第1章 南米市場の開拓

1. NIPPONDENSO REFRIGERACOES LTDA.(NDB)の設立

(4) 後付けエアコンビジネスへの挑戦

NDB従業員
NDB従業員

エアコンの主要構成部品であるコンプレッサー、エバポレーター、コンデンサーなど7品目は日本から輸入し、残りの部品を現地調達してキット化したものをカーディーラーなどへ販売する。これが、NDBが展開しようとしていた「後付けエアコンビジネス」で、販売第1号の年内実現を当初の目標に掲げた。
現地調達を支える現地部品メーカー、材料メーカー、機械メーカーなどについてはNDB設立に先立って調査済みであり、エアコンの図面もボッシュ社とともに作成したものがすでにあった。しかし、ジョイントベンチャー計画が白紙となっていたため、図面の借用についてはボッシュ社が難色を示した。
NDBはサンパウロ州中部カンピーナスのボッシュ・ブラジルを粘り強く訪れて交渉した結果、図面の複写については手書きでのトレースが許可された。そこで製図台の上に図面を置き、紙を重ね、手書きで複写を行った。ようやく入手した図面をもとに、デンソー本社の技術者の応援を得て試作品が完成すると、駐在員が通勤やショッピングに使用していた中古車に取り付けて走行テストに取りかかった。
1975年は冷夏で、地元サンパウロは耐熱や冷房能力を確認するテストが行えるほど暑くなかった。そこで1,000kmも北にあるマットグロッソやリオデジャネイロまで出向いてテストを実施した。
こうして完成したエアコンは、豊田通商ブラジルの社長車(フォード「ギャラクシー」)と、日系布団店アミノの社長車(クライスラー「ドッジダート」)に取り付けられた。それは1975年の大晦日で、辛くも販売第1号の年内実現を達成したのであった。