第2章(1999~2010年)成長への意志が「優秀」と「最高」の差となる

3. ヨーロッパの法令順守で顧客をサポート、信頼と信用の基礎

(2) DNKI、不健全企業と回復 ― 耐え難い痛手

卓越と社会貢献を目指すDNKI
会社を「黒字」転換するための体系的な取り組み

どんな組織も「不健全企業」と評されれば、財政面でも評判の面でも大きな痛手をこうむることになる。DNKI(デンソー・キルロスカ・インダストリーズ)がこの窮地に陥った。2010年度と2011年度に利益がマイナスとなったのだ。それが資本の喪失につながり、インドの法律上、「不健全企業」として分類された。この状態は会社の財務状況に影響を与えただけでなく、主要な顧客層の間のブランドイメージにも傷をつけた。

会社を「不健全企業状態」から脱却させて可能な限り速やかに立ち直らせるために、早急な対策が求められた。経営陣はまさにこれに取り組んだ。あらゆる分野で生産性の向上とコスト削減を図る計画を策定し、2012年度から2016年度までの回復計画として発表したのだ。

先手を打つ取り組みと迅速な対応の融合
固定費削減による高いコスト競争力

2010年度も2011年度も、DNKIは約11%のマイナス利益を計上し、結果として資本が減少した。この状況を招いたのは円高ルピー安と品質問題だった。インド政府の法律に従い、会社の状態を「不健全企業」と宣言する必要があった。その結果、ステークホルダーの間でブランドイメージが低下する。会社は迅速に行動し、不健全企業状態から抜け出して、可能な限り速やかに黒字転換する必要がある。

気の遠くなるような挑戦だった。状況を好転させるためにチーム全員の献身と努力が求められた。迅速な改善のために、DNKIはいくつもの先手を打つ措置を講じた。例えば、社員およびトヨタ・キルロスカ・モーター社などの顧客に体系立ったメッセージを送った。その目的は、現在の状況と働き方を変える必要性を全員に認識してもらうことだった。

そこで経営陣は、迅速な達成のためにコストと作業効率のあらゆる側面を改善しようと試みた。管理職は本社と協議し、2012年度から2016年度までの回復計画を発表した。結果的に、会社は2014年度から黒字を達成している。

これがデンソー本社の経営陣に評価され、DNKIの一貫した努力に対して「2015年デンソー社長栄誉賞」が授与された。

いちずな努力で運命を逆転

最適な在庫を維持するためには、通常の操業の最適化が必要だった。それは持続的な取り組みであり、全員の献身とデンソースピリット、すなわち総智・総力と効果的なコミュニケーションが求められた。容易ではなかったが、目標を見失わず熱心に努力を続けた結果、2014年度末には黒字に転じ、その流れが2015年度まで継続した。

社員、インドグループ会社、海外グループ会社、本社、ビジネスパートナー、顧客の多大な貢献と、多様な取り組みを通じて、DNKIはこれを達成できた。以下に主な活動の例を挙げる。

DNKIは、社員およびトヨタ・キルロスカ・モーター社などの顧客との体系立ったコミュニケーションにより、迅速な回復に向けた積極的な活動に着手した。この取り組みを通じて、現在の状況と、働き方のアプローチを変える必要性を、関係者に敏感に感じ取ってもらうことができた。さらに不健全企業状態からの脱却のためにデンソー本社が資金を注入したことも、支払利息の削減に役立った。 同時に「コスト構造改革タスクフォース」を立ち上げ、EEL(Expenses Hearing for Expense Control、経費聴き取りによる経費管理)ですべての経費を評価して、本当に必要な部分だけ支出するようにした。一部の経費の延期、ゼロOTなどの活動、削減される応用コスト、シェアードサービスコスト、顧客とのAPR。継続的なプロセスとして運用上特別な注意を払うことで、在庫が随時最適化された。こうした重点的な取り組みによって2014年度までに黒字化を達成し、翌年度もこれを継続できた。

もちろん、これはチームワークと強固なコミュニケーションというデンソースピリットを持って、DNKIの社員全員が一丸となって取り組んだ結果である。

ハイエクセレンスの認定を目指すDNKI

デンソー本社の経営陣はDNKIの献身を評価し、「2015年デンソー社長栄誉賞」を授与した。 インドグループ会社、海外グループ会社、本社、ビジネスパートナー、顧客を含む、DNKIに携わる多くの人々が力を合わせてこの仕事を成し遂げた。その集団的な努力が、痛手を克服し、より強く再生しようとする会社を支えたのだ。

「不健全企業」状態に陥ることは苦い経験だったが、DNKIのその後を決定づける瞬間でもあった。チームが団結すればどのようなことを達成できるのかを示す機会となった。この困難な時期に学んだ教訓が役に立ち、レジリエンスがさらに高まった。そして将来のどんな困難にでも立ち向かえるように、より良い準備ができるようになった。

顧客からの受賞と評価の歴史:

2002年の最初の賞:顧客のトヨタ・キルロスカ・モーター社 ― 「最優秀サプライヤー賞(Best Supplier Award)」
2017年:顧客のトヨタ・キルロスカ・モーター社 ― 最優秀技術採択(Best Technology Adoption)― 最優秀主体的サプライヤー(Best Self-reliant Supplier)
2018年:IATF 16949認証(2013年、OHSAS 18001認証。2001年、ISO 14001認証)

大きな原動力としての社会貢献

地域社会を支援するために、初期のCSR(社会的責任)では主に教育、青少年育成、高齢者支援を通じた地域貢献に注力し、文具、ゲーム教材、キッチン教材などの形で学校を支援してきた。