第3章 南米事業拡大期
1. サーマルビジネスの拡大
(6) NDBCベッチン工場をMMST社へ売却
すでに述べたように、NDBCはブラジルのベッチン工場でフィアット社向けのHVACを生産していたが、コンペの結果、「パリオ」向けの次期モデルをMMCL社が受注することとなった。
そこでMMCL社は1999年にブラジル子会社であるマニェティ・マレッリ・システマス・テルミコス・ド・ブラジル社(MMST社)を設立。翌2000年2月にはDNBRがMMST社にベッチン工場の賃借権を移譲、設備の一部を売却した。
これと並行して、MMST社は新工場の建設も模索していた。新規ビジネスとしてコックピットモジュールの生産を検討していたが、いくつかのクリアすべき課題があった。まず、レンタル工場にはHVACの組み付け設備のほかに射出成型機も導入されており、新しい設備が入らなかった。また、工場内に段差があり建屋の拡張が困難であること、建屋が二つに分かれていて不便なこと、さらに土地の造成には工場のオーナーの許可が必要、といった問題があった。
MMST社はベッチン市内に生産面積2万2,000㎡の自社工場を建設し、2001年よりHVACおよび樹脂成型部品の生産を開始した。そして、ちょうどその年にデンソーはMMCL社を買収し、ブラジルのMMST社もデンソーの傘下に入った。
デンソーとイタリアのMM社とは、1990年から包括契約を締結して10年間にわたって相互に協力してきた。2000年はまさに11年目で、見直しが必要な時期を迎えていた。そこで契約終了にあたり、デンソーはMM社からMMCL社を買収することにしたのである。2002年にMMST社はDENSO SISTEMAS TERMICOS do BRASIL LTDA.(DTBR)に名称を変更し、新工場も同社に引き継がれることとなった。