個性のコラボが生まれる土壌を、次の世代につなげていくために

「多様性を大切にし、未来に貢献したい」仕事を通じて気づいた自分の思い

  • 西尾製作所サーマルシステム製造2部所属藤井 聡史

    2010年にデンソーに入社後、生産技術職としてサーマル製品を担当。コーチング資格の取得やNPO団体への所属、クラウドファンディング企画や教育事業への参入、防災の新規事業開発など、仕事外でも多方面に活動を行う。

「全ての生物がハッピーと言える世界に貢献する」というビジョンを掲げ、多様な取り組みを行う藤井。 しかし元来活動家だったわけではなく、ゲームに明け暮れた学生時代や、仕事の中で理想と現実のギャップに悩んだ日々がありました。時に挫折を味わいながらも理想を持ち前に進む彼がこれまでの道のりを語ります。

この記事の目次

    多様性を大切にしている。 けれど僕には自分も相手も大切にできなかった過去があった

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    ダイバーシティ&インクルージョン。

    それは、多様な人が互いの考えの違いや個性を認め合いながら、一緒に成長することです。

    自分にも相手にもまた別の人にもそれぞれの思いがある。今は僕も、多様性を大事にしています。

    しかし以前は、自分の思いを言い出せなかったり、逆に自分の意見を通すために相手を打ち負かすような強い言い方をしてしまったり、多様性を大事にする意識はありませんでした。

    自分自身が働く中で経験した休職・復職、そこから立ち上がる過程を経て、大切にしようと思えたことだったんです。

    根っからの真面目ではない僕が、仕事に対し、思い詰めるようになるまで

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    小さい頃、父がよく仕事仲間とのレクリエーションで使う大道具を作っていました。発泡スチロールのサイコロなどです。それを使って、みんなが楽しく遊んでいた記憶があります。
    そんな光景を見て、僕はモノづくりに興味を持ち始めました。

    中学卒業後は工業系の高等専門学校へ入学。その後、大学へ編入学し、スターリングエンジンの研究や量子力学の勉強をしていました。

    けれどもその頃は特段真面目な学生ではありませんでした。
    バイトにも打ち込まず、毎日研究室で友達と麻雀やテレビゲームに明け暮れているような、いわゆるポンコツ大学生です(笑)。

    その後デンソーに就職を決めたのは、モノづくりの会社であること、自動車が身近な存在だったこと、また、自動車に関わる仕事で人々の生活を便利にしたいと思ったからです。

    そうは言っても、学生時代に友達と遊びまくっていた人間が、就職後にいきなり真面目になるはずはなく、当初はそれほどやる気のある新人ではありませんでした。

    しかし生産技術職として工場に配属されて働き始めると、そんな僕にも丁寧に教えてくれる上司や先輩がいました。

    そのおかげで一つずつ仕事を覚え取り組むうちに、製造現場の方から感謝の言葉をもらえるようになったんです。

    それが嬉しく、「現場の人がもっと喜んでくれる仕事をしよう」という目標を持ち、やりがいを持って働けるようになっていきました。

    配属から4年後のある日、今の職場である別の工場に異動することに。
    僕はそこに以前の工場とはまた違った職場の雰囲気を感じました。

    生産技術は生産技術、現場は現場、それぞれが自部署の目標を大事にしている。
    それぞれの目標のために頑張っているんだけれど、より良い効果を生むためには、もっとみんなが連携していかなくてはいけないのではないか、と強く感じていたんです。

    しかし当時の僕は、そういった思いを打ち上げることができず、気付けば仕事に対するモチベーションが下がっていきました。

    けれど本当は、“みんな”が良くなるビジョンを持って働きたいと思っていました。

    自部署のことだけを考えるのではなく、現場が喜んでくれて、会社としても利益につながることを考えていきたい。安全や品質にもこだわっていきたい。
    “全方良し”な理想を目指して仕事をしたかったんです。

