第3章 南米事業拡大期
5. 持続的成長を支える人材育成
(1) デンソースクール(ESCOLA DENSO)設立と技能訓練
DNBRでは1987年からデンソー本社からの出向技能者による社内技能訓練を行っていたが、担当責任者の交代などにより、いつしか途絶えてしまっていた。
生産量の増大、生産品目の拡大、そして製品・生産設備の高度化。現場技能者のスキル向上が求められるなかで、1998年にDNBR社長に着任した天野道夫は、従業員の教育だけでなく現地にも喜ばれる学校を設立し、アプレンティス(養成訓練)を実施する決断をした。
そこには「人々の育成とブラジルへの貢献のために、堂々とした、風化されない学園を設立する」との思いがあった。


デンソースクール設立にあたっては現地拠点赴任者や現地マネージャーが奔走した。その熱意がデンソー本社の技研センターにも伝わり、大々的な支援を受けて準備が進められた。趣旨に賛同したブラジル パラナ州からも補助金を得て、2001年8月にクリチバ工場敷地内に平屋800㎡のデンソースクール専用施設が完成した。

デンソースクールは毎年10~20人の高校卒業生を採用し、約1年間のメカトロニクス研修を実施した。また、地元の職業訓練校ともタイアップして旋盤などの高価な設備やインストラクターを活用した。卒業生からはパラナ州の技術コンクールの優勝者のほか、デンソー本社で開催されるデンソー夢卵(デンソー技術会主催のアイデアコンテスト)や、SENAI(ブラジル全国工業職業訓練機関)主催の技能コンクールでの受賞者も輩出。優秀な人材には従業員採用の道を設けたこともあり、子供をデンソーに入社させたいと希望するDNBRの従業員が競い合ってデンソースクールに通わせて評判となった。