第3章(2011~2021年) 能力の向上を通じてデンソーに対するパートナー企業の信頼を強化

2. DIINが販社から多機能な地域統括拠点へと転換

(4) 市販の強化、サービスセンターの設立、およびインドのグループ企業をサポートするためのCQEおよびQC部門の設置

市販

デンソーは1990年のインド自動車市場への参入初期段階で、アフターマーケット(AM)領域の基礎を築いた。SRF-ND工場(現・DNIN<デンソー・インド>)に地域担当課長(TM)3人を常駐させたデンソーは、デリーの正規販売ディーラー(ASD)を通じて、マルチ社、ヒンドゥスタン・モーターズ社、プレミアオートモービルズ社向けにアフターマーケット製品の販売を開始した。アフターマーケット製品のラインナップには、オルタネーター、スタータモーター、ワイパーモーターとリンク、ラジエータファンアセンブリが網羅されていた。

アフターマーケット営業チームは年を追うごとに拠点を拡大し、プネ、チェンナイ、コルカタ、コーチンなどの主要都市に進出した。アフターマーケット販売ディーラーのASDネットワークは全国に広がり、マルチ社ディーラーネットワークへの販売の屋台骨となった。2004年には転機が訪れ、輸入製品としてボルボ社向けバスエアコン(AC)事業が始まった。

2005年までにデンソーは、アフターマーケットの年間売上が1,000万ルピーを超える大きな節目を達成した。その後数年間で、点火プラグ、フィルター、マイクロリレー、ホーンなどによってアフターマーケット製品のラインナップが拡大し、市販におけるデンソーの地位はさらに確固たるものとなった。

しかし2012年には方向性の転換があった。マルチ・スズキ・インディア社ディーラー管理システム(DMS)の導入に伴い、デンソーはマルチ・スズキ・インディア社ディーラーネットワークへのアフターマーケット製品の販売を停止し、ASDネットワークのみに重点を移すことになった。同時に、競合メーカーが市バスセグメントに参入したことで、バスAC事業がいくつもの課題に直面した。

2017年、DIIN(デンソー・インターナショナル・インド)は二輪車セキュリティシステム「DOKO」のサービス活動を立ち上げて、これをスタートさせた。効果的なコミュニケーションの必要性を認識したDIINは、インドの整備士が直面する言葉の壁に対処するために、取付手順の動画を作成した。

インドを代表するアフターマーケット企業TASL社(三菱パートナー企業)とDIIN AMが手を組んだ2020年は、大きな節目となった。この戦略的提携の目的は、TASLの広範なネットワークを生かしたアフターマーケットの拡販であった。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によってもたらされた環境の変化を受け入れたDIINは、TASL社とともに、その巨大な小売店・ワークショップネットワークを生かしたeコマースアプリの開発に着手した。

2022年からはTASLのeコマースネットワークを通じた販売が開始され、変化を続ける市場に対するデンソーの適応性が示された。さらなる多様化を図るために、デンソーのアフターマーケットは非自動車事業向けソリューションとしてデンソーウェーブ(DNWA)QRコードのフィージビリティスタディを開始した。

デンソーのアフターマーケットがたどってきた道のりの進化は、市場変化への対応と持続的成長のための革新的ソリューションの採用で発揮された俊敏性を反映している。

カスタマーサービス
2012年11月2日-DIINサービスセンター開設
2012年11月2日-DIINサービスセンター開設

2004年、デンソー・インドは従来のEE(電気・電子)製品構成から転換してトヨタ自動車向けCRS(コモンレールシステム)などの最先端製品を投入し、変革の道のりを歩み始めた。この試みの目的は、強固なネットワークの構築、保証コストの最小化、ディーラーへの重要な診断サポートの提供を伴う、高まる顧客の期待に応えることだった。デンソーは、サービスディーラーネットワーク、現場における活動、粘り強い対策などの戦略的な取り組みを通じて、インドの自動車業界内でCRSの独自市場の開拓に成功した。

DIIN-インドサービスディーラー会議
DIIN-インドサービスディーラー会議
DIIN-サービスメンバー技術訓練プログラム
DIIN-サービスメンバー技術訓練プログラム

