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株式会社デンソー 上席執行幹部
Chief Software Officer(CSwO)
ソフトウェア統括部長
ソフトウェア改革統括室長林田 篤
デンソーでは、ソフトウェアエンジニアが画像処理、AI、クラウドなどのIT技術を駆使し、クルマづくりに取り組んでいます。デンソーの取り組みや技術活用の舞台裏を語る【DENSO Tech Night】第一回は、車載ソフトウェアにおける取り組み、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の実現、生成AI活用の事例などを語りました。
車載ソフトウェアにおける デンソーの『これまで』と『これから』
最初に登壇したのは、携帯電話やナビゲーションシステムなどの大規模ソフトウェア、コックピットシステムの開発を経て、現在はデンソーグループ全体のソフトウェアを統括する林田篤です。
デンソーでは、40年以上前から車載全領域のソフトウェア開発に取り組んでおり、世界でも数少ない全領域に臨んでいるTier1になります。自身のソフトウェアエンジニアのキャリアと重なるデンソーのこれまでの歩みを林田は語りました。
一方で、デンソーがこれからソフトウェアで実現したい未来についても述べました。これまで長きにわたり培ってきたモビリティ領域のソフトウェア技術を、幅広い産業や社会に展開することで、多くの人々の幸せに貢献していくことです。
パートナーとの関係性も変化しています。従来のピラミッド型の受注・発注者との関係性や位置づけではなく、「仕入先も納入先も含め、一緒になって新たな価値を共創していきたい」と、林田は力強く語りました。

自動車業界には事故や渋滞、物流問題といった課題に加え、燃費など、環境も伴う社会課題がさまざまあります。これらの社会課題を解決するためにはSDV(Software Defined Vehicle)化による機能統合が必要であり、「今後ますますソフトウェアの重要性は向上していく」と、林田は語ります。
実際、統合ECU(Electronic Control Unit)の世界市場ならびに、自動車で使われるソフトウェアコードの桁数のこれからの予測を提示しました。航空機のソフトウェアコードの行数が約1億桁であることを示し、2030年までには、6億桁にまで増加すると予測される車載ソフトウェアの重要性を繰り返しました。

デンソーが描く未来を実現するには、これまで培ってきた以下のスライドの中央赤枠、In-Car領域の技術をベースとしながら、そのままでは自動車で使うことは難しいIT技術を車載ソフトとして活用する「界面」の技術に注力することが重要だと林田は強調します。また、「界面を含むIn-Car領域の技術を活用する人材も重要です」と、続けました。

このような考えからデンソーでは、ソフトウェア人材の育成にも注力しています。
キャリアイノベーションプログラムという名称で進めており、そのプログラムのひとつである「リカレントプログラム」は、リスキリングを通じて優れた人材育成を進めている企業や団体に贈られる「日経リスキリングアワード2024」においては、企業・団体総合部門の最優秀賞を受賞しています。
また、ソフトウェア技術のエコシステムを構築することで、開発時間の削減などを通じて、業界全体にも貢献しています。
人材育成についても同様です。組織や業界の枠を超え、大学や省庁での学びや育成など、社会全体でソフトウェア技術者育成のエコシステムを構築していく。その中心、象徴となるのが優れたソフトウェアエンジニアを認定する「SOMRIE™認定制度」です。
業界の枠を超えて通じる普遍的な認定制度を設けることで、ソフトウェア技術者の学びに対するモチベーションをアップさせます。さらには人材が官学も含め横断し、さまざまなキャリアパスを経験することで、より優秀なソフトウェア人材に成長することを目指しています。

実際、デンソーはサプライヤーとして唯一、自動車に関するソフトウェア技術の標準化などを目指す組織、JASPAR(Japan Automotive Software Platform and Architecture)の幹事会社として参画しており、現場の立場から積極的に発言しています。
「このようなさまざまな活動に取り組みながら、世の中、社会に貢献したいと思っています」。林田は改めてこのように述べ、ファーストセッションを締めました。

※役職などは2024/9/13講演当時のものです
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