DRIVEN BASE
intellectual property

知的財産

基本的な考え方

デンソーは、カーボンニュートラルや交通事故ゼロなど、社会が抱える様々な課題の解決に向けて、新たな価値を生み出し続けています。これらの成果を特許、ソフトウェアをはじめとする知的財産として蓄積しつつ、これを社会全体の資産として捉え活用することで、持続的な社会の発展と企業成長の双方に貢献することができると考えています。
このためデンソーでは、個別の製品目線の知財戦略だけではなく、知的財産を将来ビジョン実現のための資産ポートフォリオ(PF)としてマネジメントする<知財PFマネジメント>にチャレンジしており、この活動を通じて「知財PFの価値向上と知財投資」のサイクルをより強化し、会社経営に資する「知財経営」への昇華を図っています。

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知的財産戦略

デンソーは、2030年長期ビジョンの実現に向けて、事業戦略と一体化した知的財産戦略を推進しています。特に、成長・新領域での研究開発を重点的に行うことで、同領域における知的財産を着実に積み上げており、これを将来事業の礎としていきます。
また、積み上げだけではなく、長期ビジョンにおける価値創造のストーリーやその中で活躍すべきコア技術を見定めつつ、研究開発大綱と照らし合わせて、あるべき知財PF像をバックキャストでデザインし、その実現に向けた知財PFの組み替えを図っています。

この知財PFデザインにおいては、全社の知財PFを①全社レベル、②事業レベル、③開発テーマレベルの3つの視点から俯瞰し、各レベルのあるべき姿に基づいた知財PFの組み替えを行います。PFデザインに用いる知財指標として、先行指標(将来の知財PF傾向を示す指標。主にMaaSや農業分野等の新領域で重視)、現在指標(現在の知財PFの強さを示す指標。主にBEVやADAS等の成長領域で重視)、遅行指標(構築した知財PFの実績を示す指標。主にエンジン関連製品等の総仕上げ領域で重視)を導入し、製品のライフサイクルに応じた知財競争力強化や将来ビジョン実現に資する知財投資の姿を追求しています。

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開発テーマレベルでは、事業化におけるテーマ探索段階から事業化開発段階の各フェーズにおいて、他社特許も含めた膨大な知財情報の分析や仮説構築・検証をタイムリーに実施することで、開発活動のインプット側からも製品開発(社会課題解決に資するとともに競争力の源泉となるコア技術の明確化等)に貢献し、開発成果を確実に知財権として会社資産とし、それを適時に活用(差別化による価格競争力維持、知財を介在させた戦略アライアンスによるビジネスエコシステム構築、オープンクローズ戦略におけるオープン領域でのライセンス収入獲得など)することにより企業価値向上と持続的成長へと繋げていきます。
特に、モビリティとしての自動車の付加価値が大きく変化する中、成長・新領域を重視した特許戦略だけでなく、SDV(Software Defined Vehicle)化やオープンイノベーションの進展に伴う特許のみに捉われない知的資産創出活動を推進し、これにより取得した資産を戦略的に活用することで、デンソーの事業拡大チャレンジを支えています。

推進体制

知的財産ガバナンス体制

デンソーでは、事業ごとの知財戦略を審議する場に加えて、全社レベルの知財経営視点で知財投資戦略を企画・実行すべく、様々な会議体で審議を行っています。これらの審議を通じて、経営と知財活動が一体となってデンソーの企業価値を発揮・向上していくことをめざしています。

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グローバル知的財産体制の強化

海外での事業展開を支えるべく、北米、欧州、中国の開発・設計拠点内に知的財産組織を設け、現地発明に関わる知的財産権の取得・活用や、他社知的財産権の調査を強化しています。北米・欧州拠点では現地の特許弁護士を採用して特許係争の支援を、中国拠点では模倣品対策や商標侵害対応によるブランド保護強化を行っています。また、知財マネジメント上のグループ全体および各地域の課題解決とガバナンス強化を目的として「グローバル知財会議」を定期的に開催しています。

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具体的な取り組み

自動車の電動化に向けた知的財産戦略の推進

知財活動(開発・設計フェーズ)の具体的な取り組み例として、エレクトリフィケーションシステム事業グループの事例をご紹介します。エレクトリフィケーションシステム事業グループでは、V字プロセスに沿った技術開発体制と、これを実行する現場主導の知財推進体制により、開発と一体となる知財活動を推進し、環境変化の中で機動的な動きを実現しています。同事業グループの開発プロセスでは、戦略企画や顧客ニーズをもとに、要求分析、システム設計、コンポーネント設計のレイヤーに分けて製品が設計され、最終的には各設計レイヤーに対応した開発品の検証を経て、MG、インバーター、電池ECUなどの製品が上市されます。
このプロセスにおいて、戦略企画時は俯瞰的な特許情報分析による方針決定が行われ、また要求分析の際には、製品レベルの特許情報を活用した方針決定や電動化製品ラインナップにおけるブランディング戦略が討議されます。
システム設計、コンポーネント設計の際にも各設計レイヤーに対応した特許情報分析が行われ、これらの開発プロセスのそれぞれのレイヤーにおいて、定められた活動方針にもとづく権利形成、クリアランス調査の知財活動が組み込まれます。

電動化事業プロセスに沿った知財活動

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また、電動化製品ブランド「ELEXCORE(エレックスコア)」は「電動化の差別化技術により脱炭素社会および顧客へ貢献する」という決意を統一したデザインに込め、高品質・高性能・小型化を特徴として様々な電動モビリティのコア(核)となることを目指しています。

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他社知的財産権の尊重

デンソーは、他社知的財産権に係る問題は、企業価値に関わるものとして重要品質問題と同等に考えています。
開発段階より他社知的財産権を調査し、自社製品・サービスが第三者の正当な知的財産権を侵害することがないよう、明確なルールを定め、その順守を徹底しています。

第三者による権利侵害行為の排除

デンソーは、保有する知財権に対する第三者による侵害行為に関しては、適切かつ正当な権利行使を行っています。
この活動は、特許についてのみではなく、たとえば模倣品対策についても積極的に行っています。商標コピー品等の模倣品は品質に問題があるものが多く、デンソー製と信じてご購入いただいたお客様が不利益を被る可能性があります。2005年からは模倣品対策として、行政機関・税関と協力した摘発活動を継続しており、北米・欧州・中国の海外拠点とも連携しています。

今後の取り組み

モビリティとしての自動車の付加価値が次々に変化していく中、デンソーは、貢献領域を従来の「モビリティ」と「モノづくり」に加え、新たに「ソサエティ」まで広げ、環境や安心・安全の面から技術開発を加速させてきました。この成果を知的財産として蓄積・活用することにより、社会課題の解決に貢献し、また企業価値のさらなる向上に繋げていきます。