    結局、理想を追い求めすぎたがゆえにいつしか体調を崩してしまい、ついには会社を休むことになりました。

    復職後、壁を乗り越える中で培った、 自分は自分、他人は他人なんだ、という思い

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    休職中、元気になれる日を信じてずっと支えてくれる家族や、「待っとるぞ。気にせずゆっくりしろよ」と声をかけてくれた職場の仲間が、少しずつ僕を回復に導いてくれました。

    復帰した直後も温かく受け入れてくれたのをよく覚えています。人の温かさに本当に恵まれているなあと。支えてくれた人たちに恩返しがしたいと思い、ここで再び頑張りたいと思えたんです。

    ところが、周りと自分の思いとのギャップに何も言えてこなかった今までの反動から、しっかり自分を持たなくては、と危機感にも似た強い思いを抱くようになりました。

    自分を持つことを強く意識するあまり、過激な言葉を吐くようになってしまったんです。
    「こうあるべき」という自分の思いを押し付ける高圧的な話し方をしてしまったときもありました。当然、相手と衝突します。

    これではいけない、と自分に嫌悪感を覚えながら毎日を過ごしていたとき、人材開発手法の一つであるコーチングに出会いました。
    自分の意思で相手を従わせようとするのでなく、相手の意思を尊重することを大切にした手法です。

    コーチングを受けて、自分に向き合うと同時に、他者を認める大切さを学びました。

    自分にも思いがあり、他人にもまた別の思いがある。
    いい意味で“自分は自分、他人は他人なんだ”、という前提で話すと、理想を追い求めたいという自分のありようを、周りが認めてくれるようになりました。

    「こいつはちゃんと人の考えを聞いて、自分の言葉にしているんだな」と受け止めてくれるのを実感したのです。

    こうしてコミュニケーションの土台を作ったうえで、「これをやってみよう」「この部分を変えていこう」と発信していくと、同意してくれる仲間が増え、良い方向へ変える行動の機会をつかめたんです。

    身近なところからダイバーシティ・インクルージョン&フュージョンの世界に貢献したい

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    昔の僕と同じように悩む人だけでなく、やりたいことを打ち上げづらい人や、自分を過小評価している人がまだまだ社内にいると感じます。

    コーチングを通して自分に向き合った体験、また、悩みを乗り越える中での変化や学びを、他の社員にもシェアするために、今コーチングの資格取得に取り組んでいます。

    自己肯定感を持ちながら他者も尊重し、その人らしく他者と関わりあうことができれば、きっと今までにないアイデアやコラボレーションが生まれる。

    そんな土壌を作ることで会社への恩返しができるのではないかと考えています。

    また、僕自身が子どもを持ったことで、教育に強く関心を持つようになりました。
    いつか初等中等教育の事業を立ち上げたいという夢があるんです。

    子ども達が互いの価値観を認めあいながら、いろんな学びや経験を通して、ダイバーシティ&インクルージョンのマインドを養い、個性を伸ばして育っていく。

    大きくなった彼らが関わりあいながら、コラボレーションを生んでいく。そういった個性のフュージョン(融合)が起これば、きっと何年先の国や世界も盛り上がる──

    そんな未来をつくる子どもたちを育てたいんです。

    そしてさらに彼らが、次の世代の子どもたちの未来を良くしていってほしい。
    100年、200年先の未来にも、数珠つなぎのように次世代へ引き継いでいってほしいという理想があります。

    僕はそういう土壌を整える一助になれるよう貢献していきたいです。

    (あとがき)

    苦難を乗り越えた経験を元に思いを語る藤井。彼はこう付け加えます。

    「誰もがダイバーシティウェルカムな心持ちで、みんなで何かを成し遂げるべき、とは思いません。いますよね、一人でやったほうが幸せな人も。
    それも個性だと思っていて、その人に合ったやり方を探せばいいと思うんです。それが多様性だと思うので」

    そう一人一人が自分らしくあれるよう願う姿に、多様性を受け入れることの豊かさを感じるのです。

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