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近年、情報処理技術の進展に伴い、仮想空間上(Cyber)のAIがさまざまな情報の最適化を行い、現実社会(Physical)をより効率的にする流れが拡がってきています。技術は益々進展し、より人に寄り添うように進化・発展していくでしょう。
デンソーは、より安心で地球環境に優しく、さらに人がもつ創造性を最大化するようなCyberとPhysicalを融合させたSystem(Cyber Physical System)を提供することで、「幸福循環社会」の実現を目指しています。
この記事の目次
循環型社会の実現に向けて“価値を連鎖させる”ためのデータ流通基盤づくりの部隊を新設
2023年、人流・物流・エネルギー流・資源流・データ流の「5つの流れ」を事業領域とする社会イノベーション事業開発統括部を設立。「幸福循環社会」の実現を目指し、複数の事業開発を進めています。
社会イノベーション事業開発統括部では、事業ごとにチームが分かれて活動しています。2024年1月、それぞれの事業をCPSの視点で横断的にサポートする組織として「デジタルソリューション事業開発室 CPSソフトウェア基盤開発課(以下、CPS課)」を設立しました。
CPS課はIT目線から各事業開発の要件定義の牽引とITシステム運用をバックエンド側で支える役割を担っており、「ハードウェアとソフトウェアを融合させたシステム開発支援」や、「商品価値をお客様に体感いただくプロトタイプのスピーディーな制作」、「セキュリティ面・インフラ面など事業横断で考えるべき共通システムの基盤づくり」を行っています。
そんなCPS課を立ち上げた背景を、室長の箕浦 大祐は次のように語ります。
「各事業において個別最適のシステム開発を進めてしまうと、データ規格の整備やデータ解析の精度、セキュリティレベルの観点で事業ごとに差異が生まれてしまいます。今後、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーのように、さまざまな業界や事業者が協力して社会課題の解決と市場競争を両立するためには、データの共有・連携と囲い込みをうまく使い分ける必要があり、個別最適のシステムはボトルネックになってしまう恐れがあります。だからこそ、CPS課ではデータをうまく流通・共有させるための基盤づくりに取り組んでいるのです」(箕浦)
社会イノベーション事業開発統括部が目指しているのは、データがなめらかに流通し、社会に新たなる価値につながる仕組みをつくること。その大きな目標を達成するために、CPS課は重要な役割を担っています。
また、サーキュラーエコノミーのように新たに市場の再設計が必要となる場合、仲間づくりやエコシステムの形成から着手しなければいけません。その仲間づくりの際、データによるエビデンスを明確にしてパートナー企業の共感度を向上させることもCPS課の重要な活動です。検討の「現場」に赴き、要求探索や要件定義といった最上流からフロントに出て活動します。こうした「バックエンドを固める活動」と「フロントに打って出る活動」の双方を担う組織が、CPS課です。
さまざまなデンソーの技術を結集し、共通基盤の構築を進める
各事業開発に横断的に関わるCPS課はどのように業務推進しているのでしょうか。現在CPS課が注力しているのは、幹線中継輸送サービス「SLOC」と、電動車に搭載する電池を正しく診断して使い切るための電池診断サービス向けシステム開発です。
SLOCは、長距離輸送ドライバーの労働時間削減と、環境負荷の少ない輸送のあり方を自動提案する幹線中継輸送サービスです。複数の荷主や運送会社を横断して、配車と輸送ルートの最適化を図ります。具体的な開発内容を、CPS課 課長の島津 秀幸は次のように語ります。
現在、物流業界にはドライバーや運送会社、荷主企業などの多様な事業関係者が存在し、企業ごとに異なる業務運用システムが利用されています。幹線中継輸送を実現するためには、数多くの荷主や運送会社との調整、コンテナの最適な受け渡しタイミングの算出、輸送ルート・スケジュールの最適化や自動化を行う必要があります。
そのためには、リアルタイムで変化する交通状況や運送会社ごとのスケジュールなど、さまざまなデータの取得が必要です。そうしたデータを踏まえ、配送ルートに変更があった場合も自動でルートを再計算してくれるサービス開発に取り組むことで、SLOCの事業化をサポートしています」(島津)
また、CPS課が支援するもう一つのプロジェクト「電池診断サービス向けシステム開発」は、電動車の利用段階における車載電池の長寿命化や残存価値の向上と共に、電池再利用段階における街での蓄電池利用、再資源化など、電池を最後まで使い切るためのソリューションを提供します。具体的には、電池のクルマの走行状態と電池の状態をきめ細かくセンシングし、分析したデータを電池劣化予測モデルに載せて最適解を導出します。
こうした一連のソフトウェア開発において、デンソーがこれまで培ってきた技術やノウハウがどのように生きているのでしょうか。同じくCPS課の三角 凜は、その背景を次のように語ります。
「多様なデータの収集という観点において、デンソーがこれまで開発してきたセンサーや車載カメラなどの技術が生きています。例えばSLOCにおいては、センサーや車載カメラから取得されるデータを統合することで、荷崩れやドライバーの安全性を担保するための実証が始まっています。そうした実証や評価テストを精度高くできるという点にも、デンソーの強みがあると考えています」(三角)
私たちの仕事は、「幸せ」を生み出すための基盤づくり
「SLOC」や「電池診断サービス向けシステム開発」のプロジェクトでは関わる企業やステークホルダーが多く、それぞれの事業開発だけでも非常に大きなチャレンジです。個別事業チームをしっかり支援しながら、それらを横串で捉え、部内共通のシステム基盤へと昇華させ、セキュリティ、アーキテクチャ、データベース、クラウド等の設計・運用を、全体最適の視点で行える仕組みに落とし込むことが目標です。
「デンソーが掲げる『幸福循環社会』の実現を考えたときに、さまざまな社内の事業ドメインを超えて、人々の『幸せ』が連鎖していく社会をつくっていくことが重要であると考えています。しかし、将来『幸せ』につながるかもしれないデータやシステムがいつでも利活用できる環境が整っていないと、価値提供のチャンスを逃すこととなります。我々が進めている共通基盤開発は、まさに『幸せを生み出すための基盤づくり』であると言っても過言ではないでしょう」(島津)
社会イノベーション事業開発統括部傘下のいくつかのプロジェクトは、すでにシステムの構築や開発が進んでいます。そうした状況も踏まえながら、共通システム基盤の実現に向けて、業務課題の整理やアーキテクチャの構想を深めています。まだ道半ばではありますが、実現に向けてのプロセスについて島津は次のように語ります。
「とことん現場目線、お客様目線でいることを、何よりも大切にしています。システム構築において、これまで人間が行ってきた業務をそのままシステムに置き換えると、うまく現場が回らないケースがよくあります。我々の主観でシステムをつくって押し付けるのではなく、事業チームと一緒に何度も現場に足を運んだり、お客様の声を聞いてすぐにプロトタイプに落とし込んだりしながら、最適なソリューションを提供していきたいと思っています」(島津)
「できてない」 を 「できる」に。
知と人が集まる場所。