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ミライズテクノロジーズ パワーエレクトロニクス研究開発部門 室長長里 喜隆Yoshitaka Nagasato
ミライズテクノロジーズのパワーエレクトロニクス研究開発部門の室長として約20名をマネジメントし、GaNパワーデバイス研究開発を推進。産学連携に積極的に取り組みながら、2023年より名古屋大学特任教授を兼務。低損失・低コスト・低CO2のモビリティの電動化に向けて尽力している。
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ミライズテクノロジーズ パワーエレクトロニクス研究開発部門 担当係長徳田 祥典Yoshinori Tokuda
電子デバイスや半導体メモリの製造プロセス研究開発に長年従事した後、2024年にデンソーへ転職し、ミライズテクノロジーズへ出向。担当業務はGaNウエハのレーザースライス技術開発。高価なGaNウエハの基板再生技術により、パワーデバイスの低コスト化とCO2排出量削減の実現に取り組んでいる。
トヨタ自動車とデンソーの技術を結集し、未来のモビリティ社会を支える半導体研究を担うミライズテクノロジーズ。中でも、次世代パワー半導体として期待される「GaN(窒化ガリウム)」は、電動化加速のカギとなります。先進領域で活躍する長里 喜隆と徳田 祥典が、挑戦のリアルとその先の未来への想いを語ります。
この記事の目次
社会的使命を胸に──ミライズテクノロジーズの研究開発体制
──ミライズテクノロジーズの設立背景を教えてください。
長里:クルマの電動化や知能化の進展により車載半導体の重要性が高まる中、トヨタ自動車とデンソーは両社の知見を結集し、開発を加速するために、2020年にミライズテクノロジーズを設立しました。
CASE(コネクテッド、自動化、シェアリング&サービス、電動化)に象徴されるモビリティ社会の変革に対応すべく、その中核を担うパワーエレクトロニクス、センサー、SoCの3領域において、車載半導体の研究および先行開発を推進しています。
──トヨタ自動車とデンソーの連携は、どのような形で行われているのでしょうか?
長里:パワーエレクトロニクスの分野では、ミライズテクノロジーズ設立以前から、トヨタ自動車とデンソーが共同開発を行うなど、密接な連携がありました。現在では、共同研究を進めてきたメンバーも含めて、同じ会社の仲間として、共通の目標に向かって取り組んでいます。
ミライズテクノロジーズは、両社から研究委託を受けており、定期的な報告会や技術レビューなどを通じて、密な情報共有を行っています。
──ミライズテクノロジーズの特徴を教えてください。
長里:ミライズテクノロジーズには、主に3つの特徴があります。まず1つめは、材料開発から製品化直前までを一貫して手がけることができる「垂直統合型」の開発体制です。これにより、技術の深堀りと迅速なフィードバックが可能となっています。
2つめは、未来を見据えた長期的な視点で研究テーマに取り組めることです。SiC(炭化ケイ素)をはじめ、GaN(窒化ガリウム)、酸化ガリウム、さらにはダイヤモンドなど、次世代半導体材料の探索にも積極的に関与しています。
そして3つめは、日本の自動車産業を代表する企業としての「社会的な役割と期待」を担っていることです。SoC領域では、自動車・電装部品・半導体メーカー12社とともに研究開発を行うASRA(自動車用先端SoC技術研究組合)に参画し、最先端技術の実用化をめざしています。
また、パワーエレクトロニクス分野では、世界的な学会であるISPSD(パワーデバイスと集積回路技術に関する国際会議)やPCIM(パワーエレクトロニクスに特化した国際的な展示会)においてパワーデバイスや駆動回路の研究成果が受賞されるなど、社外からも高い評価を受けています。こうした誇りと責任を胸に、私たちは未来のモビリティ社会を支える技術開発に取り組んでいます。
GaNパワーデバイスの社会実装に挑む、研究者の情熱
──所属している組織について教えてください。
長里:私たちが所属するパワーエレクトロニクスの研究開発部門のミッションは、トヨタ自動車とデンソーが培ってきた半導体材料や製造技術を活かし、CASEに対応可能な革新的な半導体をいち早く開発・実現することです。
また、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するため、次世代パワー半導体に関する材料・加工・デバイス・プロセス技術の研究開発にも取り組んでいます。
──お二人は、どのようなキャリアを歩んできましたか?