2012年はデンソーサービスセンターがオープンした節目の年となった。技術的専門知識のハブとして設計されたこのセンターは、基礎コースからエキスパートコースまで、CRSディーラー向け研修プログラムの開発に役立った。さらに2014年には費用対効果の高いソリューションを重視して、画期的なインジェクター修理プログラムが導入された。

視野を広げたデンソーは2012年にCRS事業の拡大を探求し、アショック・レイランド社、VECV社、ジョンディア社、カミンズ社などの現地カーメーカーと提携した。この試みに課題がなかったわけではなく、デンソーはCRSをよく知らないカーメーカーにこの技術の知識を伝えようとした。この戦略はデンソーサービスディーラーのスキルアップ、低コストのインジェクター修理、診断ツールの開発に結びついた。

2017年、デンソーは現地化をさらに進めることで、ネットワーク拡大と市場競争力のジレンマに対処した。「メイク・イン・インディア」イニシアチブを採用して低コストのインジェクター修理テストベンチ、特殊工具、診断装置を開発し、インジェクター修理ネットワークを45拠点に拡大した。この取り組みを通じて、インド市場におけるデンソーの足場が強化されただけでなく、さまざまな海外グループ会社に対するインド製インジェクターテストベンチの輸出が促進された。

2021年になると、デンソーは「Reborn 21」プロジェクトのもとで「事業としてのサービス」イニシアチブを掲げ、新たなフロンティアへと乗り出した。この革新的なアプローチの目的は、新たな価値を提供し、カーボンニュートラルと循環経済の世界的目標の実現に貢献することだった。このイニシアチブのもとで行われたプロジェクトとして、フリート事業向けテレマティクス・ソリューション、デンソー診断ツールのアップグレード、ワンストップサービス、電動化の取り組み、コールドチェーン事業、オンライン研修プログラムと電子監査によるデジタル化が挙げられる。

この道のりは、イノベーションに対するデンソーの献身的努力、知識の共有、そしてインドの自動車技術の未来を形作る上でデンソーが担う重要な役割の証しとして続いている。

CQEおよびQC

2010年から2014年にかけて、DIINは企業品質室を設置して変革の道のりを歩み始め、これが優れた品質への取り組みにおける大きな節目となった。この品質室の開設が、インド初のグローバル保証管理システム、GQNETの実現へとつながった。このシステムによって重要な情報の流れが強化され、保証に関わる問題に迅速かつ効果的に対処する能力が向上した。

その後の2015年から2018年にかけて、企業品質機能はさらに強化された。DIINでは、特に革新的国際多目的車(IMV)プロジェクト向けのトヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)社への拡販が急増した。より適切に顧客をサポートしてコミュニケーションを強化するために、TKM社に常駐技術者を配置して、より緊密な連携を促進した。品質委員会会議(QCM)の導入により、インドのグループ企業(IGC)間のシームレスなコミュニケーションが促進され、協調と継続的改善の文化が育まれた。

2019年から2020年には、環境の変化や規制の変更による独自の課題に直面した。DIINは厳格なトレーサビリティおよび汚染基準をクリアするとともに、政府が導入したリコール義務化政策にも対応した。こうしたさまざまな課題にもかかわらず企業品質室はレジリエンスを発揮し、グローバルなデンソーのルールに準拠するようにインドグループ会社を標準化するとともに、インドの顧客のリコールに効率的に対応した。

2021年と2022年には、DIINは自動車業界の変化、特に電動化へのシフトに合わせて変革を進めた。企業品質室はBEVとハイブリッド技術に関わる技術担当課長(TM)のスキルアップに焦点を合わせ、将来の発展のための基礎を築いた。さらに、トヨタ・キルロスカ・モーター社-スズキ提携のような顧客連携を支援するために、スマート早期検出・早期解決(EDER)ネットワークの構築に向けた取り組みも行った。

プロセス信頼性活動の強化と、すべての顧客を横断するEDER活動標準化を通じて、DIINは品質向上に対する揺るぎない努力を示した。