第2章 南米事業を本格始動
1. NIPPONDENSO COMPRESSORES LTDA.(NDBC)の設立
(2) BEFIEX(ベフィエックス)制度による会社設立

スプリンガー社とのプロジェクト解消から約3カ月後、首都ブラジリアにある商工省工業開発局からNDBに、「BEFIEX(ベフィエックス)」を活用してコンプレッサーの生産事業を立ち上げてもらえないかという打診があった。
ベフィエックスは、外貨不足に悩むブラジル政府が輸出産業振興のために新設した特別恩典制度で、外資100%であっても、政府が輸出に有望と考える事業内容であれば恩典を受けることができた。フォード社がすでに指定企業第1号となっていたが、ブラジル経済は不安定で、工場進出に積極的な企業は少なかった。
デンソーのブラジル再進出については、NDBが開拓したフォルクスワーゲン社やフィアット社などの企業からも強い要望があった。
また、日米貿易の観点からも望ましい効果が期待できた。第1次オイルショック以来、低燃費の日本車人気によって1980年代には日米経済摩擦への道を歩んだが、輸出国を日本からブラジルに切り替えることで日米貿易のインバランスも解消できる。
1979年秋、デンソーはベフィエックス制度に申請。デンソーの投資義務は1,000万ドル、輸出義務は10年間で3,000万ドル、これに対する設備装置類の免税輪入枠は400万ドル、組み付け用部品の減税輸入枠は1,000万ドルとされた。


こうして1980年4月、サンパウロ市に「NIPPONDENSO COMPRESSORES LTDA.(NDBC)」が誕生した。