「水素」をつくる機器の開発が切り拓く未来。

向かうべき未来を思い出すことが、仕事を面白くする。

仕事がバリバリできる憧れのあの人も、仕事中にはちょっと近寄りがたいあの人も、一歩オフサイトに出て、様々な壁を取りのぞいて話をしはじめると、すごく悩んでいたり、ピュアな願いが見えてきたりするもの。

社員インタビュー「実現力リレートーク」では、リラックスダイアログを通じて、多彩なプロフェッショナルたちの仕事の根幹にある原動力やwill(夢・志)に迫ります。

今回ご登場いただくのは、高温水蒸気から高効率に水素を作るための機器「SOEC(固体酸化物形電解セル)」システム(以下「SOECシステム」)の製品企画・制御開発に取り組む、中島 登志久さんです。

「”水素をつくる”ことに携わるのは、私にとって全く未知の領域、初めての挑戦でした」

インタビュー開始早々、意外な経歴を話してくれた中島さん。部署の新設に伴い、これまでとは全く違う新しい分野での挑戦がスタートしたと言います。

「もちろん苦労もありました。でも失敗も不安もプラスに転換して楽しみたい」

「心が折れそうなときは、向かうべき未来を思い出します。そうすれば今やっていることとのつながりが見えてくるかもしれない。無駄なことは、ないと思うんです」

目の前のことに真摯に向き合いながらも、結果に一喜一憂しない。
ただ目指すべき先を見据えて、今日も一つひとつ積み上げていく。

瞳の奥で静かに燃える情熱には、どんな逆境でも折れない信念がありました。

思わぬ環境の変化や困難が行く手を阻むとき。
どうすれば、ふたたび歩み出せるのか。

中島さんが大事にする考え方には、“どんなときでも仕事を面白くするヒント”が、たくさん詰まっていました。彼が一歩一歩、切り拓いてきた道のりに耳を傾けてみましょう。

この記事の目次

    「水素」をつくる機器の開発に、情熱を注ぐ。

    ───まず最初に、中島さんが取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

    中島:SOECシステムの企画構想から制御設計・製作まで、幅広い業務を担当しています。具体的な動かし方につながるエンジニアリングの部分はもちろん、プロジェクト全体を俯瞰しながらシステム制御開発を進行するチームリーダーの役割も担っています。

    ───水素は、カーボンニュートラルを実現するための鍵として世界中で注目されていますよね。中島さんが手がけるSOECシステムの開発が進むことによって、私たちの生活はどのように変化していくのでしょうか。

    中島:そうですね。「水素」と聞くと、日常生活には縁遠いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも将来的に身近なエネルギーが水素に変わっていく可能性は、十分にあると思います。
    例えば、火力発電やクルマの燃料が、CO₂を排出しない「グリーン水素」※1に切り替われば、環境負荷が軽減されます。目に見えて生活に大きな影響はないかもしれませんが、結果的にエコな社会になっていく。そんな持続可能な社会の実現に向けて、SOECのシステム開発に力を注いでいます。

    ※1「グリーン水素」:再生可能エネルギー由来の電力によって生み出され、製造工程においてもCO₂を排出しない水素。

    右も左も分からなかった、“水素をつくる”分野への挑戦

    ───もともと中島さんは、水素に携わる仕事がしたいと思っていたのでしょうか?

    中島:実は自分から志願したわけではなかったんです。入社後はクルマの動力伝達(ギヤ・ベルト伝動)系のシミュレータの開発に従事していたため、“水素をつくる”ことへの挑戦は未知の領域でした。そのためまずは、基礎的な知識や技術を学ぶところからのスタートでしたね。

    ───今回は、部署の新設に伴う異動だったと伺いました。

    中島:そうなんです。自分たちの手で事業の新しい道筋をつくっていくフェーズでした。会社として大きな方針はあれど、具体的な事業内容は自分たちで考えなければならない。誰も正解がわからない中で、手探りで考える日々がしばらく続きましたね。

    ───苦しい時期だったかと思うのですが、どのように乗り越えたのでしょうか。

    中島:なるべく目の前の結果にとらわれ過ぎず、「目的地を見据える」ようにしていました。最初はどうしても地道な作業ばかりなんですよね。企画のラインナップをひたすら考えたり、コスト試算のためのプログラムを試作して計算を繰り返したり。

    様々な道を模索する日々の中で、「これって、やる意味あるのかな」「何も生み出してない、前に進んでいる気がしないけど、これでいいのかな」と何度も心が折れそうになる瞬間もありました。

    でも今やっていることが無駄かどうかは、ゴールにたどり着いた後にしか知り得ません。もしかしたら「あのときの苦労があったから成功した」と思えるかもしれない。意味がないと思っていた作業も、実は「成功のヒント」だったかもしれない。

