第3章 成長と成熟 通貨危機の克服とデンソー流の開始 2000~2017

2. 自動車部品の領域拡張と売上伸長

① デンソー豊星の成長と発展

デンソー豊星は、2004年に忠清南道の洪城に、2008年には京畿道の華城に新たな工場を建設して新製品の量産体制を整え始めた。

DNPS洪城工場 起工式
DNPS洪城工場 起工式

2004年に完成した洪城工場は、ワイパーシステム、パワーウインドウモーター、直流電動機などのモーターの生産に注力し、昌原工場はスティックオイル、CVVT(Continuously Variable Valve Timing)、オルタネータ(Alternator)などの先端技術分野のエンジン部品の新規生産を担当することとなった。

華城工場は2007年4月に着工、京畿道華城市長安の第2外国人投資企業専用団地に33,100㎡の規模で2008年9月に完工し、豊星電機時代のソウル工場の製品を移転して、イグニッションコイル、ドアロック、ウォッシャーモーターなどの生産を開始した。その後、2014年に華城工場に10ラインを増築し、自動車用エアコンを生産することとなった。

デンソー豊星は、2000年の経営権譲渡を基点として、既存の事業体質が抱えていた問題の改善に向けて努力を傾けた。特に新製品を開発して誘致し、パワートレイン事業の製品群の拡充に力を入れた。

2003年にデンソー豊星の2代目社長に就任した奥田富佐二は、VCT(2003年)、CVVT(2003年)、OCV(2009年)のような高機能・高収益の製品を量産し始めた。

2003年12月 DNPS 奥田社長、韓国産業褒章受賞
2003年12月 DNPS 奥田社長、韓国産業褒章受賞

当時、高機能製品を韓国の拠点で生産することに対して、日本本社の品質本部は難色を示した。しかしデンソー豊星は、このような懸念にもかかわらず、成功に対する将来構想と信念を持っていたため、これを曲げずに数えきれないほどの品質テストを行い、改善を繰り返した。そして、ついに日本の生産品と同等の品質レベルに到達でき、顧客から高い評価を受けることとなった。このようなデンソー豊星のビジョンと努力は、顕著な売上上昇につながることとなった。

2000年には1,324億ウォンだった売上は、2001年に2,273億ウォン、2003年に3,015億ウォン、そして2015年には6,521億ウォンと、2倍以上となる輝かしい成果を上げた。

デンソー豊星は、現代自動車グループの冷暖房製品であるカーエアコン(HVAC)の新規受注により、2013年7月に京畿道と4,500万ドル規模の投資協約を締結して華城工場そばの敷地に10ラインを増設してカーエアコンの生産準備に拍車をかけた。

2013年10月、「デンソー豊星株式会社」は「デンソー・コリア・オートモーティブ株式会社」に社名を変更した。建設中の10ラインは2014年に完成し、2015年6月1日からカーエアコン(HVAC)の量産を開始した。当時の華城工場は、ETC、SIFS、イグニッションコイルなどの製品をメインに生産していたので、既存の商用エアコンからカーエアコンに事業を拡張し、世界1位のデンソーのカーエアコン技術が韓国の自動車産業に貢献すれば、売上伸長に大きく寄与することが予想された。また、華城工場の地域社会での雇用創出による企業イメージの向上はもちろん、韓国拠点の主要事業として位置づけられるだろうという期待が大きかった。

しかし2020年に入り、カーエアコンは計画に対して実際の生産は半分のレベルにとどまることとなり、期待したレベルの事業成果を収められず、事業規模は次第に縮小されることとなった。

本事業は、当時のデンソーの韓国拠点として、非常に大きな挑戦であった。成功を収めた事業ではないが、このような経験を通して、事業規模よりも内実を重視する方向に経営マインドを切り替えるきっかけとなった。