自分と相手の“強み・弱みに向き合う”ことで広がるチームの可能性

相手に依存してしまった過去を乗り越え、自分らしく働く

入社して13年間、技術開発に携わり続けていた出口。 しかしキャリアの途中で、「周囲からの期待に応えつづけることでのみ自分は認めてもらえ、ここに居られる。繋がりをもってもらえる。」と思い込むようになってしまいました。そんな出口が壁を乗り越えるまでの道のりを語ります。

  • 乗用パワトレイン事業部所属出口 将貴

    2009年入社後、エンジン機器技術部に配属。海外向け製品立ち上げや、スパークプラグ設計、システム開発等、国内外様々なプロジェクトに携わったのち、現部署に異動。"人が好き"という個性を生かし、成人発達理論やU理論など心理学の分野にも興味を持ち自主的に学び活動している。

この記事の目次

    仲間と仕事をするのは面白い。でも、いつしか自分を見失ってしまっていた

    プロジェクトは山登りみたいなものだと思っています。
    どの山を登ろうとするか、山頂へのルートや登り方をどうするかは人それぞれであるように、プロジェクトにおいてもチームメンバーそれぞれ考えることは違います。
    「このやり方がいいのでは」と意見が割れたり、「忙しいからそこまではできない」と日程感が合わなかったり、そういった価値観の違いに悩むことがあると思います。

    そうなった時に、メンバー同士で話がしやすく信頼し合える関係ができていると、困難を乗り越えられたり、ゴールまでうまく辿りつけたりします。
    考え方は違っていても、「ゴールを目指したい」、「プロジェクトを成功させたい」という気持ちはみんな同じ。
    自分のすべてをきちんと出せる関係を築けることが大事だと思うんです。

    そうやって自分一人では到底登れない山も、仲間と一緒に話し合い工夫しながら登頂するのは本当におもしろいですね。
    ひとりで成功をかみしめるのも悪くないのですが、みんなで一緒に登頂し「やったね!!」と乾杯するのが非常に楽しく、達成感を感じます。

    しかし、何をやるにしても「自分に向き合う」ことが大切だと感じる経験がありました。
    期待された仕事をしているのに、やりがいを感じられなかった。
    期待に応えることを何より優先して行動していて、自分の思いをないがしろにしてしまっていた。
    他人の判断に依存した働き方を続けるうち、いつしか自分の軸を見失ってしまったんです。

    他者に依存し、疲弊して気づいた、自分の想いに気付く大切さ

    当時、僕のことをよく見てくれていた上司の期待に応えること、認めてもらうことを意識しすぎて、上司の意見に合わせ、意思を持たずに行動してしまった時期がありました。

    その時の僕は、相手にどう見られるかだけを気にして働いていたといっても過言ではありませんでした。
    仕事で上手くいかない理由を自分の置かれた状況のせいにし、自分の力では身動きできない辛さと無力感を感じ、自分の軸を見失っていました。
    そういう状態が続き、いつしか周りを信じられなくなり、気付けば独りぼっちの感覚になっていました。

    周りにも同じように悩んでいる人がいて、自分たちは一体何をやっているんだろうと思ったんです。

    そんな経験から、自分の中で納得感をもてるように仕事のやり方を工夫しようと考えました。
    相手の意見を鵜呑みにするのではなく、きちんと自分の中で消化して「自分はこうしよう」という思いを持ち、それを原動力にしていこう。
    そのために自分の心に耳を傾けて、本当の想いに気づけるようになろう、と。
    (そういった自分に向き合うためのトレーニングとして僕は "マインドフルネス"を学びました)

    まずは時々立ち止まり、「今の自分は他の人の意見に依存しているかも」とか、「今ちゃんと自分の思いを言えたな」といった想いをしっかりと認識するところから始めました。
    少しずつ慣れてくると、自分は今どんな状態なのか、捉われやすい先入観は何か、そういったことに気づけるようになってきました。
    誰かから何か言われたときにも、反射的に委縮したり、ムキになって反論したりせずに、「今自分はムカッときているな、こういうところが気になったな」と、自分の感情を客観的にとらえるようになってきたのです。

