未来を見据えて挑む。SoC研究開発で切り拓くモビリティの新時代

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    • ミライズテクノロジーズ SoC研究開発部 部長岩城 隆雄Takao Iwaki

      1997年にデンソー入社。先端技術研究所で圧力センサ、ジャイロセンサなど多様な半導体センサの研究開発や事業化を推進。2016年に技術企画部に異動。全社R&D戦略やスタートアップ連携を担当後、ミライズテクノロジーズ設立を牽引。SoC研究組織をゼロから立ち上げ、2021年、SoC研究開発部 部長に就任。

    • ミライズテクノロジーズ SoC研究開発部 担当係長平井 雅尊Masataka Hirai

      知能ロボティクス分野の博士号取得後、2014年にデンソー入社。燃料電池車システム、ロボティクス、産業用ドローンの研究開発と新事業開発し、試作開発部門を経験。2022年よりミライズテクノロジーズへ出向。量子インスパイアードコンピュータを用いて、混雑環境における自動運転や自律移動ロボットの研究を推進。

    • ミライズテクノロジーズ SoC研究開発部 担当西 悠貴Yuki Nishi

      前職で回路設計、運転シミュレータ開発、車載通信用半導体チップ開発に従事。2025年にデンソーへ入社し、ミライズテクノロジーズへ出向。自動駐車システムの研究開発を担当。自動駐車システムの核となる画像認識アルゴリズムの高速化検討を推進している。

    • ミライズテクノロジーズ SoC研究開発部 室長田辺 淳Jun Tanabe

      総合電機メーカーにてコンフィグラブルなメディアプロセッサの開発を担当した後、車載用やゲーム用のSoC開発に従事。2021年にデンソーへ入社し、ミライズテクノロジーズへ出向。室長としてSoCの企画・開発を担当。車載システムに最適な半導体チップの仕様策定や開発を推進している。

    トヨタ自動車とデンソーの技術を結集し、未来のモビリティ社会を支える半導体研究を担うミライズテクノロジーズ。SoC研究開発部は、次世代モビリティの頭脳となる車載SoCの研究開発に取り組んでいます。チップレット技術とAI最適化を武器に、国内外の研究機関・企業との協業を通じ「日本発で世界に勝つSoC」の実現に挑む4人の想いに迫りました。

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      未来のクルマを動かす車載SoC開発を牽引。次世代自動車技術の戦略推進に向けて

      インタビューに答える岩城部長

      ──ミライズテクノロジーズのSoC研究開発部について教えてください。

      岩城:クルマの電動化や知能化の進展により車載半導体の重要性が高まる中、トヨタ自動車とデンソーは両社の知見を結集し、開発を加速するために、2020年にミライズテクノロジーズを設立しました。

      立ち上げ当初から「パワー半導体」「センサー」「SoC(System on Chip)」の3領域を重点テーマとして掲げています。これら3つが、次世代のモビリティを支えるコアテクノロジーになると考えたからです。

      パワー半導体とセンサーについては、トヨタ自動車とデンソーに既存の専門チームがあり、その知見を継承する形でスタートしました。一方、SoC研究開発部はクルマの知能化が急速に進む中で、将来の競争力を左右する重要領域と位置づけ、新たに立ち上げた部門です。

      当時、トヨタグループの一部車両では汎用SoCを活用して自動運転開発を進めていましたが、設計の自由度や最適化の面で多くの制約がありました。そこで、「本当に必要なSoCを自ら定義し、設計できる体制をつくろう」という構想が生まれたのです。

      SoC開発は、5〜10年先の車載システムを見据えて仕様を描く、非常にチャレンジングな領域です。SoC研究開発部は、トヨタ自動車とデンソーの中間に位置するポジションを活かし、グループ全体の未来を先回りして設計提案することをミッションに掲げ、活動を進めています。

      ──SoC研究開発部の体制についても教えてください。

      田辺:SoC研究開発部は、SoC開発室・SoC研究室・SoC先行研究室の3つの組織で構成されています。

      SoC開発室は、車両が市場に出る5〜6年前をターゲットに、次世代車両に求められるSoC要件を明確化する役割を担っています。テストチップの開発や先端SoCのベンチマーク評価を通じて、将来の車載システムに最適なアーキテクチャを検討することが主な役割です。

      SoC研究室では、開発室が描いた将来像を実現するための基盤技術の研究を行っています。たとえば、AIアルゴリズムのSoC最適実装や専用ハードウェアIPの開発、メモリアーキテクチャの効率化など、車載向けSoCの性能と信頼性の両立をめざした技術検証が中心です。