長里:私は、半導体工学分野で博士課程を修了後、トヨタ自動車に入社しました。自動運転の実現に不可欠な「壊れない半導体」を自分の手で実現したいという想いが原点です。
現在は、学生時代の研究も活かして、トヨタ自動車とデンソーの技術を結集したミライズ テクノロジーズで、GaNパワーデバイスの研究開発に従事しています。名古屋大学との共同研究や特任教授としての活動を通じて、アカデミアと産業界の橋渡し役を担いながら、これまで培ってきたGaN技術を社会実装へとつなげる挑戦を続けています。
多様な専門家が集い、長期的な視点で研究開発に取り組めるこの環境こそが、ミライズテクノロジーズならではの魅力だと感じています。
徳田:私は、他社での材料系や半導体メモリの研究開発を経て、「新しい価値を創造し、より社会に貢献できる中長期的な研究開発に携わりたい」という想いから転職しました。
とくにモビリティ分野が大きな転換期を迎える中で、半導体技術が果たせる役割は非常に多岐にわたると感じました。ミライズテクノロジーズでは、デバイスがどのように使われクルマに搭載されるのかという、最終製品を意識しながら開発できる点に魅力を感じています。
──現在、どのような研究開発に取り組んでいますか?
長里:GaNパワーデバイスの研究開発室長として、チーム全体を統括しています。GaNは高効率で高耐圧という特性を持ち、電力変換ロスを大幅に削減できる可能性があります。すでに青色発光ダイオードの材料として世の中に普及していますが、さらに実用化が進めば、電気自動車の航続距離延伸やCO₂削減にも直結する技術です。
そうした未来を描きながら、大学との共同研究、社内の評価・試作メンバーとの連携を通じて、開発を進推しています。
徳田:GaNパワーデバイスの量産化におけるボトルネックの1つが、非常に高価なGaNウエハのコストです。私はその課題を解決するため、「基板再生技術」の研究開発を担当しています。
GaNウエハを再利用できれば、1枚のウエハを複数回使えるようになり、環境負荷低減につながります。ただし、再生プロセスの条件次第でデバイスの特性や、リサイクル性がまったく変わるため、毎回の実験が未知の挑戦です。「この現象は世界で誰も経験していないかもしれない」と思う瞬間に、研究者としての喜びを感じます。
「人に感謝される仕事」を実感した瞬間──心に残る業務エピソード
──これまでの業務で、とくに印象に残っているエピソードを教えてください。
徳田:ウエハ再生技術で初めてウエハ全面の再生に成功した瞬間です。私が入社する前から、チームが長年挑んできた課題でした。この成功は、将来的なウエハの大口径化を見据えたプロセス構築の第一歩になりました。
取り組みにあたって、私たちは前任者たちの積み重ねをベースに、課題や成果をできる限り定量データで共有し、チームで議論を重ねることを徹底しました。そしてついに成功した時、プロジェクトリーダーが「感動してこっそり泣いてしまった」と教えてくれたんです。
「人に感謝される仕事がしたい」という想いで転職してきたので、その言葉は本当に嬉しかったですね。これまでは一人で研究を抱え込むことが多かったのですが、ミライズテクノロジーズに来て、チームで一つの目標に向かうことの楽しさをあらためて実感しました。
長里:私は名古屋大学との共同研究で、試作品デバイスの設計と評価をチームで担当した時のことが印象に残っています。著名な研究者である大学教授の先生と一緒に仕事ができること自体が非常にありがたいことでした。
さらに企業の強みであるスピード感とリソースを活かし、膨大な量の評価を定量的にまとめ、適切な考察を含めて報告した際に、「さすが企業の仕事だね」と褒めていただけたんです。
学術的にも何か発見したいという想いが強かったのですが、その一言でわれわれの強みはここにあるのだと明確に意識するようになりました。それ以来、連携先に対して自分たちが提供できる価値は何かを常に考え、共同研究に臨んでいます。
──仕事をする上で、大切にしている考え方はありますか?
