第3章 南米事業拡大期
6. サンパウロ州への進出
(2) テクニカルセンター設置と地域中核拠点化


2010年代初頭、南米の自動車市場はアルゼンチンを含めて400万台を超えた。安定した成長が見込まれる中、市場シェアの80%を握る欧米Big 4(フォルクスワーゲン社、フィアット社、GM社、フォード社)は、最終消費者や顧客の嗜好、使用環境に合った製品を現地で開発すべく、小型・フレックスフューエルなどの南米独自の車種を現地設計していた。
そこでDNBRも、2012年4月、サンタバーバラ工場敷地内にテクニカルセンターを稼働させて現地開発を強化した。これには、現場で技術対応が可能なセンターを顧客の近くに設置するとともに、地域でのデンソーのプレゼンスを高めて優秀な人材を集める狙いもあったため、隣接する高速道路からの見栄えも重視した。

同センターには南米初となる風洞実験設備が設置され、南米カーメーカーやほかの部品サプライヤーにも開放された。風洞とは自動車の開発のため、空力性能の計測や世界各地の気候を再現した環境性能の計測を行うための設備である。それまでの南米カーメーカーはサンパウロから約3,000kmも離れた赤道付近のピアウイ州テレジナまで赴き、夏季の車両使用を想定した実験を行っていた。テクニカルセンターには空力性能や様々な地域の気候を再現した環境性能の計測ができる環境が整い、製品評価が可能となったため、遠出する必要はなくなった。こうして開発費のコストダウンならびに納期短縮が可能となり、製品の現調化も進展した。
テクニカルセンターには南米全体を統括するための本社機能を併設した。南米5社の開発・生産・販売を強化しつつ、より効率化して、開発から販売まで自己完結できる体制を構築するのがその目的であった。