第4章 苦難の時代とさらなる飛躍
2. さらなる飛躍を目指して
(2) 3社統合(顧客提案力の向上とさらなる効率化を目指して)
すでに見てきたように、生い立ちや資本関係・マネジメント体系が異なるデンソーの拠点が南米にはブラジルに4社、アルゼンチンに1社、計5社が存在する。
- 1975年のNIPPONDENSO REFRIGERACOES LTDA.(NDB)設立に端を発するDNBR
- MM社との合弁で設立したDNAR
- MMM社買収に伴い南米デンソーとなったDMBR
- MMCL社のブラジル子会社として設立されたDTBR
- DNBRの100%子会社として設立されたDNAZ
このうち、DNBR・DMBR・DTBRの3社を、2024年1月に経営統合する。これには、販管・間接部門における重複領域を解消してさらなる固定費の低減を図るとともに、マネジメントの効率化、ガバナンス力の強化、スピード経営を実現し、顧客への対応力を高めていく狙いがある。
2016年以降、南米デンソーは構造改革と市場回復により再び成長軌道に乗ることとなった。統合の背景には、経済危機を乗り越えた経験も踏まえつつ生産・供給体制の再構築ならびに経営機動力の強化を推し進め、経済変動が大きい南米市場で生き残れる体質をつくり上げようという意図がある。DNARは法制・税制の違いにより国またぎでの統合が難しく、DNAZはマナウス税務恩典活用の観点から独立性の確保が必要となるため、いずれも今回の構想には含めなかった。
今後の南米市場への取り組みにおいては、電動化と安全性がキーワードになると考えられる。エタノール産業を保護するための政策により、南米では内燃エンジンを搭載した車両がしばらく続くと予想されるが、世界的な脱炭素社会の実現のためには、排ガス規制やエネルギー効率に対する規制が段階的に強化され、緩やかながらも電動化が進展していくことになるだろう。
その一方で、人口10万人当たりの交通事故死亡者数が世界でワースト1位というブラジルの現実は、安全製品の導入を喫緊の課題としている。
南米デンソーは、これらの課題・要望に応えつつ事業基盤を確固たるものにし、引き続き顧客や社会への貢献を行っていく。