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デンソーのSOMRIE™(ソムリエ)認定制度でセキュリティスペシャリストに認定されている境目 真一郎。2018年にキャリア入社して以来、自社製品のセキュリティ品質を第三者の立場で評価・確認する仕事に携わっています。「セキュリティを共に楽しむ仲間を増やしたい」という言葉の裏側にある思いとは。
この記事の目次
自動車から農業用ロボットまで、セキュリティ品質を点検
──まず、今携わっている仕事について教えてください。
情報セキュリティ推進部 製品セキュリティ室にて、当社が製造する自動車に関係する製品やそれ以外の製品について、第三者の立場で出荷前にセキュリティ品質を評価・確認することが主な業務です。設計者がルールにもとづいてセキュリティを適切に織り込んでいるか、そのエビデンスをチェックしています。
自動車セキュリティは比較的新しい分野で品質の確認が難しく、世界中の専門家たちが議論を重ねた結果、設計段階からきちんと行われていることを保証しようという流れになりました。その後、ISO(国際標準化機構)の規格が策定され、各国で法整備が進められたんです。
──自動車以外で言えば、どんな製品を扱っていますか?
たとえばカーエアコンの故障予知システムや、農業用ロボットなど、実に多岐にわたります。農業用ロボットの場合、ロボット側とサーバー側の両方でセキュリティを確保する必要があります。
こういった仕事を進める中で難しいのは、悪意ある第三者の存在を常に意識しなければならないこと。通常の品質管理では、一度完璧な状態を達成すれば終わりですが、セキュリティの場合はそれを破る人が出てきます。なので、破られないような仕組みを考えながら、先手を打っていかなければなりません。
──その思いもあって、社内向けの教育や啓蒙活動に力を入れているんでしょうか?
はい。とくに設計者の教育が大事です。セキュリティの考え方や手順、社内ルールなどについて全社教育として講義したり、教育内容を随時更新したりしています。日々の業務の中でも、設計者とコミュニケーションをとりながらセキュリティの重要性を伝えていますね。
一方で、デンソーグループにおける製品セキュリティ戦略の立案も、私の大切な仕事です。数年前には「自動車のセキュリティは整備されてきたが、新ビジネス領域にはまだ課題がある」として、新しい方針を策定しました。セキュリティに関する世の中の事例を集め続けるなど、常にトレンドを把握しておくことが欠かせません。
知識の足りなさを痛感し、スキルアップへ5カ年計画
──セキュリティに関心を持ち始めたのはいつごろですか?
1社目のIT企業にいた2003年あたりで、主にエンタープライズ系システムの設計や開発に携わっていたころです。
当時は世間の人々がWebシステムを使い始めたころで、セキュリティよりも使いやすさが優先されがちでした。私は「もしかするとWebシステムは脆弱で、すぐに悪用される可能性があるかもしれない」と感じ、自ら開発したシステムを攻撃しながら、どこが弱くて強化しなければならないのかを検証し続けました。
「攻撃される前に、守る」。実現が技術的に困難であればあるほど、どうすれば実現できるかを考えるのが好きなタイプなんです。
──スキルを伸ばし、転職した2社目のIT企業では転機となる出来事があったそうですね。
そうなんです。世界規模のデータセンターで、24時間365日対応の大規模ITインフラアプリを担当していたのですが、ある日の未明、システムが急に止まったという連絡を受けました。
慌てて現地に駆けつけ、自分の知識を総動員して1時間ほど対応したものの立ち上げることができませんでした。しかし、共に進めていたコンサルタントに相談したところ、いとも簡単に解決したんです。
当時の私は、あらゆる障害に対応してきた経験から自信があり、たいていの問題は解決できると思いこんでいました。
ですが、「知らないことがまだまだいっぱいある」と痛感しました。
──そこから、何か行動を起こしたのですか?
40歳の自分を見据え、「スキルアップ5カ年計画」を立てたんです。一般的に40歳って、管理職や熟練エンジニアになる年齢。そのころには弱みを克服し、価値や能力を存分に表現できる自分でいようと、段階的な資格取得を決めました。
情報処理やセキュリティ関連の資格(情報処理安全確保支援士、CISSP、CEH、CHFI)のほか、ビジネス面での知識不足を補うために中小企業診断士の試験にも合格し、今では50種類以上の資格を持っています。
──成長をめざす中で、デンソーへの転職を考えたのはなぜですか?
セキュリティに関する勉強会にプライベートで参加した時に、デンソーの社員に出会ったのがきっかけでした。デンソーでは自動車セキュリティの部門が会社方針で立ち上がったばかりだと聞き、私のスキルを生かし、さらに成長できそうだと感じたんです。
「けん引役として人材育成に貢献を」とセキュリティスペシャリストを志望
──デンソーで一貫して製品セキュリティに携わる中、印象に残っていることは?