    不安ばかりに目を向けず、目的地を見据えることで、「明日はこうしてみよう!」「次は、あれをやってみよう!」と逆境の中でも前を向くことができました。

    好奇心を持って、失敗からも吸収する

    ───なるほど...!捉え方一つで、モチベーションや心持ちが大きく変わってきますね。お話を伺っていると、物事をプラスに転換して逆境を乗り越えて来られらのだなと感じました。その原動力についても伺いたいです。

    中島:好奇心が旺盛で、新しいことにチャレンジするのが好きです。仕事・プライベート問わず、新しいことを吸収し続けることは、楽しみでもあり原動力になっています。水素についても、ゼロから学んでいく苦労はありましたが、興味を持って取り組むことができました。

    ───今回のような思いがけない環境の変化も、自分なりに楽しんでいらっしゃるのですね。

    中島:そうですね。ちょうどクルマ以外の他分野も面白そうだなと感じていたので、ある意味与えられたチャンスや機会をうまく活用できたのかなと。

    ───なるほど。

    中島:それに、たとえ失敗したとしても、“小さな収穫”は必ずあると思うんです。

    ・結果は出なかったけど、新しいやり方を発見できた。
    ・できなかったことが、できるようになった。
    ・次に気をつけるべき点が明確になった。

    こんなふうに見る角度を変えれば、プラスに転換していけます。手を動かしていれば、得るものはゼロではないはず。失敗も成功も踏みしめて、お客様から「ありがとう」と感謝の言葉をもらえたり、仲間同士でハイタッチしながら成功を喜べたり、そんな景色を見るために日々自分を成長させていきたい。苦い経験からでも何かを得ようとする姿勢が、後々大きな成果を生むと信じています。

    過去の学びが、現在の糧に

    ───中島さんが大事にされている価値観が浮き彫りになる素敵なエピソードですね。ちなみに現在の業務の中で、大切にしていること・心がけていることはありますか?

    中島:どの工程においてもまずは、「本当にそれは、お客様が必要としているのか?」という視点を意識するようにしています。新規事業においては、企画や製品開発、システム制御など、様々な角度から全体を俯瞰して見る必要があります。

    大事なのは、お客様のニーズを汲み取り、それに合わせた商品を提供すること。お客様がSOECシステムを、なぜ、いつ必要なのか、どのような使い方をしたいのか。その視点を忘れずにいられたらいいなと思いますね。

    ───これまで強く意識していなかった「お客様目線」も、現在のお仕事では大事になってくるのですね。

    中島:今の業務に携わる前までは、研究開発や機械シミュレーション・設計といった、ソフトや図面中心の業務ばかりで、技術を重視しすぎるあまり、試作製造部門に「つくれないものを設計するな」と跳ね返されてしまったこともあって。結局その後、修正に多くの時間を費やしてしまいました。今でもまだまだ完璧ではないので、部長から「それは本当に、お客様のニーズを汲み取れているのか」という問いやフィードバックをもらいながら、日々試行錯誤を繰り返しています。

    ───失敗を経て、一つずつご自身をアップデートされているのですね。

    中島:おかげさまで、だんだんお客様目線を意識した思考回路や会議での発言・議論もできるようになってきて、手応えも感じ始めています。

    Will(夢・志)への一歩は、今と未来のつながりを見つけること

    ───失敗も成功も吸収して、これまでの経験がすべて現在の中島さんを形成しているのですね。最後に、そんな中島さんが描くWill(夢・志)についてもお聞かせください。

    中島:今や世界中でカーボンニュートラルの推進が求められ、エネルギーの大転換期に直面しています。その中で「水素」が、パラダイムシフトを起こす鍵になり得るかもしれない。水素を通じて世界の脱炭素化に貢献し、人々の生活を豊かにするためにも、何としてでもSOECシステムの開発を進め社会に浸透させていきたいと思っています。

    ───世界を見据える大きな志。中島さんの意気込みを感じられて素敵です!一方で、「配属の部署が自分のやりたい分野と違った」「やりたいことはあるけど、それが今の仕事とつながっているのか不安」というケースから、なかなかWill(夢・志)を描くのが難しいという方もいらっしゃると思うのですが。

    中島:私もまさか、水素に携わるキャリアを歩むとは想像していなかったので、新しい環境や仕事内容への悩みや戸惑いは共感します。

    一つ私からアドバイスができるとしたら、「今自分がやっていることは、将来やりたいことと、どうつながるのかな?」と想像してみるのはどうでしょう。

    一見、つながりのないように見える業務も、技術・スキル・考え方など様々な面で、自分のやりたい分野との共通点があるかもしれません。

    「分野が違うから無理だ」と諦めず、「どうしたら応用できるかな?こんなふうに使えないかな?」と、アンテナを立てて自分なりにつながりを見出していくことも気持ちを保ち続ける上で重要だと思うんです。

    置かれた環境を活かしながら、考え方を転換したり、プラスに捉えたり、好奇心を持って学んでみたり。そうやって仕事を楽しみながら見つけるWill(夢・志)も素敵だと思いますね。

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