第4章 苦難の時代とさらなる飛躍

1. ブラジルにおける景気後退

(2) 構造改革の断行

経営を立て直すため、DNBRは新保博茂社長を中心に構造改革に取り組んだ。その2本柱は「総費用の低減」と「売り上げの最大化」であった。
「総費用の低減」では、直接部門の生産性向上のための「ダントツ工場活動」や部品現調化活動を展開。輸入品についても物流網を見直し、通関・船便手配なども自前で行って中間費用を削減した。
固定費面では人員計画を大幅に修正し、面談を行った上で大規模な解雇を実施。経費は当初予算の80%削減を求め、必要なプロジェクトをほぼすべて中止して会社運営に不可欠な領域まで切り込んだ。設備投資についても、新規プロジェクトの実施時期や規模の見直しなどを実施した。さらに、地域全体での採算改善にも取り組み、エアコン部品の樹脂ケースなどを製造していたブラジルのデンソー孫会社を清算し、DNBRにその機能を取り込んだ。
「売り上げの最大化」では、新規拡販や他地域のデンソー拠点向け輸出の拡大を進めるとともに、直納ビジネスへの依存から脱却すべく市販ビジネスに注力した。また、顧客に対しては変動する為替レートや高率関税などの経済事情について理解を求め、製品価格の見直しを要請した。
こうしてDNBRは2016年に3年ぶりの黒字化を達成、この時期の体質変革がその後の事業拡大の礎となった。