私を変えてくれたのは「一人で抱え込まず、人を信じて頼る」仕事観。

良いモノづくりは、周囲との共創によってもっと面白くなる

  • FVC事業推進部 所属岩井 綾子(いわい あやこ)

    大学時代は機械工学および生産システム工学を専攻。2002年に新卒でデンソーに入社後、生産技術部で生産ライン設計や産業用ロボットの要素技術開発に従事。2014年からロボティクス技術を活用した農業分野での事業企画に携わり、現在に至る。

モノづくりが好きでデンソーに入社した岩井 綾子。生産技術部で自動車部品の生産ライン設計や産業用ロボットの開発に携わった後、それらの知識を農業分野に応用するため現部署に異動。新分野への挑戦のために苦戦する日々。その中で感じた、仲間を信頼して頼ることの大切さについて語ります。

この記事の目次

    自分の好きなことと得意を磨くことは大切。でも、足りないものがある。

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    自分の世界に閉じず仲間を信頼して関わることって、自分の糧にもなりますし、何よりおもしろいんです。

    最初は何でも一人で頑張ろうとしましたが、うまくいきませんでした。そんな時、あるキッカケで仲間を頼ることが大切だと気付いたんです。

    仕事では未知の分野である農業を知るため、農業ハウスに通いつめ現場の農家の人に頼る。業務外活動ではイベント運営やボランティア支援のために、スタッフやボランティア仲間に頼る。

    自分のワクワクにしたがっていろんなことにのめりこみ、仲間と一緒に取り組むうちに、知識も興味もできることも、もっともっと広がるように感じました。

    "自分でできる" と思っていたらキャパオーバーになってしまった

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    小さいころからモノづくりやロボットが大好きで、鉄腕アトムに夢あこがれ、自分もいつかこんな世界を創れる人間になりたいと思っていました。大人になってもその気持ちは変わらず、大学ではロボットの研究に携わりました。

    デンソーに入社して最初の配属先は、工場の生産ラインの設計などを行う部署です。その後農業ロボットの開発に関わるまでの12年間は、デンソーの最先端のモノづくりの現場で働いていました。

    また、元々いろんなことに興味を持つ質(たち)で、会社生活でも、本業の傍ら、おもしろそうだな―と思う活動には結構顔を出していましたね。

    その活動のうちの一つで、"夢卵:ムーラン" という会社主催のモノづくりアイデアコンテストがあって、そのイベントの運営サブリーダー役をやったことがあったんです。

    (夢卵はデンソーのたくさんの有志チームが出場して斬新なアイデアの作品を形にし、発表・コンテストをする場です。モノづくりのお祭りみたいなイベントでおもしろいですよ)

    当時運営チームのメンバーが忙しくて作業が追いついていない時、困っていたのを見た私は「やるよ、やるよ」と言ってなんでも自分で引き受けていました。

    有志の活動なのでメンバーに無理を言えなかったのと、自分が良い人に見られたかったのもあり、自分の力でやれそうだと思ったものをつい引き受けてしまったんです。

    ついには全部それらを一人で抱え込んでしまって。結局、作業をやり切れずにパンクしてしまいました。

    その時は叱られましたねー(笑)。悔しかったですよ。泣き明かしたりもしました。

    結局できないのなら、自分だけで抱え込むのではなくて、「人を信じて頼る」ことも大切なんだなと身をもって気づかされましたね。

    一緒に作る、がうまくいったとき。

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    その後、積み重ねたノウハウを自動車以外の分野に生かすために、農業分野の新事業を企画する部署に異動しました。

    夢卵のイベントで出会った発明名人の川崎さんに、農業分野のロボット活用について相談に行ったことが異動のきっかけの一つでしたね。

    農業はデンソーが今までやってきた自動車とは全く違う領域です。もちろんわからないことだらけでしたが、不安よりも、今まで知らなかったことを知れるというワクワク感の方が大きかったです。

    農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)や種苗を扱うパートナー企業の研究所に行ってリサーチするときも、はじめは専門知識に圧倒されましたが、話を聞くうちに、「こんな風になっているんだ」と知れる嬉しさが大きかったですね。

    そんな想いを持ちながら、トマトの収穫ロボットを企画、開発する仕事に携わったんですが、最初の試作はひどくて、トマトをつかむことすらできませんでした(笑)。

    農家の方の「デンソーさんなら何かをやってくれるでしょう」という期待感が大きく、それに知識やバックグラウンドが追いつかない自分にやきもきした時期もありました。

    どのようにロボットを動かせば収穫できるのかを考えるために、事前にトマトの実のつき方の法則性を文献で調べて臨みました。しかし、いざ農場に行ってみると、実の位置がバラバラだったり、均一な実のつき方でなかったりと文献通りにはいかず、現場ならではの事情があって苦戦しましたね。

    自動車と違ってトマトは生き物ですから、今までの経験をもとに考えた、こうなんじゃないかという予想はあまり通じませんでした。

    一人で試行錯誤するだけではうまくいかないなと思い、研究文献を手に何回も農家さんのところに通って会話して、試作品を何度も持ち込みました。

    「あなたの意見が聞きたいんです」、「一緒に協力してほしいんです」と。

    そんな風にやっていたら、ここはロボットで頑張ろう、じゃあここは栽培方法を工夫してみようと、お互いを頼って歩み寄れる関係になれたんです。プロジェクトの途中、飲み会のコミュニケーションで意気投合したっていうのもあるかもしれませんね(笑)。

    自動車部品製造の分野で技術を積み重ねてきたんだというプライドは捨て、お互いに持っているものを出し合って一緒に良いモノを作ることに集中しました。

    そうして農家の方と一緒に開発していくうちに、このロボットの形・動きならいけるんじゃないか、という落としどころをようやく見つけることができました。

    人と関わって、自分にはない広がりを感じることっておもしろい!

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    一人で集中してがつがつやるのも大事ですが、自分一人の力でやれることって少ないと思うんです。

    これは農業分野に携わって感じた事なのですが、かつての大量生産・競争社会のように、相手にいかに勝つかを考えるのではなく、共に信頼して協力して共創していかないと今は良いモノが出来ないと思います。

    今でも私は全然自分一人だけではできないと思っています。

    「いつもごめんね、ありがとうね」と人に頼みごとをすることが多いです。

    昔に比べると、人の得意を見極めてお願いすることが上手くなったのかもしれませんね(笑)。本当にいつも周りに助けられています。

    それに会社って、一人で作業だけをする場じゃないと思っていて。これだけいろんな部署があっていろんな考えを持った人がいて、その人たちと関わりながら純粋に知識が広がるのが本当に楽しいんです。

    また、黙っていられない質(たち)でもあるので、仕事中も相手が迷惑でなければ、よく会話をするんですよね。雑談であることもありますが、その中にも意外とアイデアが隠れていたりしてすごくおもしろいと思います。

    人と関わること、私は結構大事にしていますね。

    【あとがき】

    今までとは違う領域へも挑戦し、新たな価値を生み出していかなくてはいけない時代。個人としても会社としても、他者・他社と協力することが求められています。

    新しいことに挑戦する中で、謙虚さを持ちながら仲間と協力し、良いものを生み出そうとする岩井の姿勢に、変化の激しいこの時代を前向きに生きる、ヒントが隠されているのかもしれません。

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