      SoC先行研究室は、さらに長期的な視点で5〜15年先の車載SoCに搭載される可能性のある最先端技術を探索する"フロンティア部門"です。量子コンピューティングのエッセンスを応用した量子インスパイアードコンピュータなど、先端テーマについて実現可能性を事前に調査・検討し、将来技術の芽を見極めています。

      この3部門が有機的に連携し、短期・中期・長期の技術ロードマップを統合的に策定し、それを実現する技術を創り上げていくことで、未来を見据えたSoC開発の精度とスピードを高めています。

      各研究機関・企業との協業を積極推進。最先端技術の実装と新たな価値創出をめざす

      窓辺で立ち話をする岩城、田辺、西、平井の4名

      ──社外パートナーとの協業や取り組みにはどのようなものがありますか?

      平井:トヨタグループ内外の企業や研究機関と連携し、共同研究や情報共有を積極的に進めています。代表的な取り組みとしては、国内自動車メーカー・Tier 1サプライヤー(※)・半導体関連企業で構成される「ASRA(自動車用先端SoC技術研究組合)」、大学や国内主要企業が参加する「RaaS(先端システム技術研究組合)」です。

      ※ 自動車メーカーに直接部品やシステムを供給する、一次請けのメーカー

      私自身は、大手総合電機メーカーと共同で、量子コンピュータのロボティクス応用に取り組んでいます。異なる分野の知見を融合することで、新たな成果も生まれつつあり、大きな手ごたえを感じています。

      西:私は現在、当社が開発する自動駐車システムの実装に向け、デンソーおよびグループ会社と密に連携しながら開発を進めています。また、IT・AI分野の最先端技術を活用し、事業の課題を解決へ導く役割を担うグループ内の「デンソーアイティーラボラトリ」に客員研究員として参加し、AI開発の知見を深める機会を得ています。

      最近では、インド出身のメンバーがチームに加わり、多様な視点を取り入れたグローバル開発が進んでいます。今後も海外人財の積極採用を進め、国際的な協業の幅を広げていく方針です。

      ──SoC研究開発部で研究開発に取り組むやりがいを教えてください。

      平井:私はもともと知能ロボティクスを専門としていましたが、最先端技術の進化スピードに追いつくには、半導体への深い理解が不可欠だと感じ、SoC研究開発部へキャリアシフトしました。

      この部署では、先進半導体技術を自動運転やロボティクス領域にどう実装・展開できるかを徹底的に検証できます。新しい技術を吸収し、それを社外に向けて発信できる──その両方ができる環境に、やりがいを感じています。

      西:私が転職を決めた理由は、技術者としてのスキルアップでした。SoC研究開発部では、研究開発を通じて新しい技術や知識を習得でき、自分のスキルが確実に向上している実感があります。日々の成長が、次の挑戦へのモチベーションにつながっています。

      多彩な専門家と共創できる環境で成長を実感。多様な知を融合し、新たな技術を形に

      会議室で考え込む西

      ──ミライズテクノロジーズで得られる経験について教えてください。

      西:自分の手で技術を形にできる実感──これは、ミライズテクノロジーズならではの魅力だと感じています。外部委託が中心の環境では、開発の手ざわりを感じにくいこともありますが、ここでは自ら手を動かし、試行錯誤しながら技術を磨ける環境があります。

      入社後には、初めてAI開発に携わる機会を得ることができました。また、客員研究員としてグループ会社の知見に触れられる環境もあり、技術の幅を広げるチャンスが豊富にあります。

      平井:SoC研究開発部では、半導体の専門家として社外から採用されたメンバーと、半導体を活用する立場で経験を積んできたメンバーが共存しています。

      異なるバックグラウンドを持つ技術者同士が議論を交わすことで、クロスドメインな知の融合が生まれ、確かなシナジーを感じています。

      ──社内の雰囲気や働く環境について、どのように感じていますか?

      西:働きやすさと成長機会の両立ができる環境だと感じています。多様な企業・分野から集まったメンバーと共に働くことで、幅広い知見や考え方に触れられ、日々新しい学びがあります。若手でも「挑戦したい」と手を挙げれば、積極的に任せてもらえる風土があり、成果に対してもきちんと評価してもらえるのが心強いです。

      風通しの良さも大きな特徴です。部署を超えた交流が日常的に行われており、役員との定期面談など、上司との距離の近さを実感できる機会も多いです。これまでさまざまな職場を経験してきましたが、ここは本当に貴重な環境だと感じています。

      平井:さらに、東京という立地も大きなメリットです。関連企業や協業先、大学などのアカデミック機関が近く、必要に応じてすぐに対面で打ち合わせができます。セミナーや展示会にも気軽に参加でき、最新技術の情報収集がしやすいのも、研究開発を進める上で大きなアドバンテージになっています。

