第3章 南米事業拡大期
2. ビジネスの多角化 [1]二輪・電子製品
(1) アマゾナス州マナウスのマグネト生産

アマゾナス州の首都マナウス市はブラジル北西部で最大の都市であるが、アマゾン熱帯雨林の中に位置するため空路あるいは水路以外に交通手段がなく、まさに陸の孤島である。1890年代から1910年代に天然ゴムの集散地として繁栄したが、ゴムの種子がイギリスに持ち出され、東南アジアのプランテーションで高品質かつ低コストでのゴム採取が行われるようになるとアマゾナス州は衰退の一途をたどり、過疎化が進展した。
1967年、ブラジル政府は、マナウスに税制優遇区域(マナウスフリーゾーン)を制定。衰退の一途をたどっていたマナウスへの産業誘致を開始した。今日、マナウスにはホンダ、ヤマハ、パナソニックなど約40の日系企業が進出を果たしている。
税制優遇区域制定の目的は以下の3点であった。
- 周辺国と国境を接するアマゾン流域の防衛強化
- 膨大な天然資源が眠る未開発のアマゾン流域の開発
- 輸入品から国産品へ代替するための国内産業の育成
1980年代初め、NDBCはホンダのブラジル二輪事業を担うモトホンダ・ダ・アマゾニア(以下、モトホンダ)からマグネトの生産・供給を求められた。しかし、税制恩典が適用されないNDBCではコストが合わなかった。そこでホンダはデンソーに生産ラインならびに90%のCKD部品を発注し、1982年にマナウスの自社工場内でマグネトの生産に踏み切った。その後も二輪市場の拡大とともにモトホンダは工場を拡張し、デンソーも新機種立ち上がりの都度、出張支援を実施している。