「クルマの未来を創る」ASIC開発の最前線──車載技術の核を担う技術者たち

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    • ASIC技術部 室長吉田 順一Junichi Yoshida

      2008年にデンソーへ入社。エンジン制御用半導体の開発を担当し、設計手法確立や機能統合化による顧客価値創出を実現。2025年にASIC技術部 室長に就任。車載半導体事業運営をリードし、エンジン・ADAS・ボデー分野の開発を推進。新規分野開拓にも挑戦し、技術革新と顧客満足の向上に貢献している。

    • ASIC技術部 担当係長梶本 智仁Tomohito Kajimoto

      前職で時刻同期規格を採用したFAネットワーク通信用半導体チップを開発。さまざまな製品に搭載され、TSN対応FA機器拡充に貢献。2022年にデンソーへ入社し、ブレーキ制御IC・電池監視ICなどのデジタル回路開発を統括している。

    • ASIC技術部 担当黒﨑 真帆Maho Kurosaki

      2022年に新卒でデンソーへ入社。駆動ICの検査装置の工程管理を担当後、内製半導体部品の製造工程設計に従事。メーカーと協議して新規モールド樹脂の密着メカニズムを解明し、水素プラズマ処理装置導入に携わる。現在、新規モールド樹脂を使用した製品の量産に向けた工程設計を担当している。

    車載に最適な半導体ソリューションを開発するデンソーのASIC技術部。そこに所属する吉田 順一、梶本 智仁、黒﨑 真帆の3名が、それぞれの立場から語る「デンソーならではの特徴」と「仕事のやりがい」。技術に込めた熱い想いが、クルマの新しい価値を切り拓いていきます。

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      高性能・高信頼性ECUを支える、デンソーASICの内製力

      ASIC技術部のメンバーがディスカッションしている様子

      ──ASIC技術部の概要について教えてください。

      吉田:ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とは、特定の機能や用途に最適化された集積回路です。汎用の半導体チップとは異なり、目的に応じた高効率な処理を可能にします。とくに車載分野では、環境性能、安全性、信頼性が求められるため、多くのASICが使用されています。

      私たちASIC技術部のミッションは、クルマの進化を支える半導体の開発を通じて、環境・安心における新たな価値を社会に届けることです。

      主な業務内容は、ASICの企画から開発設計、品質検査、アフターサポートなど多岐にわたります。組織は8つで構成され、それぞれが専門分野を担当し、横断的に連携しています。

      ──ASIC技術部がデンソーにあることの意義や強みはどこにありますか?

      吉田:デンソーは、クルマの頭脳ともいえる電子制御ユニットであるECU(Electronic Control Unit)を開発・提供しています。世界トップレベルのECUを実現するために、デンソーでは消費電力やサイズなど、ECUに最適化された半導体を内製しています。

      一般的な半導体メーカーではシステム部門は納入先の顧客となるため連携が困難ですが、デンソーでは性能向上に必要な要素をシステム部門と徹底的に議論し、製品仕様や開発計画に落とし込むことができます。これがデンソーの最大の強みと言えます。

      さらに、市場での使用状況を先読みした設計強化や、欠陥品の確実な検査リジェクトなどの活動に力を入れています。長年にわたり品質を追求してきたデンソーだからこそ、半導体の設計から製造まで一貫して手掛ける体制を築いています。この内製力が、お客さまから高い信頼を得ている理由です。

      日本の半導体 再興への想いを胸に。デンソーを選んだ理由

      ASIC技術部の黒﨑が笑顔で話している様子

      ──学生時代の主な取り組みと、デンソーに入社した理由を教えてください。

      黒﨑:学生時代は量子力学や電磁気学を学び、研究論文を通じて半導体の奥深さに惹かれました。その背景には、性能と品質で世界を席巻していた日本の半導体産業があります。その再興に、自分も貢献したいという思いを抱くようになりました。