      ──お二人のキャリア展望を聞かせてください。

      平井:現代のクルマやロボット、AI、そしてそれらを支えるソフトウェア開発は、高性能な半導体と切り離せない関係にあります。私は、半導体の深い理解と応用力を備え、複雑な技術領域を統合できるエンジニアをめざしています。

      現在は、組み込み型量子コンピューティングと自律移動ロボットの統合研究に取り組んでおり、世界初の成果に手が届きそうな段階まで来ています。今後も、先行研究を通じて新しい技術の芽を育てていきたいと考えています。

      西:私はまず、AI関連のソフトウェア開発の専門性を高めることを目標にしています。将来的には、SoC関連のソフトウェア、さらにはハードウェアの設計や検証まで幅広く担えるエンジニアへとステップアップしたいと考えています。

      当社には、各分野の第一線で活躍している優秀なメンバーが多く在籍しており、その知見や技術を吸収しながら、開発全体をリードできる存在になることをめざしています。

      チップレットとAIで切り拓く車載半導体の新時代。技術力で世界を牽引する存在へ

      ノートパソコンを前にインタビューに答える田辺室長

      ──SoC研究開発部として今後注力していく技術領域は?

      田辺:将来の車載SoCを支える鍵のひとつが「チップレット技術」です。コンパクトカーからラグジュアリーカーまで、車種によって求められるAI性能は大きく異なります。そのすべてに個別のSoCを開発するのは現実的ではありません。

      そこで注目されているのが、複数の小型チップをブロックのように組み合わせるチップレット構成です。これにより、必要な性能や機能に応じて柔軟に構成を最適化でき、開発効率とスケーラビリティの両立が可能になります。

      ただし、異なるベンダー間での接続を実現するには、インターフェースの標準化が不可欠です。当社は2023年の発足時からASRAに参画しており、今後も業界横断で車載チップレットの技術開発と標準化に取り組み、オープンなエコシステムの構築をめざしています。

      最終的には、「SoCといえばミライズテクノロジーズ」と認知されるような技術リーダーシップを確立したいと考えています。

      岩城:チップレット技術が業界全体で合わせて進めるべき「協調領域」だとすれば、当社が独自の強みを発揮できる「競争領域」はAI技術です。

      AIは自動運転の"頭脳"とも言える存在で、認識・判断・制御を一貫して担う重要な役割を果たします。サーバー環境で進化してきた最先端AIを、アルゴリズムの性能を維持したまま、小型の車載SoC上で機能安全を担保しつつリアルタイムに動作させるには、AIとSoCの両面を深く理解した高度な実装技術が不可欠です。

      ミライズテクノロジーズは、設立からの5年間でその基盤を着実に磨き上げてきました。今後は、自動運転時代を見据え、次世代AIを車載SoCに最適化する研究開発をさらに加速させていきます。

      ──その実現に向けた取り組み、想いについて教えてください。

      田辺:私たちの使命は、将来のモビリティ像をいち早く、そして正確に描き、最適なSoCを提案していくことです。SoCの開発はスケールが大きく、政府や国内外の研究機関、自動車産業、半導体企業などとのクロスボーダー連携が不可欠です。

      同時に、組織としての競争力強化も重要です。当社ではこれまでSoCの各領域で経験を積んだトップエンジニアを迎え入れ、若手が実践的に最先端技術を吸収できる環境を整備してきました。

      さらに、トヨタグループへの出向や、海外の研究機関・企業への派遣などを通じて、グローバル水準の知見を身につける機会も積極的に提供しています。これらの取り組みを進化させ、技術と人財の両輪で成長し続ける組織づくりをめざしています。

      岩城:日本の半導体シェアは世界市場で10%を下回っています。しかし、自動車分野における日本メーカーの存在感は依然として大きい。だからこそ、車載領域は"日本の半導体再興のラストフロンティア"だと考えています。

      私たちの目標は、「日本発で世界に勝てるSoC」を実現すること。トヨタグループを、SoCを核とした技術でモビリティの価値を創出するリーディングプレイヤーへと成長させ、その過程で日本の半導体産業をもう一度世界の舞台へ押し上げたい──そんな強い想いを持っています。

      SoCはクルマの頭脳であり、心臓です。そのコア技術を自分たちの手でつくり上げたい──そんな高い志を持つエンジニアと共に、未来に挑戦していきたいと考えています。

      ※ 記載内容は2025年10月時点のものです

      ホワイトボードのSoCアーキテクチャ図を前に説明する平井と聞く西

      キャリア・生き方

      執筆:talentbook 撮影:talentbook

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