第3章 南米事業拡大期

1. サーマルビジネスの拡大

(7) MMCL社買収とDENSO SISTEMAS TERMICOS do BRASIL LTDA.(DTBR)設立

1999年の通貨危機で冷え込んだブラジル経済は、一次産品輸出の急増、そして中間層の拡大がもたらした堅調な消費需要により2000年代に急成長を遂げ、BRICsの一角として注目されるようになった。
自動車産業も回復が目覚ましく、ブラジルで最大の生産規模を誇るFCA社(イタリア フィアット社とアメリカ クライスラー社の合併により設立)はフィアットブランドおよびジープブランドのSUVやピックアップトラックのためにベッチン工場の生産能力を増強すると同時に、ペルナンブコ州ゴイアナに新工場を建設した。ペルナンブコ州はブラジル南東部の既存工場からは遠いが、臨海地域にあるため完成車の輸送などにメリットがあると判断したのである。
FCA社は新工場に新型車やプラットホーム開発の研究拠点を併設し、周辺に工業団地を形成して部品メーカーの進出を促した。ブラジル北東部は低所得地域であったため、州政府が用意した工場用地に工業集積を図り、税務恩典の制度も新設された。
これに呼応する形で、DTBRもペルナンブコ州FCAサプライヤーパーク内に進出。建屋をFCA社からレンタルして生産を行う形態を取った。しかし、もともと何もないところにつくられた工場団地であったことから、生活のインフラが不十分であった。その上、現地の人材は工場での生産経験に乏しかったため採用や育成にも苦労した。
その後、ペルナンブコ工場は継続的に生産能力を拡大し、新技術の導入を進めていく。現在ではHVACやECM、フロントエンドモジュールの生産・供給を行っている。