第3章 南米事業拡大期

6. サンパウロ州への進出

(1) サンタバーバラ新工場建設

ブラジルの自動車市場(販売)は1995~2005年ごろに年間100万~150万台程度で推移、2005年以降は金利低下やレアル高などを追い風とした。
2008年ごろのブラジル経済は高インフレが収まり経済成長率が上昇、輸出拡大により黒字が定着していた。自動車生産もバス・トラックを含む自動車生産台数が300万台まで伸び、世界第6位の生産国となった。

サンタバーバラ工場の立地
サンタバーバラ工場の立地

ブラジルを中国やインドと並ぶ重要な市場と位置付けたトヨタ自動車は、サンパウロ州に新工場を建設し、新開発の小型車EFCの生産を計画していた。しかし、トヨタ自動車やホンダ向けのHVACなどを生産していたピンダ工場はレンタルで面積も狭く、かつ建屋が三つに分散しており、モノの流れが非常に複雑であった。また、工場間・工場内に段差があり構内運搬にも難があるほどで、ラインの増強も難しかった。
そこで、2008年4月に本社役員会を開き、サンパウロ州での新工場設置に向けて動き始めた。
サンパウロ州はトヨタ自動車、ホンダ、フォルクスワーゲン社、GM社などカーメーカーの生産拠点が集中する地域である。新工場の用地選定についてはトヨタ自動車、ホンダから100km圏内にあり、物流も含め迅速に顧客への対応が可能であること、またサーマル製品以外でも顧客貢献をしていく観点から地域中核拠点・複合事業拠点の設置が可能であることを要件とした。イタチバ、サルト、イツーなどと比較検討を行った上で、2008年10月、サンパウロ州サンタバーバラ・ド・オエステ市に約30万㎡の土地を取得・造成することを決定した。

サンタバーバラ工場
サンタバーバラ工場
サンタバーバラ工場 稼働開始
サンタバーバラ工場 稼働開始

時を同じくしてリーマンショックが発生し、顧客の生産計画見直しで工場建設は一時的に見送られたが、将来的な見通しに変わりはないと判断し、2011年1月にサンタバーバラ工場を稼働。ピンダ工場はHVACラインを新工場に移設して閉鎖した。