3. 通貨危機と豊星精密のデンソー持ち分の増資
② 豊星グループの通貨危機の克服期

瞬く間に襲いかかってきた通貨危機の波は、豊星電機と豊星精密の社員の給料の遅配が発生するという最悪の状況に追い込まれた。賞与金の返納と2年間の昇進猶予など、全社が危機を克服するために、すべての役員・社員が痛みを分け合わなければならなかった。さらに経費の使用まで徹底的に分析し、少ない金額でも必ず承認後に使用するよう決裁手続きを強化した。たった1ウォンでも効率的に使えるように経費低減のために努力を傾けた。


特に豊星グループは、積極的な経営戦略により通貨危機に対応した。その一つが生産現場での品質革新を通じた製品競争力の確保であった。
100PPM(聖水洞工場は1996年、昌原工場は1998年に100PPM認証獲得)の品質革新のための検査装置を自主開発した豊星グループは、不良発生位置を把握するために生産ラインのあらゆる場所に自動検査装置を設置した。完成品となってからではなく、製造工程であらかじめ不良の原因を探し当てるために生産ラインの途中で検査を実施したのである。
また、工程別にこれまでに発生した不良と予測される不良を一覧にして、不良品の量産を事前に防げるようにした。併せて電算化作業にも多くの努力を傾けた。現場で不良が発生すれば直ちに管理者のコンピューターに表れるようにして、速やかに対処できるようにし、昌原工場の不良率の状況をソウル本社でもオンラインで把握できるようにした。
このように自社の技術力で検査装置を完備し、原価を下げて製品の競争力を向上させる品質革新は、通貨危機を克服する上で大きな力となった。
通貨危機を体験し、危機に対処する貴重な経験とノウハウを得た豊星グループは、その後に直面することとなるリーマンショックや経営悪化などの様々な困難な状況においても、会社の採算を改善する力を発揮できるようになった。
一方、豊星グループは、資金難から脱却し、事業の安定化を図るために危機を機会に変える努力の一環として、1998年にデンソーに持ち分を売却した。豊星精密のデンソーの持ち分と豊星電機の持ち分が51:49に変更された。