      デンソーであれば自動車という変化が激しい分野で、品質を大切にしながらも、難易度の高い挑戦ができると考えました。さらに、インターンシップで社員の方々と直接会話する中で、品質へのこだわりを強く実感し、それが入社の決め手となりました。

      ──入社後の業務変遷と、その中でとくに成長を実感したエピソードについて教えてください。

      黒﨑:入社後すぐに工場実習の機会がありました。そこでは、配属後に担当予定の製品を実際に見て触れ、製造現場の方々と対話しながら、デンソーのモノづくりの考え方を学びました。その後、設計業務に従事し、開発担当者と協力して高品質な製品を設計するために、要素技術を学び、検証や評価を通して経験を積みました。

      現在は、開発と製造現場の橋渡し役として実装開発に携わっています。具体的には、ASIC製品をECUなどに実装する際の接合剤の寿命設計や、新規材料適用に向けた実機評価・解析などを担当しています。

      とくに成長を実感したのは、入社3年目に経験したトラブル対応です。新規で導入したモールド樹脂では、リードフレームとの間に剥離を生じてしまう問題に直面しました。剥離発生のメカニズム構築に向け、メーカーと協議を重ね、検証を繰り返し、解決にたどり着くことができました。限られた情報の中、自分が考えたメカニズムや検証が成立した瞬間、大きな達成感とやりがいを感じました。

      ──半導体の技術者として身についたスキルや、入社して良かった点はありますか?

      黒﨑:限られた情報や時間の中で、事象の発生メカニズムを検討し必要な情報やデータを取得するためにどのような評価をすべきか考え、最適な判断を下す──そんな場面を何度も経験する中で、論理的思考力とデータ処理能力が自然と鍛えられました。「正解がない中で、どう考え何を選択するか」その問いに向き合う力が、確実に身についたと感じています。

      また、モノづくりは決して一人では完結しません。すべての工程に関わる人たちとの連携があってこそ、製品は形になります。だからこそ、コミュニケーションの大切さを強く実感しました。

      デンソーには、知識や経験が豊富な社員がたくさんいます。困ったときにはすぐに相談できる、前向きで協力的な風土が根付いていて、日々の業務の中で多くの刺激を受けています。「この人たちと一緒に働けてよかった」と、心から思える環境です。

      「自分の技術がクルマを動かしている」──実感する恵まれた開発環境

      ASIC技術部の梶本と黒﨑がパソコンを見ながらディスカッションしている様子

      ──前職でのキャリアと、デンソーへの入社の経緯を教えてください。

      梶本:これまで2社の電機メーカーで、製品のハードウェア開発に携わってきました。とくに2社目では、ネットワークのプロトコルを実装する通信用ASICの開発に6年間従事し、2つの製品を世に送り出しました。

      その後、ASIC開発のキャリアを深めたいと考え、転職を決意しました。ASICは製品の価値創出における鍵となる部品です。高付加価値なASICを開発することで優れた製品が実現できるため、製品開発において非常にやりがいがあり、重要な仕事だと認識していました。

      デンソーを選んだ理由は、自動車部品メーカーでありながら、半導体を内製しているというユニークな立ち位置にあります。半導体専業メーカーとは異なり、クルマという最終製品に直結する環境で、基幹部品としてのASIC開発に携われることに大きな魅力を感じました。

      安定した事業基盤のもとで、社会に必要とされる製品を、自らの手で形にしていける──そんな環境に惹かれ、デンソーへの入社を決めました。

      ──入社後の業務変遷と、その中で印象に残っているエピソードについて教えてください。

      梶本:入社後はデジタル回路設計者として、モーター制御、ブレーキ制御、電動化車両の電池監視、ECU間通信など、多様な車載アプリケーション向けASICの開発に携わりました。

