3. ビジネスの多角化 [2]オルタネーター
(2) DMBRベッチンへの移転と事業拡大

DMBRは旧マレッリ時代の1997年からワイパー製品の生産を開始していたが、2000年8月からCKD生産でフィアット社向けオルタネーターを受注し、翌2001年からは段階的に現調・内製化すべく模索していた。そこへトヨタ自動車、ホンダからオルタネーター現調化への強い要請が舞い込んだ。
事業を拡大するためには狭いレンタル工場からの移転が必要となる。候補地として、オルトランジアから近いカンピーナス市の旧ゼロックス工場、DNBRクリチバ工場、ヘッドランプなどを生産するシビエ社のベッチン工場、そしてMMST社ベッチン工場が挙がった。
MMST社ベッチン工場とは、まさしくMMST社が2000年のブラジル進出にあたって譲り受けた、かつてのDNBRベッチン工場であった。MMST社は、将来のビジネス拡大を見越してベッチン市内に自社工場を建設し、2001年より新工場に移転することを表明していた。そのため、旧ベッチン工場が空き家になったのである。
新工場選定にあたっての主な基準は以下の通り。
- 2001年上期にオペレーション可能になること(早期の建屋確保)
- 将来必要となる面積や人員が確保可能であること
- メイン顧客であるフィアット社にジャストインタイムで対応できること
- 投資ミニマムで事業採算に見合うこと

最終的には、顧客工場に近く、HVAC工場としての生産実績があり、付帯設備なども揃っていたMMCL社ベッチン工場が最適と判断し、2001年5月に移転した。その後、2003年にGM社向けオルタネーターの受注に成功し、事業が安定化した。
ブラジルの自動車市場はさらなる成長が見込まれていた。2009年12月には高付加価値の製品を開発・供給すべくDMBR内に実験研究棟が完成。また、従業員をイタリアのDMITに出張派遣して実験技能の習得に努めた。これにより、実験・検査における時間やコストの低減、ならびに顧客への技術サポートが可能となった。
また、この時期には地球環境に対する企業の責任が問われ始めた。同年、フィアット社向け新型オルタネーターA115の生産が開始されたのを契機に、DMBRはより経済的で、かつ炭素排出量の少ない製品開発・供給により、社会の持続可能な成長に貢献することを事業活動の目標とした。