第2章 南米事業を本格始動
1. NIPPONDENSO COMPRESSORES LTDA.(NDBC)の設立
(4) 逆境を乗り切るために
ブラジルの自動車市場は1960年代後半から急成長を始め、1970年代にはモータリゼーションが到来していた。1980年、ブラジルでの新車販売台数が過去最高の114万台を記録した。1980年代末までには150万~200万台市場への成長が期待されたが、国の財政破綻で経済政策の大転換を余儀なくされ、1981年は前年比40%という厳しい状況に終わった。
この苦境からの挽回策として、NDBCの上田利英社長は二つの目標を掲げた。
第1の目標は「ブラジル国内シェア100%を目指す」こと。そのために、デンソー本社の冷暖房設計部門からコンプレッサーの搭載設計、試作、振動テストなどについて支援を受け、現地のGM社、フォルクスワーゲン社、フォード社、フィアット社の協力を仰ぎながら実車テストを繰り返した。
第2の目標は「輸出市場を積極的に開拓する」こと。国をまたいでフォード・アルゼンチンやフォード・ベネズエラを対象に営業活動を展開した。すでにデンソー本社が両社への営業活動を進めていたが、 NDBCを窮地から救うためサポートに回った。これにより、NDBCはベフィエックスの輸出義務を果たすことができた。