第4章(2022~2024年)インド独自のスキルと人材を生かした未来のための第2の礎の創造

2. 自立地域の基礎を構築 ― 「次」の創出(アジア地域から分離)

(1)インドが自立地域になる

新たにCEOを迎えてインド地域の真価を発揮
インドの社会政治および経済情勢

2021年以来、世界で最も急速な経済成長を遂げているインドは、2023年までに人口で中国を抜いて最も人口の多い国となり、2050年までには16億人に達すると予測されている。平均労働年齢が28.5歳のインドは、イノベーションを推進する活力に満ちた労働力を体現している。このような人口急増の真っただ中にあって、食料や交通などの主要部門の変化は明らかであり、急増する中間層がそれに拍車を掛けている。

こうした社会政治および経済情勢において、独立したインド地域としてのデンソーの考え方の要点は、次の四つである。

  1. CASE(*Connected、Autonomous、Shared、Electric<コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化>)のための「事業再編」
  2. 「新時代への挑戦」:成長の柱(非モビリティ)
  3. インドの強みであるITソフトウェア資源の活用
  4. 次世代のための「持続可能な環境」の実現に向けた地域戦略
CASEのための「事業再編」

デンソーはCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electric<コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化>)戦略を通じて、モビリティの未来に向けた準備を積極的に進めている。そのためにデンソーは行政機関、顧客、サプライヤーと緊密な連携を図り、CASEの事業基盤の強化に注力している。変化を続ける自動車業界の先頭にデンソーが今後も立ち続けられるように、未来を見据えた、電動化の取り組みに着手するイニシアチブが進行中である。

新たな成長の柱(非モビリティ)

従来のモビリティを超えた新たな道を模索する中で、デンソーはソリューション型事業の開発を優先している。この中には、リーンオートメーション(LA)事業のデータ分析の専門知識を活用し、インドのコールドチェーン部門などの優先分野でイノベーションを推進する試みが含まれている。デンソーは、インドにおけるコールドチェーン物流に適合したソリューションを事業化することで、産業部門と自動車部門の両方に応用できる幅広い市場ソリューションの基礎の確立を目指している。

「総仕上げ」とBEV/ADAS/新分野領域とを達成するための取り組み

デンソーでは「総仕上げ」の達成と、BEVやADAS(先進安全運転システム)などの新分野への進出の両方に注力している。製品寿命が尽きるまで収益性を維持できる、「総仕上げ」製品の重要性を認識している。その結果、デンソーは率先してトレーサビリティシステムによる品質基盤の構築に果敢に挑戦する予定であり、同時にアドオンと自動化活動を通じた生産性の向上に取り組むつもりである。

持続的な成長のための突破口の創出

デンソーは、「外向き志向へのマインドの転換」と外部との連携強化により、持続的な成長のための突破口の創出を目指している。この中には、モノづくり(製造)基盤の強化による収益力の向上と、2025年度までに10%の利益を目標とする事業P/Fの変革が含まれる。

コングロマリットへの参入

デンソーはパートナー企業と協力し、モビリティと非モビリティの両面で事業ポートフォリオの多様化を図っている。この中にはソフトウェア(SW)開発力の強化を通じたグローバルな貢献が含まれており、このためにインド発の技術の目標と成果の明確化に取り組んでいる。

ソフトウェア人材

デンソーはソフトウェア開発の重要性を認識しており、この分野の能力を強化してグローバルに貢献することを目指している。インド発の技術の目標と成果を明確にして、技術の世界に大きな影響を与える将来を描いている。

デンソーは、インドの規則で求められるADASのソフトウェア開発に参加し、2023年度までに組織を設立して、2027年度までに人員不足のデンソー本社に代わってインドの要件の明確化とADASの最適化に貢献する予定である。インドの強みであるソフトウェアエンジニアリングを活かし、2028年度までにモビリティ以外のソフトウェア開発活動を拡大することを目指している。

この展望を実現するために、デンソーはインドの強みを活かし、2030年度までに110人のメンバーでソフトウェアエンジニアリングチームを強化する計画を立てている。ソフトウェア開発業界の要求に応えられるスキルと専門知識を確実に身につけられるように、デンソーはチームメンバーの研修と能力開発に投資することを約束している。社会に大きなインパクトを与える最先端のソフトウェアソリューションを開発できるチームを構築したいと考えている。

知識と計画があれば憂いなし:インドの将来戦略および方針

デンソーがインドの将来戦略および方針を策定する背景には、インドが世界第5位の経済大国であり、最も急速に成長していて、2021~2025年のGDPの予想成長率が平均7.0%を超えるという事実がある。デンソーのインドにおける将来計画には、次の重要な柱がある。

地域戦略
  • 次世代のための「持続可能な環境」の実現に向けた「大義」への取り組み
LTP2030に沿った「環境」と「安心」と「共感」行動に基づく、社会のためのサステナビリティ経営:

1.カーボンニュートラル:
目指すのは、子どもたちと将来の世代のために持続可能な未来を創造することだ。
この理念を達成するために、再生可能エネルギーの安定的で低価格の調達を実現すべく、さまざまなステークホルダーとの連携に力を尽くしている。

2.大気汚染防止:
大気汚染と効果的に闘うための革新的なソリューションを採用して、作業スペースや排出ガス中の空気の質を改善する構想がある。

3.廃棄物管理:
デンソーは責任あるリーダーとして、資源保全に向けて廃棄物管理や水保全を優先し、効率的な資源活用を図りながら、今後も社会に役立つ革新的な製品とサービスを提供していく。

次の大きな変化を見据えることでインドにおけるデンソーの存在感を向上:モビリティの未来と公害防止(EV)、安全、社会的ニーズ

デンソーはモビリティの未来における次なる大きな変化を見据え、特に公害防止、安全、社会的ニーズへの対応に注力することで、インドにおける存在感を高める準備ができている。

インドと日本の情熱を結集し、明確なテクノロジーとスキルを伴うデンソーの強みと優位性を示す。トップ企業として先頭に立ち、社会への誓いを果たすサービスと製品を提供する。

  • 環境: 環境のための持続的な活力
  • 安心: 幸福感の提供
  • 共感: 変化を起こし、人材とスキルを育む
ともにより良い未来を築く

デンソーのインドの将来計画は、単なる事業成長に向けた取り組みではなく、サステナビリティとより良い世界に向けた取り組みである。デンソーは先進の自動車技術を誇る世界有数のメーカーの一つとして、ドライバーと乗客の安全を確保しながら、製品の環境負荷の低減に尽力している。環境に対する重点的な取り組みの一つとして、再生可能エネルギーの利用、低排出製品、エネルギー消費量削減を通じて2035年までにカーボンニュートラル社会を実現する目標も掲げている。

サステナビリティに対するデンソーの取り組みは環境だけに限定されない。すべての人にとっての安全で快適な運転体験の創出にも力を注いでいる。この取り組みは会社が掲げる交通事故死ゼロの目標に反映されており、安全な製品の普及と快適な運転空間の創出によって達成される。事業に対する革新的なアプローチと、技術と協調を通じてすべての人のためにより良い世界を創造するという誓いに支えられ、デンソーは自動車業界のリーダーとしての地位を確立している。デンソーは今後も柔軟で持続可能なアプローチを通じて、インド社会にとどまらない前向きな影響を与え続ける準備ができている。

明るい未来への準備:

「これからも子どもたちが夢を持ち笑顔でいられる未来を創りましょう」
~飯田康博インド地域CEOのリーダーシップのもとで