デンソー本社のミツバチたち、最近どうしてる?

地域との新たな取り組みを聞いてきた

デンソー本社の屋上で、ミツバチを飼育しているって知っていましたか?

デンソーでは2015年から「みつばちプロジェクト」に取り組んでいます。2011年の国連環境計画(UNEP)報告書によると、ミツバチは「世界に供給される食料の90%を占める100種類の作物種のうち、70種以上を受粉させている」と言います。

「みつばちプロジェクト」は、そんな暮らしに欠かせないミツバチの飼育を通じて、周辺環境の変化を感じ、その体験・体感を活かした教育・啓発活動を行い、緑化活動への理解促進や地域活性化を高める活動。

プロジェクトの開始から8年が経ち、ミツバチの群れは4群から6群、その数も20万匹となりました。ミツバチの成長とともにプロジェクト自体も拡大。飼育にとどまらず、地域の商店街とのコラボレーションや地元小学生向けの環境啓発活動など広がりをみせています。

現在、取り組みを率いるのは総務部の長谷川茂夫さん。もともとミツバチの飼育について「全く無知だった」ところから学びと実践を重ねてきました。

今回は、長谷川さんのもとを訪れ、最近の「みつばちプロジェクト」の様子や長谷川さん自身の気づき、プロジェクトの展望を聞きます。

この記事の目次

    ミツバチの健気な姿に感動。ゼロから生態を学んだ日々

    長谷川さんは、2021年度から「みつばちプロジェクト」に関わり、2022年度から本格的にプロジェクトに携わるようになりました。

    初めの頃は、ミツバチを見ても「元気なのか、病気になっていないか、とにかくわからない」状態だったそう。

    プロジェクトの立ち上げ時から携わっているボランティアや養蜂業者の方々の力を借りながら、少しずつミツバチについて学んでいきました。ときには近隣のはちみつ屋に出向いて養蜂場の様子を見学させて頂くこともあったそうです。

    ミツバチの生態や養蜂について理解が深まっていくにつれ、ミツバチたちの健気な姿に感銘を受ける瞬間も増えたと、長谷川さんは教えてくれました。

    はちみつの採取を行う長谷川さんの様子

    長谷川さん「働きバチは、たった30日の寿命のうち、最後の10日間で半径2km範囲の蜜源を1日数10回往復、生涯で数100回往復します。あの小さい身体で飛んで、せっせと蜜と花粉を集めるんです。

    さらに仲間と協力して、羽で風を送って蜜の糖度を上げ、80度くらいになると今度はミツロウ(蜜でできた物質)を出して蜜の蓋をします。こうした一つひとつ決まった作業を協力して行うんです。その頑張る姿にはいつも感動させられます」

    仲間とともに頑張る姿に励まされると話す長谷川さん。ご自身も飼育ボランティアの“仲間”と一緒に、ミツバチの巣箱の内検やはちみつの採取といった作業を行っています。
    プロジェクトアドバイザーのデンソーOB深川正浩さんと屋上で巣箱の内検を行う様子

    取材では、ボランティアを5年続けていらっしゃる江坂仁美さんにも、そのやりがいについてお話を聞くことができました。ボランティアメンバーは、通常、お昼休みを利用して参加してますが、この日、江坂さんはデンソーのボランティア休暇制度を取得して参加していました。

    ※ボランティア休暇制度は2021年10月に制定されて以降、毎年多くの社員が社会貢献のために取得しています。

    新しいボランティアメンバーに採取の作業を説明する江坂さん 写真:右

    江坂さん「もともと私は山や自然が大好きで、環境問題やものづくりに関心があり飼育ボランティアメンバーになりました。ミツバチ1匹が生涯をかけて生産するはちみつの量は、わずかティースプーン1杯。実際に飼育から採蜜までの工程に関わる事で、1滴も無駄にしてはいけないと食の大切さを感じています。そして、何よりも働き続けるミツバチを見守ると、「Don't think! Feel.(感じるままに生きよ!)」といつも自分が励まされているようなそんな気がするんですよね。」

