第3章 南米事業拡大期

2. ビジネスの多角化 [1]二輪・電子製品

(4) DNAZ南米電子事業拠点への進化

新工場設立以降のDNAZは、モトホンダ向けマグネトに加え、2001年9月にはヤマハ向け製品の生産を開始した。製品ラインナップの幅も広がり、マグネトのほか、南米でのデンソー初の電子製品となるCDI・レギュレーターなどが加わった。さらに二輪車の排ガス規制とこれに伴う電子制御された噴射システムへの移行により、2005年からは二輪車向けエンジンECUの製造も開始した。

2012年自動車向けECU納入開始
2012年自動車向けECU納入開始

CDIやECUといった電子製品の生産には、これまで以上に高品質なモノづくりが求められる。そこで電子製品固有の生産技術を習得する必要性から、デンソー本社より派遣されたエンジニアによる教育を実施して、品質に対する概念の変革やメンタリティ向上に取り組んだ。また、機械式製品以上に精密でデリケートな電子製品の生産に対応するため、生産現場には繊細で緻密な作業に適した女性従業員を多く配置した。
このような二輪向け電子製品の生産は自動車用エンジンECUの受注にもつながり、2012年にはブラジルトヨタ向けのエンジンECU生産が開始された。
トヨタ自動車は1997年に完成したアルゼンチン サラテ工場でハイラックスを、また1998年よりブラジル インダイアツーバ工場でカローラを生産していた。その後、2010年7月に小型車EFCを生産する新工場の建設を決定し、同年9月にサンパウロ州ソロカバ市で着工した。ブラジルが中国やインドと並ぶ重要な市場に成長するなかで、デンソーECUへの現地生産ニーズも高まっていたのである。
トヨタ自動車の工場があるサンパウロはマナウスから遠いため、物流コストがかかり、需要地近郊での在庫保管費用なども発生した。それにもかかわらずDNAZでの生産が決定した理由として、二輪車向けでの実績がありリソースや設備投資の面で利点があること、マナウスフリーゾーンにおける複数の税務恩典(法人税・関税・工業税・サービス税等)を活用できることが挙げられる。
これらの生産実績がベースとなり、エンジンECUに加え、エアコンやEPS(電動パワーステアリング)用のECUをはじめとする南米エレクトロニクス製品の中核拠点として、DNAZは変貌を遂げた。2021年度末で従業員数400人を超える規模に成長している。