長里:「なんのためにやっているのか」という目的意識です。研究開発にはトラブルがつきものですが、目の前の課題解決に必死になるあまり、本来の目的を見失ってしまうことがあります。マネージャーという立場だからこそ、一歩引いた視点で「その課題解決は、本当に最終目的につながっているか?」と、自分自身にもメンバーにも問いかけるようにしています。
徳田:私は「仕事をやり遂げた結果として、人から感謝されること」を大切にしています。自分の取り組みが世の中を少しでも良くすることにつながり、信頼や感謝を得られることに大きなやりがいを感じます。
そのために意識しているのは、仕事において誠実であること、そして本来の目的を見失わないことです。たとえ見失いそうになっても、その都度立ち返ることが重要だと考えています。
挑戦と協働が息づく──ミライズテクノロジーズの風土
──ミライズテクノロジーズの風土を教えてください。
長里:自分のためではなく「誰かのために動く」という意識が根付いていると感じます。テーマが違っていても、開発で困っているメンバーがいれば、部署の垣根を越えてサポートし合う。難しい課題に挑む研究者が多い分、失敗を恐れず次に活かそうという前向きな空気が自然と生まれています。
また、約10年前に一度棚上げされたテーマを環境や技術の変化を踏まえて再提案し、再び動かすことができた例もあります。「一度ダメでも、いつでも再挑戦できるよう準備しておこう」という、失敗を次の機会に変える文化があります。
徳田:異なる知見を持つ研究者同士が刺激し合うことで、新しいアイデアが生まれやすいことも魅力的ですよね。企業風土の違いに馴染めるか不安でしたが、問題解決の手法など共通の考え方が浸透しているので議論がしやすく、キャリア入社した当初から積極的に発言をすることができました。データを軸にしているため、根拠が明確であれば、従来と異なるやり方も柔軟に受け入れてもらえます。
長里:こうした風土は、「世界のモビリティに革新を与える半導体開発を行い、未来をもっと進化・向上させる」という明確なビジョンがあるからこそ生まれています。経営層が方針を示し、全員が共有することで、研究者一人ひとりが挑戦できる環境が整っています。
徳田:クルマに乗った時のお客さまのうれしさを常に考える文化も魅力です。世界を変えるという強い意気込みを持てることが、大きなやりがいにつながっています。
──今後どのようなメンバーと、どんなことを成し遂げたいですか?
徳田:社会をより良くしたいという志を持つ仲間と、GaNパワーデバイスの量産化を実現したいです。そして、車載用途への普及を通じて、クルマでの移動時間が学びの場になるなど、移動の時間をより有意義なものとすることを通じて、より豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。
長里:難しい課題に対して前向きに挑戦できる方と共に、今のプロジェクトを成功させ、自分たちの技術が搭載されたクルマが世に出る喜びをチーム全員で分かち合いたいです。
私の夢は、「事故のない社会」を実現することと、「誰かの夢になるような仕事」をすること。クルマは、多くの人にとって今や欠かせないもの。そして、「あのクルマに乗りたい」という夢そのものになりうる存在でもあります。
だからこそ、安心・安全なクルマを届けるべく、私たちは品質に一切妥協しません。この責任を理解した上で、多くの人に乗ってもらえるクルマを私たちの技術で実現していきたいですね。
※ 記載内容は2025年9月時点のものです
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