第1章 南米市場の開拓
1. NIPPONDENSO REFRIGERACOES LTDA.(NDB)の設立
(1) ブラジルプロジェクト始動
1960年代後半から急成長を始めたブラジルの自動車市場は、1970年代にモータリゼーションの時代を迎えた。1970年代初頭にフォルクスワーゲン社やアメリカのBig 3(GM社、クライスラー社(現・ステランティス社)、フォード社)などが進出する南米一の自動車生産国となり、1971年には自動車販売台数が50万台を超えた。カーエアコンの需要も急拡大の時期を迎える。
とはいえ、ブラジルは依然として未知の市場であった。1972年、当時の白井武明副社長が財界使節団に参加して現地を視察。さらに翌年5月、田辺守常務が「フォード・ブラジルがカーエアコンの現地調達を計画している」との情報をつかんだことで、ブラジル戦略はようやくスタートラインにつくことができた。
そこにロバート・ボッシュ社からジョイントベンチャー立ち上げの提案が舞い込んだ。両社はブラジルでのエアコン事業の展開を前提に合同調査を行うこととなり、1973年11月、デンソーから4人がブラジルに向かった。