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モビリティエレクトロニクス事業グループ ソフトウェア改革推進室矢野健三
1984年にデンソーに入社後、パワートレイン用電子制御ユニットの企画・先行開発・量産設計に従事。2010年よりドイツアーヘン研究所へ出向し、欧州電子領域および欧州技術全体を統括。2018年よりエレクトロニクス事業部ボデー領域担当、2020年よりデンソーグループのソフトウェア改革推進を担当。
新たなモビリティ社会の実現に向け、デンソーが進めているソフトウェア改革とはなにか——。株式会社デンソーが主催する「DENSO Tech Links Tokyo #13」で、ソフト改革推進室の矢野が、デンソーが目指す姿をどのようにソフトウェア改革で作り込んでいくかをご紹介しました。
この記事の目次
デンソーが推進するソフトウェア改革の全体像
まず皆さんに見ていただきたい映像があります。こちらをご覧ください。
いかがでしたでしょうか? この動画は、デザイン部と一緒に新しいモビリティ社会、デンソーがイメージする姿を描いたものです。身近に将来のモビリティ社会のうれしさを感じていただけたのではないでしょうか。
最初に私から、デンソーがソフトウェア改革で目指す姿をどのように作り込んでいくかについて、少々硬めの話から入ります。徐々に柔らかく楽しい話になりますので、最後までリラックスして聞いていただければと思います。
アジェンダとしては、1つ目に、自動車産業、業界におけるCASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)の潮流における私たちの環境認識をお話しします。2つ目に、CASE時代に向けて、デンソーはどのような役割を果たしていくのか。最後に、ソフトウェア改革の全体像についてお話しします。
自動車業界における潮流
まず取り巻く環境認識として、この4つの象限があります。左側の車両OEM。いわゆる老舗の車両OEMです。その下にあるのがTier1。私たちと同じ業界のボッシュさんの事例を書いています。
右側は新しい流れ、クルマの新潮流。特にテスラのニュースもたくさん流れていますね。急激に企業価値を高めている、そのようなトレンドです。それからIT業界。ITジャイアント、世界中のITプレイヤーが、クルマ(業界)にも参入してきています。
特に2つ目の車両OEMとの連携については、例えばITプレイヤーがソフトウェアを企画してサービスを考え、クルマ作りそのものはTier1としてのOEMが行い、供給するような新しいスキームも出てくるのではないかと思っています。
CASEの変化によって、クルマがモビリティ社会と繋がりIT業界が得意なサービス・データの領域を活かして参入しやすくなっているので、様々な変化が加速してくると思っています。
もう1つはCASEの「E」であるEVです。これも従来の内燃機関に比べると、部品点数が大幅に少なくなりますし、クルマを作るという意味では、ハードルがとても下がっています。
EV導入促進に向けて、世界各国の方針、インセンティブ、補助金などの支援策が報道されています。日本でも、2022年4月からEVの補助金が倍増するという報道がありました。
私たちは、こういったことが世界中で起きている一方で、業界構造、社会基盤がすっかり変わってしまうという、非常にインパクトのある影響が出てくるのではと考えています。急激には来ないだろうと思うものの、見えないところで確実に色々な地殻変動が起きている。いつ大きな激震が走るかわからないということです。
そのため、そういった時代に向けて、私たちも着実に将来に向けた役割を定義してしっかり構えていかなければならない。そんな問題意識を持っています。
「モノの提供からサービスへ」ということで、この図の横軸は価値提供者を示しており、自動車業界から始まり、IT業界・サービス業界、公共・インフラと広がっています。また、縦軸で示している価値の源泉がいわゆるハードウェア、リアルなものから、“コト”と呼んでいるソフト・サイバーの世界になってきます。
そうすると、これまで私たちが自動車業界で70年間、創業以来培ってきた個人所有車の価値を届けるというピンクの世界から、水色の世界に一気に広がってきます。
こうした新しい世界はMaaSと表現されるように、クルマの移動がサービスに進化し、さらに新しい価値を生み出すといった環境認識を持ちながら、この後の話を聞いていただければと思います。