製品セキュリティの重要性を社内に浸透させようという、デンソー全体としての推進力がすごいと日々実感しています。
当社の幹部が以前、「セキュリティは品質そのもの」とコメントしていました。デンソーはそもそも品質の確保に注力していて、そこにセキュリティをうまく掛け合わせて社内に素早く浸透させようとしている点が、とても理想的だと思います。
──SOMRIE認定制度の話も聞かせてください。今持っているケイパビリティやレベルは?
セキュリティスペシャリストで、上から3番目のレベル5。社内の第一人者という位置づけですね。
──なぜSOMRIEをめざしたんですか?
製品セキュリティの重要性をデンソー全体に根づかせたい。そう考える中で、SOMRIEは人材育成の観点で親和性の高い制度だと感じ、自分がけん引役になりたいと思ったからです。
セキュリティはこれまで「一部の詳しい人だけのもの」という考え方が根強かったんですが、今は全員が取り組まないと前に進められない。だから、社内の底上げが必要なんです。
──SOMRIEの認定前後で、何か変化はありましたか?
その道に詳しい人として認められ、周囲からの信用度が高まったような気がします。また、セキュリティ活動に関心を持ち、私に声をかけてくれる人も増えました。
──いい流れが生まれていますね。この制度の魅力とは?
エンジニアとしてめざす姿がうまく形になっていて、認定された本人の知名度が上がり、活躍の場も広がりやすいことではないでしょうか。本人が壁にぶつかったときに、同じSOMRIEの中から相談する人、めざす人を見つけられるという意味でも、いい制度ですよね。
──道を究める一方で、プライベートに関してはどう考えていますか?
仕事が充実しなければプライベートも充実しない。そんな考えから、仕事や能力向上に少しパワーを傾けつつ、プライベートも楽しんでいます。
資格取得を通じてプライベートの仲間が増えましたし、キャリアの可能性も広がったなと感じます。勉強会に参加すると商社や広告代理店、市役所、金融機関など、さまざまな業界の人たちと知り合って、知識やビジネスノウハウ、キャリアのヒントを教わることもあり、自分の糧となっています。
5歳のころの自分が原点。技術は楽しんで身につけるもの
──SOMRIEとして今後挑戦したいケイパビリティやレベルを教えてください。
セキュリティスペシャリストとして、今のレベル5から上をめざしたいです。国内で広く認知され、多くの人々に使われるようなセキュリティソリューションを生み出せばレベル6、それが世界へと広がればレベル7、というイメージです。
セキュリティはものを作る仕事ではないので価値を示すのが難しいですが、今や社会に不可欠な要素。だからこそ、価値を生み出すことに真正面から向き合っていきます。
──将来、成し遂げたいことは?
セキュリティを一緒に楽しめる仲間を増やし、意識せずとも自然とセキュリティが実現されている世界をつくりあげたいです。
セキュリティと言えば、しっかり学んだ上で、一つひとつの作業に神経をとがらせるようなイメージがあると思います。でも私がめざすのは、品質管理と同様に当たり前のこととして一人ひとりの頭に組み込まれ、実践できる世界。時間はかかりそうですが、だからこそ今すぐに行動を起こし、着実に前進していきたいです。
──「セキュリティ」の技術を身につけることを、とても楽しんでいるように見えます。何か原点はあるのでしょうか?
幼いころの話をすれば、わかってもらえるかもしれません。
私は、5歳でコンピューターに魅了されました。きっかけは『プラレス3四郎』というアニメです。プラモデルを操作してプロレスをさせる話なんですが、少年がコンピューターのキーボードを打って自在に操る姿がとてもかっこよくて、自分も「いつか本物のコンピューターが欲しい」と思いながら紙で自作していました(笑)。
当時感じたコンピューターの魅力にそのまま導かれ、私はここまで来ました。やはり、技術は楽しんで身につけることが原点。さらに、その楽しさを周りに伝えていくと、自らの能力向上にもいい影響が出るものです。
──最後に、さまざまな分野でスペシャリストをめざす人にメッセージを。
ひとつの専門性を突きつめることで、逆にキャリアの選択肢は増えると実感しています。私もセキュリティを究めるうちに、自動車などさまざまな業界から声がかかるようになりました。そして、セキュリティの知識を深めるために多様な分野を学ぶことで、世の中の課題が広く見えてくるんです。
楽しみながら広い視野を持って自分を磨き、その専門性で社会に貢献するスペシャリストを一緒にめざしてみませんか?皆さんの挑戦をお待ちしています。
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