「触れてはいけない」とされた半導体インフラの省エネに、どう踏み込んだのか

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    超純水をつくる高圧ポンプの間欠運転、創業以来変わらなかった冷却水圧の工場規格の見直し——。デンソー幸田製作所のウエハ2工場が取り組んだのは、製品品質に直結するがゆえに改善の手が入りにくかった「2次側インフラ」の省エネです。この取り組みが評価され、2025年度省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。ウエハ製造部としては通算3回目の受賞となります。

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      半導体工場のエネルギーはどこに使われているのか

      ウエハ製造部について

      ウエハ製造部は、クルマの安全・安心・利便性を支える半導体製品の母体となるIC(Integrated Circuit)ウエハの生産を担っています。国内5拠点で年間11.9億チップを生産しており、クリーンルームの空調、化学薬品の供給・処理装置、洗浄用の超純水の生成装置など、インフラ設備は多岐にわたります。

      クリーンルームの稼働を1日でも止めると、生産可能なレベルに戻すまでに約1カ月。パーティクル(サブミクロンレベルの微粒子)や温度・湿度のわずかな変動が歩留まりに直結するため、工場規格は厳格に管理されています。

      排水を生産に利用<改善ハードルの高さ>

      こうした制約のもと、純水の処理工程など(1次側インフラ)ではインバーター化や間欠運転の導入によって過去10年間で約40%のエネルギー削減を実現してきました。しかし、生成した水が製品に直接触れる2次側インフラは、水質管理が最優先とされ、これまで改善の対象になりにくい領域でした。

      カーボンニュートラルを進めるうえで、この2次側をどう変えるか。今回のプロジェクトは、そこから始まっています。

      排水を生産に利用<高圧ポンプについて>

      9割の水はすでに基準を満たしていた

      ウエハ2工場では1日約2,000tの水を使用します。半導体の生産工程の約3割を占める洗浄工程で使われるのは、工業用水から不純物を限りなく排除した超純水です。

      超純水の生成工程で全体の52%の電力を消費していたのが、ろ過膜装置へ水を送り込む高圧ポンプでした。逆浸透膜に高い水圧をかけて処理水のみを通す仕組みですが、水質を調べたところ、ろ過膜装置の入口時点で約9割の水がすでに超純水基準を満たしていることがわかりました。

      であれば、基準を満たしている水はろ過膜装置を通さず、基準値を下回る場合のみ高圧ポンプを稼働させればよいのではないか。ただし、超純水工程で水の流れを止めるとバクテリアが増殖するため、間欠運転は業界では避けられてきた手法でした。

      排水を生産に利用<超純水工程での課題>

      そこでチームが採用した方式は、ろ過膜装置の入口に有機物測定器を設置し、水質を常時モニタリングするものです。基準値内であれば排水も処理水と合わせて使用し、基準値を下回った場合のみ高圧ポンプを通す。水の流れ自体は止めないまま、ポンプのエネルギー消費だけを減らす設計です。

      排水を生産に利用<間欠運転という試み>

      設備メーカーと共同でろ過膜装置の実験機を製作し、切り替えテストを100回実施。有機物の発生や水量に問題がないことを確認し、実機導入に至りました。

      工場規格の「前提」を疑う

      2つ目の改善は、冷却水の供給圧力に関するものです。

      ナノレベルの加工を行う半導体製造では、わずかな温度変化も品質に直結します。多くの製造装置は冷却水を循環させて温度を制御しており、供給圧力は工場規格として厳密に管理されてきました。改善前の規格は0.35〜0.45MPa、供給圧力は0.40MPaです。

      冷却水圧を下げることができればポンプの電力削減と冷却水使用量の低減につながります。しかし、この規格は本当に現在の供給圧力値を必要としているのか。

      調べてみると、冷却水の供給先である検査装置は、水圧の値ではなく排気温度を基準に稼働しており、排気温度が一定以上になると自動停止する仕様でした。検査装置が正常に稼働できる水圧の下限は、工場規格の前提とは別のところにあったのです。

      計算と実機テストの結果、0.30MPaまでの減圧が可能であることが判明。インフラ設備管理を担う施設保全課を中心に、生産課、生産技術、設備保全課が連携し、創業以来一度も変更されていなかった工場規格を見直しました。製品品質を担保したまま、投資ゼロで年間35tのCO₂削減を実現しています。

      冷却水圧で工場企画を変える

      100台の検査装置を一度に切り替える

      施設内で微笑む平河

      今回のプロジェクトを推進した平河壮磨は、2つの改善に共通する難しさをこう語ります。

      「施設保全課はインフラ設備管理のプロではありますが、工場内の生産設備や工程については知見がありません。今回の改善は、生産技術、生産課、設備保全課、設備メーカーと総智・総力で取り組めたからこそ成し遂げられたと思います」
      (平河)

      特に冷却水圧の変更では、半導体工場の特性上、検査装置1台ずつの段階的な導入はかなわず、工場内100台以上の全検査装置の供給水圧を一度に変更する必要がありました。ウエハの生産には数カ月を要するため、冷却に不具合が生じればその間の生産分すべてに影響が及びます。データの収集と検証、シミュレーションを繰り返し、関係者との議論を重ねたうえでの判断でした。

      「今回の活動で得た知見を活かし、CAE(Computer Aided Engineering)解析などの技術も取り入れながら、2次側インフラのさらなる改善を進めていきたい。すでにデンソー岩手との共有会も始めていますが、他工場や設備メーカーなど社外も巻き込みながら、カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでいきたいと考えています」
      (平河)

      1次側で積み上げてきた改善の実績と、2次側への踏み込みで得た手法。その知見がグループ内外に広がることで、半導体工場の省エネは次のフェーズに入ります。

      ビジョン・アイデア

      執筆:DENSO 撮影:DENSO

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