CASE時代におけるデンソーの役割
デンソーの大義は、環境と安心を提供し笑顔あふれる社会を創っていくことです。(スライドを指して)この図は、先ほどの動画にもありました様々なシーンのユーザー価値を表現したものです。
ここで表現されているモビリティ社会の領域にも、デンソーは着々と仕掛けていますが、肝心のクルマはどうなるのか。これはまだまだ進化を遂げます。インテリジェント化も進み、CASEのC、Connectedで繋がることによって、一気に社会と繋がっていきます。
そうしたモビリティ社会のネットワークの中では、クルマがセンサー、アクチュエータを備えた一つのノードになっていくと考えることもできるわけです。このような世界観で、私たちは自動車業界のTier1という立場から、モビリティ社会のTier1を目指していきます。
私たちはモビリティ社会のTier1として、クルマで培った確かな技術と品質マインドで安心できる社会基盤を作り、クルマの中を、いかなる時も正しく動くようインテグレートすること、クルマとクルマ、お客さまであるOEMとOEMを繋ぎ安心感を生みだすこと。
また、クルマと社会の中で、色々な人たちがボーダーレスにオーケストレーションという階層で繋げることを確かな技術、品質、基盤で支えていきます。このような考え方が、私たちの目指すべき姿であると思っています。
デンソーのソフトウェア改革の流れ
最後のパートでは、私たちが目指す姿に向かいどのような改革をしていくかという全体像を説明します。
まず、手前味噌な話で恐縮ですが、私たちは70年間メカニカルなクルマのシステムから始まり、エレクトロニクスについても50年の歴史があります。私たちが新入社員だった頃から、エレクトロニクスがどんどんクルマの中に入り込んできていました。
後に、マイコンが搭載され、その時期に私は入社してソフトウェアを開発していたわけですが、マイコンの組み込みソフトウェアが40年に亘りエレクトロニクスの進化を支えてきました。
ソフトウェアもどんどん大規模になり複雑になるので、(スライドを指して)右にある「クルマ×クラウド連携システム」の開発を今盛んにやっていますし、合わせて進めている人材開発の取り組みの一端を今日ご紹介します。
動画にもありましたが、世界中のお客さまと苦労を共にして、数々の苦難を乗り越え信頼関係を築き上げてきました。これも私たちの資産だと思っているので、今後さらに磨きをかけ、ネットワークを広げていきたいと考えています。
この図はクルマの進化を3つのフェーズで表しています。左側がエレクトロニクスの導入以来、さまざまなドメインでクルマの電子化を支えてきたシングルドメインの世界ですが、今まさに真ん中から右の世界に移ろうとしています。
いわゆる統合系の頭脳ECUや、自動運転のような世界もそうですが、様々なドメインを越える、協調制御、クロスドメインコンピューターも導入されてきています。
さらに、図の右の世界になると、クルマと社会を繋ぐ、インフラ・公共まで含めたドメインに広がっていくので、ここはクルマの知見に加えてITの知見、OEMとのつながりに加えて、多種多様な業界とのネットワーク。これらをしっかり拡張領域で強化していくことが重要だと思っています。
そうした強みとチャレンジポイントをしっかり認識しながら、目指すべき姿を描いてみました。お客さまとともに、OEMに加え最終のエンドユーザー、そしてエンドユーザーとしての私たちも含め、「どのような価値・利便性を得たいのか」そういったことを正しく、深く理解するとともに、エンジニアのプロの集団としてユーザーに求められる価値を作り込む必要があります。
そのため、私たち自身がさらに腕を磨き、デンソーグループ全体のパワーを大きくしていくことで前述した世界を目指していきたいと思っています。
また実際には様々な社会課題があるので、自社の技術に加え、いろいろなプレイヤーの方々とパートナーシップを発揮して、多面的な問題解決能力を手に入れ、それぞれの社会課題をしっかり理解しながら、解決に向けて邁進していきたいと思っています。
この実現に向け、デンソーのグループ内では事業、組織、技術、人材、風土といった5つの柱で、改革の方向性をしっかり定義しながら、実行しているところです。
私のパートは以上で終わりにします。ありがとうございました。
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