高めていくことだと思います。そのためには、環境や社会の課題を学べる訓練プログラムを整備し、社員の社会的な活動に賞を与えたり、NGOに派遣するプログラムなども必要でしょう。こうしたプログラムを通じて、社員がCSRへの意識を高めることで企業のCSRにも厚みが増していくと思います。

事務局より

新たな気づきやヒントを切り口にCSR活動を深化させます

気候変動に関わる自動車の電気化、グリーン電力の購入による再生可能エネルギー普及への貢献など、有識者との対話を通して多くの気づきが得られました。デンソーの活動で評価いただいた点は、今後のモチベーションや自信につながりました。反面、一生懸命やっていると思っていたことが、まだ視野が狭いこと、取り組むべき課題がたくさんあることを再認識しました。いただいた数々のヒントを切り口に、欧州でリーダーシップがとれるチーム=会社にしていきたいと思います。

西村繁広(デンソーヨーロッパ社長)