    また、自分に向き合うことで心にゆとりが生まれた結果、相手のことをよく聴き・よく観ることができるようになりました。相手の発言の真意をしっかりと受け取ったうえで、その発言を自分の中で消化できるよういつも心掛けています。

    こうして自分の思いと行動を一つひとつ一致させながら、自分の中に小さな納得感を積み重ねることで、相手に依存することなく進めていくことができるようになったんです。

    自分だけでなく相手にも向き合うことで、可能性が広がる

    自分に向き合うことで、自分の特性(強み・弱み)が見えてくるのですが、チームとして仕事をするためには、勇気を出して自分を相手に開くことが重要だと考えています。
    弱みも含めて自分をさらけ出すことで、他の人の持つ強みとつながることができます。変な責任感やプライドから、出来ないことを出来るように見せるといった "やせ我慢" をしないようにしています。

    学生時代、僕は合唱サークルに所属していたんですが、合唱で奏でられるハーモニーをひとりで届けることはできません。
    メンバーそれぞれが、自分の声の持ち味によってそれぞれの役割を担います。
    メインメロディでコアの声になる人、コア同士の声がバラバラにならないよう間に溶け込み一体化する人、ベースとなる旋律を担いメロディをしっかり支える人、和音を重ねて音楽に奥行きを与える人。
    それぞれが自分の役割を果たすことで初めてひとつの音楽を届けることができます。

    お互いの弱みを補い合って初めて可能性が広がる、それは仕事でのチームワークと同じだと思っています。

    なので自分に向き合うだけでなく、相手の強みや弱みも含めて、その人と向き合いたいと思っています。
    相談してくれたら仕事の手を止め、その人に身体を向け、その人の目を見て、言葉に表れていない背景まで汲み取ろうとする。
    忙しくても、耳だけでなく全身で傾聴し、相手の立場に立って相手が見ている世界を感じとるようにしています。

    僕自身、短気で自分勝手なところがあったり、失敗を恐れて現実から目をそむけたくなる自分を知っています。
    また、スキルや技術についてもまだまだ学ぶことは沢山あるので、自分が知らない専門知識を持つ人や違う見方をくれる人に、積極的にサポートを求めるようにしています。
    逆に、強みは共感力が高いところなので、悩んでいる後輩がいれば「どうした?」と声をかけ、その人が必要としていることを、相手の立場に立ってサポートできるように努めています。

    自分を大切にするだけでなく、相手も尊重することで、一人ではできないことができると思っています。

    土台は自分の想い。みんなが自分を表現しながら活躍できる未来にしたい

    一緒にプロジェクトを推進し、苦楽をともにした仲間を今でも大切にしています。
    中にはデンソーを離れた人もいますが、今も友人として連絡を取り合っています。

    仕事をしていると、成果や能力にフォーカスされるものの、その土台となる自分らしさ、自分の想い、メンタルについてはあまり触れられないことがあります。
    しかし、成果や能力を手に入れるためにも自分自身と向き合うことが大切で、そういった自分の在り方やメンタル面を学べる場所をまずは仲間、社員、身近なところから作っていきたい。
    自らの経験から培った "自分の想いに対する気づきの場" を提供し、仲間に貢献したいなと考えています。

    みんなが自分の行動に納得感を持っている。
    いきいきと自分を表現しながら活躍している。
    そんな未来にしていきたいです。

    【あとがき】
    期待に応えようと、相手の意見に合わせすぎてしまい、自分を見失った経験をした出口。
    しかし、期待に応えようとすること自体がよくなかったと考えているわけではなく、今の自分の状態をしっかりと向き合い、自分の行動に 一つひとつ納得しながら歩みを進めることが大事だと、彼は話します。
    社会的な役割を果たすことにしばられがちな私たちに、自分にも相手にもまっすぐに向き合うことのすがすがしさを感じさせてくれるのです。

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