    採蜜したサステナハニー

    ミツバチたちが運んでくれた、地域との新しい関わり

    ボランティアの方々の協力も得ながら続いてきた「みつばちプロジェクト」。2021年度からは地域での活動に一層力を入れています。

    もともと本社の位置する愛知県刈谷市の刈谷駅前商店街にて、花植え活動や清掃・防犯活動の「花と蝶のパトロール」に参加していました。

    そこから商店街の方々と話が盛り上がり、デンソー本社で採取したはちみつ「サステナハニー」を使った料理コンテストを共催したり、刈谷駅前周辺のマルシェイベントでサステナハニーのブースを出店したり。地域とのつながりが増えていきました。

    マルシェイベントに出店した際の様子

    また、地域の小学校との活動の縁で、養蜂場の見学も受け入れたそう。長谷川さんは「ミツバチを窓越しに食い入るように見る姿、説明や質問コーナーで一生懸命にメモをとる姿が印象的でした」と振り返ります。

    長谷川さん「最初は怖がる子もいるのですが、ミツバチは私たちの環境や暮らしに欠かせない生き物なんだよと、力を込めて伝えるようにしています。なかなか普段の生活でミツバチに近づこうとすることはないと思うので、『大切な生き物なのだとわかった』という感想をもらえると、とても嬉しいですね」

    ミツバチを見つめる地域の小学校の子どもたち

    小学生以外にも、SDGs活動として養蜂に関心を寄せる企業や「都市養蜂と地域イノベーション」という講義を行う名城大学の学生など、地域の多様な人々が見学に訪れているそうです。

    本社の屋上から生まれる、一人ひとりの小さな行動変容

    今後も地域と協働してプロジェクトを育てていきたいと語る長谷川さん。刈谷市とはサステナハニー関連商品を使った新たな動きとしてふるさと納税返礼品への登録を進めています。

    「認定NPO法人 パンドラの会」とのコラボ商品のマドレーヌ

    さらに名城大学と、都市養蜂においてデンソーの技術を用いて分蜂(蜂が新たな群れや巣を形成すること)の兆候を把握することができないかと新たな取り組みを始めているそうです。

    長谷川さん「今後は、より気軽に地域の方が見学できるショールームのような場所に整えていきたいと思っています。地域で『サステナハニー』と出会って、デンソーの活動を知って、『実際にどうやって育てているの?』と興味を持ってくれたら嬉しい限りですね。

    あとは、プロジェクトを通して、デンソー社員一人ひとりの社会貢献活動への参加も促していきたいと考えています。ミツバチが群れになって世界中の食糧を支えているように。私たちも一人ひとりの小さな積み重ねによって、社会の変化に貢献していける。一見壮大な話ですが、私はそう信じています。その一歩目を『みつばちプロジェクト』が後押ししていけたらと思っています」

    本社で育ったミツバチたちがつなぐ新たな出会いや関わり。それらはデンソー本社の屋上を飛び出して、地域全体へと変化のきっかけを運んでくれるはずです。

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    https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/project/honeybees_2/

    ・デンソーが2015年から取り組む「みつばちプロジェクト」では、デンソー本社の屋上におけるミツバチを飼育し、現在ではミツバチの群れが4群から6群、20万匹に増加。

    ・飼育だけではなく、環境教育や地域活性化にも取り組んでいる。地域の商店街では、デンソー本社で採取したはちみつ「サステナハニー」を使った料理コンテストを共催、刈谷駅前周辺のマルシェイベントではサステナハニーのブースを出店、地域とのつながりが増えている

    ・今後は、サステナハニー関連商品を刈谷市のふるさと納税返礼品に登録したり、名城大学との都市養蜂技術の開発に取り組んだりと活動を拡大させていく

    「できてない」 を 「できる」に。
    知と人が集まる場所。