      中でもとくに印象に残っているのは、入社初期に担当したモーター制御ASICの実車評価です。自動車メーカーの工場で、自分が設計したASICが実際の車両に搭載され、走行テストを行いました。その場で製品が問題なく動作することを確認し、さらに乗り心地まで自分の肌で感じられた瞬間、「自分の技術がクルマを動かしている」という実感が胸に込み上げました。技術者として、これ以上ない喜びでした。

      前職では設計情報を外部ベンダーに渡して製造を委託していましたが、デンソーでは設計からレイアウト、製造、検査までを一貫して社内で対応できます。この一貫した開発体制は、技術者としての視野を広げてくれるだけでなく、製品の完成度にも大きく影響します。自分の手で最後まで責任を持てる環境は、非常にやりがいがあります。

      そしてもう一つ、日々感じているのが、周囲の技術者のレベルの高さです。先ほど黒﨑も話していましたが、優秀な仲間と共に仕事をすることで、自分自身も自然と引き上げられていく。そんな成長の連鎖が、デンソーには確かに存在しています。

      「技術だけでなく、人の成長にも責任を持つ」──技術者の成長を支える、挑戦のサイクル

      ASIC技術部の吉田、梶本が腕を組んで話を聞いている様子

      ──ASIC技術部の風土や働き方について教えてください。

      吉田:ASICという1つの製品を作るには、幅広い業務プロセスが存在し、すべての工程を確実に連携させる必要があります。そのため、横のつながりは非常に強固で、チームワークとコミュニケーションを重視する風土が根付いています。

      人財育成においては、回路技術や実装技術に加え、さまざまな分野を横断的に経験できるよう、部内ローテーションを積極的に行っています。技術者としての幅を広げ、将来のキャリアアップにつながる育成環境づくりに力を入れています。

      ──室長として大切にしていること、メンバーに日々大切にしてほしいことは何ですか?

      吉田:私が最も大切にしているのは、「技術者がやりたい技術に挑戦でき、多くの経験を積める環境を作ること」です。人は経験を通じて学び、成長します。失敗からも成功からも学びがあるため、いかに挑戦のサイクルを多く回せるかが、技術者の成長に直結すると考えています。

      これは、私自身が若い頃に上司から多くの挑戦の機会をもらい、成長できた経験に基づいています。その"良い文化"を、次の世代にも継承していきたい。技術だけでなく、人の成長にも責任を持つ──それが室長としての私の役割だと思っています。

      メンバーには2つのことを意識してほしいと伝えています。1つめは、コミュニケーションを積極的に取り、困難に直面した際はすぐに相談すること。2つめは、自身が開発した技術や製品が、社会にどのような価値をもたらしているのかを常に意識することです。

      私はかつて、エンジン向けの制御ICを開発し、燃費向上に貢献した経験があります。これは、環境負荷の低減という社会的課題に対して、技術で直接的に貢献できたと実感できた瞬間でした。

      その開発では、1つの不良も許されないという強い責任感のもと、徹底した解析に取り組みました。とくに「走る・曲がる・止まる」といったクルマの基本動作は、人命に直結する重要な機能です。だからこそ、技術者としての誇りと責任を強く感じました。

      こうした"社会への貢献実感"と"技術に対する責任感"は、日々の業務におけるモチベーションとなり、技術者としての成長を力強く後押ししてくれる原動力だと信じています。

      ──最後に、将来の仲間へのメッセージをお願いします。

      吉田:「自分も挑戦したい」と手を挙げてくれる方にとって、デンソーはその想いを形にできる場所です。今回のような発信を通じて、同じ志を持った仲間を増やしていきたいと思っています。

      クルマの電動化やSDV(Software Defined Vehicle)化が進む中で、半導体の価値はますます高まっています。社会課題に直結する技術領域だからこそ、最先端の開発に携わりながら、自分自身も成長できる──そんな環境を、これからも整えていきたいです。

      ※ 記載内容は2025年10月時点のものです

      ASIC技術部の吉田、梶本、黒﨑がオフィスで笑顔で立っている様子

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      執筆:talentbook 撮影:talentbook

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