長期方針

経営・会社情報

デンソーは、経営環境が大きく変わる節目の時期において、今後の事業運営の方向性を表す“羅針盤”として長期方針を作成してきました。

※左右にフリックすると表がスライドします。

発表時期 名称 狙い
1954年1月 ボッシュに学び初めての長期計画を策定
1956年8月 自動車部品業界の競争力強化への対応
1961年1月 国際的な電装品メーカーを目指して
1964年8月 開放体制要綱 貿易自由化への対応
1966年9月 新開放体制要綱 資本自由化への対応
1971年4月 国際化推進要綱 自動車資本自由化への対応
1974年10月 経営新体制要綱 オイルショック後の新しい事業環境への対応
1979年9月 80年代対応要綱 10年後の1兆円企業づくり
1986年11月 90年代対応要綱 グローバルデンソーの実現
1994年1月 構造変化対応要綱 バブル崩壊後の低成長に耐えうる企業体質への変革
1997年1月 DENSO VISION 2005 世界へ向けた事業拡大への挑戦
2004年4月 DENSO VISION 2015 先進的な車社会創造への貢献と真のグローバル企業への進化
2013年1月 2020年長期方針 地球環境の維持、安心・安全にこだわり、人々から共感いただけるグローバル企業に進化
2017年10月 2030年長期方針 地球にやさしく、すべての人が安心と幸せを感じられるモビリティ社会の実現に向け、新たな価値を創造し続ける企業

会社五ヶ年計画 1954年1月

1. 趣旨

日本経済の現状は諸物価が欧米諸国に比し割高の為輸出は全く不可能な有様で、このまま推移すれば重大なる破局にたちいたらざるを得ないのである。

この現状を改善して輸出による外貨獲得を可能にすることが日本経済の当面の緊急事であり、その為には諸物資の品質を外国水準に引上げ、且つその値段を外国商品並みに引下げなければならないのである。

日本の自動車はその代表的なものであるので、当社はここに着眼してボッシュとの技術提携を実現したのである。

さて、この目的の下に第1年度を踏み出すに当り、過去を反省して見ると、我国経済が不安定であることに起因するとは申しながら、日本の企業経営全般がそして当然当社も計画性の欠如を痛感するので、この際我社の衆知を集め、出来る限りの努力を以って五ヶ年計画を立案し、生産、設備、資金、技術、営業、労務、福利厚生に対する具体計画を持ち、かつ会社運営上の指導方針をも確立して進みたいと思うのである。

そこで今回は、ボッシュとの契約が完了した品目、即ち在来製品のほかにランプ類、スイッチ類、ラジオシールド部品、ウインカー、ワイパー等を織込んで五ヶ年計画を策定し、追加品目はボッシュとの具体的細部契約がまだ出来ていないので、これらについては後日別途に計画を樹立する予定である。

2. 一般方針
  1. (1)品質の向上…国際水準へ
  2. (2)販売・サービス網の拡充
  3. (3)購入材料部品の規格精度の向上
  4. (4)機械設備の更新増強合理化
  5. (5)事務の合理化
  6. (6)工場環境・福利施設の改善
  7. (7)従業員の素質向上及び適材適所配置
  8. (8)一部に二交替制実施
  9. (9)定員制の実施
  10. (10)経費の節減
3. 五ヶ年計画の概要
  1. (A)生産計画
  2. (B)人員計画
  3. (C)設備計画
  4. (D)資本並びに資金計画
4. 結び

第一次五ヶ年計画 1956年8月

機械工業振興臨時措置法にもとづき、政府は独自の立場で自動車部品工業の合理化基本計画を策定中である。これによれば、自動車工業等基幹機械工業が国外競争に堪え、国内の需要はもち論のこと輸出産業として成長することが、今後の日本の国民経済的要請にこたえるゆえんであり、これが解決のためには、(1)設備の改善(2)技術水準の向上(3)乱立企業の統合能率化(4)基礎部門の企業的強化を図って、企業力の増強、即ち国際競争力の培養に努めることを目的としているのであります。その一方策として、自動車部品工業が、この法律の適用業種として指定されました。系列的な見方を尊重して、部品工業が完成工業たる親企業に劣らぬ技術と経営力を身につけて、従来の下請的従属的立場を脱却して、独立的な専門メーカーとして育成され、社会的分業によって専門化と量産化によるコストダウンと品質の向上を達成するため、自動車工業全体の生産構造の欠陥を補正しながら、全体としての合理化を図ることを目標としているのであります。

従って、今後、合理化基本五ヶ年計画を実施するに当って、強力な政策がとられることが予想せられるので、設備の近代化、生産分野の画定、専業体制の確立、技術の向上などを内容とする諸措置が講ぜられることになり、

  1. 1.35年度末に於ける品種、品質、生産費の合理化、即ち集中生産による20%値下を断行する。
  2. 2.必要設備の種類と資金…近代化に必要な設備については、これが資金の斡旋をする。
  3. 3.生産技術の向上、能率の増進による合理化、即ち規格の統一、生産分野の画定、原材料購入方法の改善を行なう。

このため、更には合理化カルテルを指示して、品質の制限、数量の制限、技術制限、系列化の整備、原材料の共同購入など、各種の合理化効果を期待している次第であります。当社においても、目下この主旨にそって当社独自の五ヶ年基本計画を詳細に亘って計画立案中であります。その項目は下記の通り。

  1. 1.生産額
  2. 2.品種
  3. 3.設備資金
  4. 4.人員
  5. 5.研究部門の新設

第二次五ヶ年計画 1961年1月

目標
  1. (1)昭和38年末までに国際品質、国際価格を実現し、昭和40年には会社総生産高の1割を輸出する状態にもってゆく
  2. (2)国内の市場占拠率を5年間に2割高める
  3. (3)高能率、高賃金の実現
重点的にとる方策
  1. (1)経営全般に科学的管理方法をとり入れる。
  2. (2)研究開発に力を注ぎ、施設、人員の強化、拡充を行なう。
  3. (3)生産設備の生産性的高水準化を積極的に進める。
  4. (4)外注工場を育成強化する。
  5. (5)販売機構ならびにサービス網を拡充する。
  6. (6)福利施設ならびに職場環境の改善や人事、教育面の改良を行なって、従業員が気持ちよく、しかも張り合いをもって仕事ができるようにする。

〈電装時報での解説〉

日本の自動車産業はここ数年間に目ざましい発展をとげ、四、三輪自動車の生産台数をみましても、昭和31年には年間わずかに24万台であったのが、35年には75万台と約3倍に増加し、まさに驚異的な発展ぶりといえましょう。

しかし、アメリカや西欧各国とくらべてみますと、まだまだはるかに遅れた状態であって、乗用車を例にとってみても、生産台数においては米国の35分の1、イタリヤにくらべてすら3分の1に過ぎず、価格も3割程度は高い状態であります。それにもかかわらず、急速に発展し得たのは、まったく政府が自動車の輸入を制限し、国内自動車産業を保護育成してきた結果であります。

ところが、昨年春あたりから、貿易自由化ということが強くいわれるようになりました。これは多少は強制された面もありますが、世界経済の必然的方向でもあり、日本としても将来のより大きな発展のためにどうしてもやらなければならないことであります。したがって、3年くらいさきには自動車の輸入も自由となり、国産車と外国車との間に激しい競争が行なわれることが確実となったのであります。

(『電装時報』1961年1月5日号より)